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第345話 地下鉄のトンネル

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 都営新宿線は、東京都新宿区の新宿駅から千葉県市川市の本八幡駅までを結ぶ、東京都交通局が運営する地下鉄だ。その路線の中央あたりに少し地味めな駅がある。菊川だ。隣の森下は急行の停車駅であると同時に、大江戸線に乗り換えることができる。急行も停まらない菊川は、そんな森下とは違い、いつも落ち着いた雰囲気をたたえていた。だが今はそうではない。駅を中心に半径約100メートルが警察によって封鎖されているのだ。菊川交差点に入る各道路は通行止めとなり、駅前は黄色いテープで立入禁止になっている。その周りに集まり始めている野次馬たち。そんな高見の見物にやって来た人たちと、封鎖場所から警官の指示で避難してきた住民たちで、周辺はごったがえしていた。

「いつまでこんな状態なんだ?!俺は家に帰りたいんだよ!」

「落ち着いてください。状況が変わったら、またアナウンスします」

 避難住民が警察官を怒鳴りつけている。

「ネットニュースだと大したことないらしいじゃないか?!こんなの大げさすぎるんじゃねぇのか?!」

 怒りをぶつける住民に、警備の警察官は少しもひるまない。

「いえ、けが人が出ては大変です。大事を取っての対処ですのでご了承ください」

「けっ!」

 のれんに腕押しの対応に、怒鳴っていた男は赤いパイロンを蹴ってどこかへ立ち去った。


『お嬢ちゃんよぉ、そっちからは見えてるのかぁ?』

 夕梨花の乗るキドロコクピットの無線から、ゴッドこと後藤のドスの利いた声が響いた。

「ああ、見えている」

『どんな状況だぁ?』

「そうだな、のんびりと散歩でもしているようだ」

『のんきなこった』

 地下鉄職員の話では、終電が終わった深夜に線路の補修工事を行なうことになっていた。そこで昨日の深夜に、都営地下鉄新宿線の菊川駅と森下駅をつなぐトンネル内に、工事のための工具類や工事用ロボット数体が運び込まれていたという。ところが、線路脇に置かれていたはずのロボット一体が、誰の司令も無しに動き始めたとのことらしい。はたして袴田素粒子感染によるものなのか? その確認と対処のために、警視庁機動隊のロボット部隊が出張って来たのである。しかも今回の事案は、新型キドロの現場デビューとなる。

『タッチパネルとか言うのかぁ? ピコピコしてて使いにくいよなぁ。まるでゲームみたいだぜぇ』

 今日は朝からずっと、ゴッドの愚痴ばかり聞かされている夕梨花が苦笑した。

「グダグタ言わない。基本的な操縦訓練は終わってるでしょ?」

『へいへ〜い』

 後藤から、いつも通り緊迫感のない返事が聞こえる。

『キドロ01、04、田中です』

 菊川交差点近くに停車しているトクボ指揮車から、田中美紀技術主任の声が届いた。

「キドロ01泉崎、聞こえています」

『04、感度良好〜』

『菊川駅から森下駅までの約750メートル、地上の新大橋通りの封鎖が完了しました。作戦行動に移ってください』

「01了解!」

『04も了解だぁ』

 菊川同様に封鎖された森下駅から、後藤のキドロマーク2はすでに地下鉄のトンネル内に侵入していた。一方夕梨花のキドロは、たった今菊川側のホームからトンネルへ降り、進み始めたところだった。

「主任、マルタイの正確な位置は?」

『01からおよそ253メートル』

「了解。ゴッド、確実に挟み撃ちにしたいから、急いで」

『へいへ〜い』

この大男のひょうひょうとした声は、なぜか夕梨花の緊張をほぐしてくれる。見た目に似合わない癒やし系とでも言うのだろうか。

 夕梨花はそう思い、フフッと小さく笑った。

 後藤から軽いツッコミが入る。

『なんかおかしいことでもあったかぁ? お嬢ちゃんよぉ』

「なんでもないわ。それより、そろそろあなたの位置からでも視認できるんじゃないかしら」

 一瞬の間の後、後藤の声が聞こえた。

『見えたぜぇ。ありゃなんだぁ? 小さ過ぎて人は乗れないよなぁ』

 夕梨花と後藤のちょうど中間地点をフラフラと歩いているロボット。それはほぼヒトガタだ。身長は1メートルほどで、四本の腕には何かの工具アタッチメントが取り付けられている。

「ゴッド、出発前に資料見なかったの? あれは線路補修用のロボットで、オートマチックよ」

『エーアイってやつかぁ? ついにロボットも人間を必要としなくなるってかぁ? イヤなご時世だねぇ、お嬢ちゃんよぉ。そのうち俺たちゃあ食いっぱぐれちまうぜぇ』

 その時無線から、ザザッというノイズと共に美紀の声が聞こえた。

『菊川森下間のトンネルには、他からの引き込み線も、工事用などの縦穴や横穴もありません。今挟み撃ちにすれば、対処は簡単だと思います』

 今回の相手は小型のエーアイロボットだ。生身の人間ではまともに太刀打ちできないだろうが、キドロであれば難しくはない。そのため夕梨花も後藤も、キドロの標準装備とも言える30mm機関砲はトランスポーターの車上に置いてきていた。万が一このトンネル内で発砲することにでもなれば、しばらく地下鉄の運行が不可能になるほどの損傷を壁面に与えてしまうだろう。そのため、今任務の主要装備は特殊警棒がメインである。

 夕梨花機、後藤機共に、その右手に超硬合金製の特殊警棒が握られていた。警棒のグリップとキドロの手のひらは、宇宙船のドッキングシステムのような仕組みでしっかりとつながっている。

『じゃあ、やりますか』

「了解した」

 二機のキドロマーク2が、ダッシュで暴走エーアイロボットに迫った。

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