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第360話 工事現場の大穴

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 数日前まで、地下から掘削工事の音が聞こえていた東京都江戸川区の大規模工事現場だが、今はそれが嘘のように静まり返っていた。建築工事看板には、建築主「東京都」、工事施工者の欄には「宇奈月建設」の文字が見える。その隣には黄色いヘルメットを被り頭を下げている男性のイラストと、「ご迷惑をおかけしております。工事中はご協力をお願いいたします」との文字がある。

 現在この現場では、東京地下放水路の工事が進められていた。地下放水路とは、大雨によって水位が上昇した中小河川の水を地下トンネルに取り込み、地上での洪水を未然に防ぐ仕組みだ。墨田区や江戸川区は、海抜ゼロメートル地帯と呼ばれている。いざ洪水が発生した場合、非常に大きな被害が予想されているのだ。線状降水帯やゲリラ豪雨の頻発する現在、一刻も早い整備が望まれている。今回の工事では東京23区の地下約50メートルを西から東へと貫き、最後は大型河川の江戸川へとつながる。この場所はその終点近く、江戸川のすぐ近くに位置していた。

『こちらです!』

 宇奈月建設のベテラン重機ロボットパイロット、神谷恭介が無線にそう告げる。

『この先に、大きな空洞がありまして!』

 恭介の長年の相棒、同じく重機ロボットパイロット難波秋信も同様に無線に叫んだ。

 空洞が発見されたことで、掘削工事は中止になっていた。今日はその調査のために、機動隊からトクボ部のロボット二機が二人に同行していた。

 これがキドロの新型かぁ、カッコいいなぁ。

 神谷は胸中でそう思いながらも、それをおくびにも出さないよう心がけている。なにしろ緊急事態なのだ。そんなうわついた様子を見せるわけにはいかないのだ。

『すげー!それ、キドロの新型ですよね? ボク、新聞で見ましたよ!』

 難波は、そんなことにはおかまいなしに、大好きなロボットの話題にはしゃいでいた。

 秋信はしょうがないなぁ。

 神谷は苦笑を浮かべながらも、それを特にとがめることはしない。

 なにしろ、彼は神谷の本心を代弁してくれているようなものだからだ。

 素直な性格って得だよなぁ。気を使わずに生きていけるもんなぁ。

 神谷は、相棒の屈託のない言動を、少しうらやんでいた。

「了解した。お二人は私たちの後ろをついてきてください」

 夕梨花が無線にそう告げた。

『お嬢ちゃんよぉ、こりゃあリベンジマッチだぜ』

 夕梨花のコクピットに、後藤の野太い声が響いた。

 リベンジマッチとは、前回の探索のことを言っているのだろう。都営地下鉄新宿線下の地下トンネルでは、途中で捜索をあきらめざるを得なかった。それは上の判断ではあったが、海底の地下まで足を伸ばせば、トンネル崩落時の被害は推して知るべしである。

「リベンジって、別に競争じゃないんだからね」

 夕梨花がピシャリと後藤に釘を刺す。

『へいへ〜い』

 後藤の、いつもののんきな返事が無線から聞こえた。

 後藤の言いたいことは分からなくもない。あの後すぐに、都営第6ロボット教習所の地下トンネルを捜索した教官たちが、東京湾と都営新宿線下の地下トンネルが繋がっていることを発見したのだ。後藤としては、あのまま進んでいればそれを見つけたのはキドロ部隊なのだと言いたいのだろう。だが夕梨花にとっては、誰が発見したかは関係ない。市民の平穏を守れるのなら、皆で手分けして探索したほうがいいに決まっている。

 男ってやつは、すぐに対抗心に燃えるんだからなぁ。

 しょうがない生き物である。

 そんなことを思った夕梨花だったが、その顔には優しい笑顔が浮かんでいた。まるで可愛い子犬でも見るような目で。

 その時、無線から神谷の声が響いた。

『そこです!その穴、ボク達があけた穴です!』

 キドロ頭部のメインライトをその穴に向ける夕梨花。

「ゴッド、中は広そうよ」

『こりゃあ楽しみだぜぇ』

 夕梨花機の照らしたその先に、巨大な空洞が広がっていた。

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