第353話 新しい論文
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「今日のクッキー、どうです?」
小野寺舞が目をキラキラさせて言った。
「今日も手作りクッキーだね、とてもおいしいよ。紅茶によく合う」
袴田教授がニッコリと微笑む。
「そうでしょ!休憩時間にみんなで食べようと思って、持ってきたんです!」
舞がいっそうの笑顔になる。
「オノマイの手作りだといいんだけど。多分また、お母さんの手作りじゃない?」
遠野拓也の言葉に、舞がニヤリと笑った。
「残念〜! ハズレですぅ〜!」
「え?! まさか、オノマイが焼いたの、これ?」
「だったらどうだって言うのよ」
今度はプクッと頬をふくらませる舞。
「ちゃんとおいしい!」
驚いた表情の拓也を、舞が睨みつけた。
「どういう意味よ?! 私の手作りがおいしいと変なの?!」
「いや、そういうことじゃないんだけど」
タジタジとしながらも、うまそうにクッキーを頬張る拓也。
「それと、オノマイはやめてよね。人気のないアニメのキャラクターみたいじゃない」
「いいよ。でも、だったら僕のこともエンタクって呼ぶの、やめてよね。昔の芸人みたいじゃないか」
「分かったわよ、エンタク」
「ほら、また言った!」
本当にこの二人は仲がいい。
袴田は目を細めながら、クッキーと紅茶を楽しんでいた。
ここは東郷大学の袴田研究室だ。素粒子物理学の研究室ではあるが、現在の主な研究対象は世界を騒がせている宇宙からの侵略者「袴田素粒子」である。素粒子物理学とは、物質の最小構成単位である素粒子の性質や素粒子間の相互作用を、加速器実験や宇宙観測、理論的探求に基づいて研究する学問分野だ。 その研究分野は実験によって未知の素粒子を探索する実験分野と、量子論と相対論などを用いて素粒子の存在や性質を予言、解析する理論分野に大別される。袴田研究室では、その両方を用いて袴田素粒子の謎を解き明かす試みが続けられている。
「それで教授」
拓也が、紅茶でクッキーを流し込んでから袴田に聞いた。
「マルティネス教授から届いた論文、どう思います?」
マルティネス教授とは、アメリカハリントン大学のノア・マルティネス教授のことだ。アメリカを代表する素粒子物理学者であると共に、袴田にとっては学生時代からの友人でもある。
うむとうなづく袴田。
「検証してみないとハッキリとは言えないが、可能性は高いだろう」
舞が紅茶のカップをテーブルに置くと、袴田に顔を向けた。
「検証実験、日本でも可能なんでしょうか?」
袴田は、少し考え込んでから舞に言う。
「難しいな。必要な設備は、わが国には揃っていない」
拓也もカッブを置き、袴田に向き直った。
「では、どうやって検証を?」
「そうだな……国連宇宙軍に相談が必要かもしれないな」
袴田は、難しい顔で拓也と舞を見返した。




