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第357話 ダイナレーダー

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

『こちらレスキュー01陸奥、探索を続けます』

 指揮所に響いた無線からの声に、室内の一同に安堵の色が広がった。先程まで跡切れ跡切れになっていた音声が、実にハッキリと聞こえている。

 再び健太が胸を張って悠真と陸斗を見る。

「そしてスキャナー波に音声通信のデータを乗せることにも成功してるんですよ」

 悠真と陸斗が驚きに顔を見合わせた。

 久慈が少しうれしそうに整備士たちを見る。

「いきなりの実戦だったけど、うまくいったわね。おめでとう」

「ありがとうございます!」

 三整備士に笑顔が広がった。

 これまで謎だった都内各所で発見されている空洞についても、この技術を使用すれば何らかの発見が可能となるだろう。

 亮平もうれしそうに胸を張っている。

「こいつを袴田素粒子センサーと組み合わせれば、地中や地底の敵も発見できる可能性があります」

「私たちが本当に目指しているのは、それなんです」

 久美子も笑顔である。

 そして健太が付け加えた。

「同じ理論の応用で、水中探査や水中通信も可能だと思われます。これで人類の行動範囲が大きく広がることになるでしょう、て言うか、なって欲しいです」

 水中でも地中同様に、電波による探査や通信が非常に難しい。

 そもそも電波は水中での減衰が非常に激しい。電波は文字どおり波の形で伝わるもので、周波数が高いほどその波が細かく多くの情報を乗せることが可能だ。だがそれは地上、空気中での話であり、水中では周波数が高いほど減衰してしまう。例えば、スマホで使われている800MHzや1.5GHz、2GHzといった高い周波数の電波は、水中ではほんの数センチ先で消滅してしまう。もう少し低い周波数なら水中でも多少は伝わるが、たとえばAMラジオなどで用いられる1MHz前後の周波数であっても、水中では1メートル先でほんの3%弱しか残っていない。簡単に言うと、水の分子が電磁波を吸収してしまうのだ。これではレーダーのような探査や音声通信は不可能である。軍事用として潜水艦では超長波といわれる周波数の非常に低い電波で通信をすることはある。だが送れるデータ容量があまりにも小さいので、用途は単純な文章や数字、暗号の通信に限られてしまい実用と言うにはほど遠い。しかも送信するには、潜水艦にはとても搭載できない巨大なアンテナが必要になるため、陸上から海中へ送信するだけの一方通行となっている。そのため最近では、電波に依存しない通信方法が模索されており「音響」や「光」を利用した方法が注目を浴びてはいるが、今のところ一進一退で実用段階には至っていないのが現状だ。その新たな選択肢としてのダイナレーダーというわけなのである。

 悠真が驚きの声を上げる。

「すごいですね!これってもう発明じゃないですか!」

 陸斗も目を丸くしていた。

「これ、人類の歴史に残るんじゃないですか?!」

 久美子が肩をすくめる。

「ありがとうございます。でも、お二人共ちょっと大げさですよ。私たちがやっているのは実用新案と言うか、応用化学みたいなものです」

 応用化学とは、すでに発見されている既存の理論や知識を応用して、生活に役立つ新しい物質を研究・開発する学問のことだ。久美子は、既存の技術を応用して新しい使い方を見つける、そんな意味でその言葉を使っていた。

 久慈が三整備士に笑顔を向ける。

「なんにしろ大手柄よ。次の段階として、袴田素粒子センサーとの融合を急いでね」

「了解です!」

 三人の声が揃った。

 その時、指揮所の無線から陸奥のいぶかしげな声が響いた。

『あれは何だ? 何か人工の……機械のようなものが』

 指揮所の一同がスクリーンに目をやる。

 レスキューロボのメインライトが、遠くの何かを照らしている。まだ遠方のため、その姿はハッキリとは捉えられていない。

『ゆっくり行こか』

 南郷の声と同時に、二機のレスキューロボは注意深くゆっくりと、その物体に近づき始める。そして次第にその形がしっかりと見え始めた。

『おい、これって!』

 陸奥が驚きの声を上げた。

『機動隊の電波中継機じゃないか!』

 陸奥のその声に、指揮車の三整備士がコンソールを操作する。二機のレスキューロボの光点に、東京都のマップがオーバーレイされた。

「ここから約10キロ、すでに内陸部の地下に到達しています」

 そんな健太の声に、久慈がうなるように言う。

「あそこは、都営地下鉄新宿線の地下で見つかった空洞だわ」

 教習所地下のトンネルは、恐れていた通りに他の地下トンネルとつながっていたのである。

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