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第362話 驚きの情報

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「確かに……それはちょっと驚きね」

 例によって学食で開かれていたロボット部の活動に招かれている美紀が、右手をアゴに乗せてうなった。両津の説明があまりにも突拍子もないことだったので、理解が追いついていないようだ。

「ちょっと待ってね、今の両津くんの話を整理すると……」

 美紀は自分の頭の中をまとめるようにそう言った。

 遠野ひかりの母・遠野あかりは、今から約8年前に宇宙で行方不明になった国連宇宙軍の調査船ハーフムーンの情報システム部で主任を務めていた。あかりには二人の部下がいた。野沢結菜と田中正明である。結菜は心音の姉であり、正明は美紀の兄だという。そしてハーフムーンの船長・館山俊彦は大和の父なのだ。こんな偶然があるのだろうか?

「そう!ぬか漬けのお兄さんなの!」

 突然ひかりがそう叫んだ。

 奈々がいぶかしげにひかりを見る。

「ぬか漬けのお兄さん?」

「うん!私が小学校の二年生の時、お母さんの仕事場にあそびに行ったの。その時にぬか漬けをくれたお兄さん!」

「全く話が見えないわね」

「ちょうどお昼時で、お兄さんが食べてたお弁当のおかずが全部ぬか漬けだったの!」

 それはすごい弁当である。

 生徒たち全員が、頭に浮かんだ弁当の絵面からそう思っていた。

 だが愛理は、全く違う理由で首をかしげていた。

「ぬかずけって、おばぁちゃん家で聞いたことある気がするんですがぁ、何のことでしたっけぇ?」

 両津がしまったと言う顔をした。

 せっかくボクが「すごいこと」について説明したのに、また話がズレていく!

 ひかりが真剣な目を愛理に向けた。

「それはね愛理ちゃん、いつも行くお店のことだよ」

 もちろん、例によって奈々が突っ込むことになる。

「それは行きつけ!愛理ちゃんが聞いてるのはぬか漬け!」

「両津くんが言うことって、いつも根拠がないよね」

「裏付け!」

「だから両津くんは評価が低いのよ」

「格付け!」

「両津くんか田中さんをここへ呼んだって言うのも」

「後付け!」

「両津くんは田中さんに」

「釘付け!」

「ぜひいつかお願いしたいなぁ」

「くちづけ!」

「でも絶対に」

「お預け!」

 ひかりと奈々の間に両津が割って入る。

「勝手にストーリー作らんとって!めっちゃ恥ずかしいやん!」

 それを聞いた正雄がニヤリと笑った。

「恥ずかしいってことは、図星じゃないのかい?ベイビー」

「全然ちゃうわ!」

 美紀が両津にニコッとした笑顔を向ける。

「あら、全然違うってのも私に対してちょっと失礼じゃない?」

 フフッと笑った美紀。そして両津の頬がみるみる赤くなっていく。

 そんな会話を聞いているのかいないのか、愛理が再び首をかしげた。

「ずぼしってなんですかぁ?」

「また話がズレるやん!」

 両津の叫びもむなしく、ひかりが左手の人差し指をピンと立てた。

「それはね愛理ちゃん、私が両津くんの心を推理したことだよ」

 やはり奈々からツッコミが入る。

「それは目星!愛理ちゃんが聞いてるのは図星!」

「両津くんの人生はカラカラに乾いてるの」

「煮干し!」

「だから味気ない人生なの」

「日干し!」

「がおーっ!もうやめてくれーっ!」

 もっと展開されようとしていたこの無駄な会話は、両津の心の叫びで終了を迎えた。

「あの、この話をする前にちょっと聞いてもいいかな?」

 彼らが言う「すごいこと」について話す前に、美紀にはどうしても気になることがあった。

「あの方は?」

 ここにはメイドがいるのである。

 この場所はロボット教習所の学食だ。そしてロボット部の部活動中だと言うのに、生徒たちが集まっているテーブルのすぐ横にヨーロッパ風ロングスカートのメイドが静かに立っている。まさに「場違い」という言葉こそがふさわしい光景だと言えた。

 奈央が美紀に顔を向ける。

「あの方は三井良子さん、私の専属メイドですわ」

 美紀はよりいっそう首をかしげた。

「はぁ、そうなんだ」

 美紀の疑問に、奈々が説明を始めた。

「実は奈央、宇奈月さんは宇奈月グループの一番偉い人の娘さんなんですけど、この教習所に通うようになってから何度も誘拐されそうになっているんです」

 ますます美紀の疑問が広がっていく。

 誘拐されそうになったからメイドさん?

「三井さんは、奈央のメイドであると同時にボディガードなんです」

 奈々の説明によると、三井家は代々宇奈月家に仕える警護の家系なのだと言う。良子は奈央が生まれてからずっと世話をしてくれている第二の母とも呼べる存在だ。だが彼女には奈央付きのメイド以外にも大切な仕事があった。それこそが奈央の護衛なのだ。沖縄出身の彼女は、沖縄空手の有段者である。奈央に何かがあった場合、彼女は身を挺して奈央を守る。実はそれが本来の彼女の役目なのである。

「しかし三井さん、久しぶりですな!なんでまたここに来はったんです?」

 両津が良子に視線を向けた。

 良子の表情はピクリとも動かない。

「秘密です」

 だがロボット部の面々は気付いていた。良子がここにいると言うことは、再び奈央に何かが起こる可能性があるのだろうと。

 正雄がニヤリと不敵な笑いを浮かべた。

「両津くん、そんなことは決まってるじゃないか。俺と再び戦うためさ!ベイビー」

 それは絶対に違うと、ロボット部の全員が思っていた。

 美紀が立ち上がり、良子に頭を下げる。

「機動隊トクボ部の技術主任、田中です」

 良子も小さく頭を下げた。

「三井です」

 相変わらず口数が少ない。

 そして美紀がパッと生徒たちに向き直ると言った。

「これで疑問は無くなったし、まぁ全部じゃないけどね……じゃあさっきの話の続きをしましょう」

 生徒たちがワッと盛り上がった。

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