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第338話 ダージリンティー

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 牧村陽子は一息つき、ナースがいれてくれた紅茶を一口飲んだ。

「あ、これダージリンね?」

 ナースの恵美がニッコリと笑う。

「はい、三田先生のリクエストなんです」

「へぇ、三田くんセンスいいのね」

 大輔が照れくさそうに笑った。

「いやぁ、長谷川先生の受け売りでして。以前、山下美咲さんがまだここに入院していた頃、山下さんと長谷川先生とで大論争になったんですよ」

 陽子が潤子に不思議そうに目をやる。

「どんな論争をしたの?」

 潤子が自信有りげな顔で言う。

「アールグレイよりダージリンの方が旨いってことですよ!」

 そこから突然、潤子のダージリン語りが始まった。

「ダージリンはまさに紅茶のシャンパン!その香りの良さは、数ある紅茶の種類の中でも随一と言えるでしょう!」

 潤子は両手を広げ、よく分からない身振り手振りを加えていく。

「特に、フランスの高級食料品店FAUCHONフォションのダージリンティーは、紅茶畑の中でも高級とされる2000mの高地で栽培され、ゴールデンチップと呼ばれる芯芽を多く含んだ茶葉を使用している!まさに紅茶の女王!マリー・アントワネット!ストレートでも、ミルク入りでもその香りを存分に楽しめる逸品なのですっ!」

 陽子は、聞いているのかいないのか、ふむとうなづいて再び紅茶のカップを傾けた。

 ナースの恵美がニッコリと潤子に微笑む。

「このティーバッグ、フォションじゃなくてリプトンですけど」

 潤子の目がカッと見開かれた。

「相原くん、何の問題もない!リプトンの茶葉も素晴らしいんだ。インド北東部のヒマラヤ山麓、標高約2,000mの丘陵地に広がるダージリン地方。リプトンのダージリンも、まさにその場所で栽培されたものなんだよ!まるで雲の上のような高く険しい山肌にへばりつくように茶畑が広がり、その過酷な環境下での収穫ゆえ、紅茶大国インドの中でもたった1%ほどしか生産されない、たいへん希少な茶葉、それがダージリンさ!」

 これ、まだ続くのかなぁ。

 大輔はすでに呆れ顔である。

「昼夜の激しい寒暖差が茶葉に甘みや旨みを蓄え、山霧が直射日光を和らげて過剰な渋みを抑えてくれる!そんな味わいや希少性が評価され、紅茶の王様として世界三大紅茶に数えられているのだ!まさに紅茶のチャールズ!いや、クイーン・エリザベス!」

 紅茶の王様なのに、女王様になってるじゃないか。

 大輔が心中で苦笑する。

「リプトンのダージリンティーバッグは、ヒマラヤ高地茶園で丁寧に摘まれた旬のセカンド・フラッシュ茶葉を、リプトンマスターブレンダーが日本向けに厳選し、贅沢に80%も使用した逸品なのだよ!」

「はぁ」

 恵美が、気のない生返事をした。

 呆れながらも、潤子絶賛の紅茶を一口含む大輔。はっと顔色が変わる。

「あ、ホントだ。これ旨いですね」

 大輔に視線を向ける潤子。

「分かるか青年!これぞキングオブティーの味わいなんだよ!」

 さっきエリザベス女王って言ってたのになぁ。

 そう思いながらも、大輔はその旨さを味わっていた。

「でも……」

 そう口ごもる大輔に潤子が問う。

「何だ?青年」

「ちょっと前まで、長谷川先生ってコーヒーのうんちくたれてませんでしたっけ?」

「たれるって言うな!下品じゃないか、青年」

 そう言うと潤子は、手にしていたカップからダージリンをひとくち飲んだ。

「人の趣味は移り変わっていくものなのだよ。まだ人間というものが分かっていないな青年、日々勉強せねばならんな」

 飽きっぽいだけじゃないのかなぁ?

 そう思いながらも、大輔は紅茶の香りを楽しんでいた。

 そんな会話がひと区切りついたと判断したのか、陽子が口を開く。

「山下さんのアイくんはY型素粒子である可能性は前から考えていたよね?」

 大輔がうなづく。

「はい。アイくんの発言から、素粒子にも種類があってX型は急進派、Y型は穏健派だと。そしてアイくん自身は穏健派だと言うことなので、恐らく彼はY型ではないかと」

「そうね。でも我々にはそれを証明する手段が無かった」

 潤子がニヤリと笑って言う。

「今や我々はY型素粒子センサーを手に入れている。つまりどうする?青年!」

 大輔が真剣な目で陽子と潤子を見つめた。

「ぜひ山下さんの再診察をお願いしたいです!」

「正解だ、青年!いいですよね?牧村先生!」

「うん、私も賛成よ」

 陽子がニッコリとうなづいた。

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