第365話 わらび餅
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「トクボの田中さんですよね?」
皆が集まるテーブルへとやって来た幸代が、美紀に頭を下げた。
「私、この教習所で学食のチーフと、地下の指揮所の職員をやらせてもらってる福田と言います。いわゆる二足のワラジってやつです」
幸代の笑顔に、美紀がハッとする。
「あ、教官さんたちから聞いてます。陸奥さんの、大学の後輩さんなんですよね?」
「そうなんですよ」
美紀と幸代の、大人のお辞儀合戦が始まった。
そんな二人を横目に、再び愛理が首をかしげる。
「わらじって何ですかぁ?」
「それはね、愛理ちゃん」
またひかりが左手の人差し指をピンと立てた。
うわっ!またや!今日のボケ祭りはちょっと激しすぎやで!
両津があわてて止めようと立ち上がったが間に合うはずもなく、ひかりのボケマシンガンが炸裂を始める。
「お洋服の裏側に縫い付けてある布のことだよ」
今日も奈々は突っ込みに忙しい。
「それは裏地!愛理ちゃんが聞いたのはワラジ!」
「元祖厚切り本格焼き肉!」
「トラジ!」
「両津くんのお小遣いは、」
「赤字!」
「両津くんがやってるのは、」
「悪事!」
「両津くんに無いのは、」
「意気地!」
「もうすぐ両津くんは、」
「五十路!」
「ちゃうわ!ボクまだ17歳や!」
「だから両津くんはもう、」
「オジジ!」
奈々と、なぜか両津もハアハアと息を切らしている。
愛理がそんな二人に顔を向けた。
「それで結局ワラジって何なんですぅ?」
「それはね、愛理ちゃん」
今度は奈央が答え始める。
「ワラジは、稲わらや麻、井草などで作られた履物の一種ですわ。日本では古くから旅行などで使われてきたものです。簡単に言うと、足をのせる平らな部分と、かかとをとめる「かえし」、足に結ぶ紐からできている単純な履物ですわ」
く、くわしい!
そこにいる誰もが、奈央の解説の的確さに目を丸くしていた。
その時両津が、関西人の意地を見せようとボケを重ねてきた。
「えっと、おモチの一種で……」
そこに奈々の高速ツッコミが炸裂する。
「それはワラジじゃなくてワラビ!」
「わらび餅食べた〜い!」
「私も食べた〜い」
ひかりとマリエが、また別の方向へ話を持っていく。
「わらび餅ならあるわよ」
幸代の言葉に目を輝かせる生徒たち。
奈々が首をかしげた。
「どうしてあるんですか?」
「明日の定食のデザート用に仕入れてあるの。食べる?」
「食べまーす!」
元気いっぱいに声を揃える生徒たち。
いや、美紀も一緒に叫んでいた。
「じゃあ、ちょっと待っててね」
そう言うと調理場へと向かう幸代。
「あちゃー!福田さん、いま来たばっかりやのに、また調理場へ戻っていきはったやん!全然話が進まへん!」
そう嘆いた両津に顔を向けて叫ぶひかりとマリエ。
「いま来たばっかりーっ!」
「君らはずっとここにいたやん!」
全く話が進まぬまま、両津の叫び声だけが学食に響いていた。




