第337話 新しい検査
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「はい、紅茶です」
ナースの相原恵美が、各医師の前にカップを置いていく。
今日の茶葉は、研修医の三田大輔のリクエストでダージリンだ。と言っても、ティーバッグなのだが。
UNH国連宇宙軍総合病院素粒子内科の医師三人は、新しく得られたデータを持ち寄りその検討会を行なっていた。メンバーは三人。このフロアのチーフドクター牧村陽子、研修医の三田大輔、そして大輔の指導医・長谷川潤子である。実は数日前、検査室の袴田素粒子センサーに改良が加えられた。これまでの検査機に、東郷大学袴田研究室が新開発したY型素粒子センサーが組み込まれたのである。三人にとって、待ちに待っていた改良だ。
大輔が手持ちのパッドを操作し、スクリーンに検査データを表示する。
「これが、ここ三日間の診察データです」
牧村と長谷川が、食い入るようにスクリーンを見つめた。
「患者数は37人。その中で、例の症状が出ていたのは26人でした」
長谷川が大輔に視線を向ける。
「で青年、君の所見は?」
大輔は自分のパッドに目を落とす。
例のとは、この数ヶ月で激増している謎の症状だ。
共通しているのは、皆口を揃えてこう言うことである。
『機械が何かを語りかけてきた』
『ロボットの声が聞こえる』
大輔がパッドから顔を上げた。
「この26人全員に微弱な素粒子反応が出ていました。ですが、声が聞こえるような気がすると言うだけで、他には特に症状は出ていません」
牧村と長谷川が大輔に視線を向ける。
「この場合、これまではワクチンによる免疫反応ではないか、と診断して来ました。でも、これを見てください」
大輔がパッドを操作すると、スクリーンの画面が切り替わった。
「これが新しいセンサーによる検査結果です」
牧村と長谷川がほんの少しだが目を見開く。
「26人全てにY型素粒子の反応が出ました」
長谷川が牧村に目を向けた。
「私たちの予想通りですね」
うなづく牧村。
「そうね。それで三田くんはどう思ったの?」
「これはまだ予想と言うか、僕の推理みたいなものなのですが……」
長谷川がうながすように言う。
「どうせ青年の所見はいつも推理みたいなものじゃないか。いいから言ってしまえ」
またこの人は俺をあおるんだよなぁ。
そう思いながらも、大輔は口を開いた。
「もしかすると……山下さんのアイくんは、Y型なのではないかと」
大輔の推論に、牧村も長谷川もうなづいていた。




