第334話 修学旅行の報告会
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「やっぱり泉崎先輩ってすごいですぅ!」
学食に、愛理の嬉しそうな声が響く。
ロボット部では、修学旅行の報告会で盛り上がっていた。現在は、暴走軍用ロボットとの戦闘話の真っ最中である。
奈々が少し顔を赤らめる。
「そんなことないわ。私だけじゃ、多分勝てなかった」
奈々が視線をひかりとマリエに向けた。
「ひかりとマリエがいてくれたから」
愛理がひかりに視線を向ける。
「遠野先輩は何をしていたんですかぁ?」
「私の活躍はすごかったよ!えーとえーと……何したっけ?」
ズッコケる両津。
「複座の後ろに座っとったんやろ?!」
「うん」
「ほんなら、索敵とか照準とかちゃうか?」
ひかりが首をかしげる。
「ビフテキ?」
マリエが続く。
「も〜」
「トンテキ!」
「ぶ〜」
「テンテキ!」
「今夜が山場」
「ブッテキ!」
「証拠」
「キンテキ!」
「痛い」
両津があわてる。
「なんやなんや?! マリエちゃんまでボケを重ねて来よるやん!どーなってんの?」
奈々が肩をすくめた。
「マリエ、最近どんどんひかりに似てきてるのよ」
「ホンマかいな?」
「ええ。前からその兆候はあったけど、ここ何日か、特に修学旅行の間にすごく進んだみたい」
今度は愛理が首をかしげる。
「進むって、病気みたい。ひかり病?」
奈央が愛理に強い視線を向けた。
「あらあら愛理ちゃん、その言い方は良くないですわ。それではピカピカ光るみたいです。まぁわたくし、スキンヘッドは嫌いじゃありませんけど」
ナゼかニッコリと微笑む奈央。
そこに両津が突っ込んだ。
「いやいや、突っ込むとこ、そこやないやろ!病気やないで!って突っ込まな!」
そんなやり取りにはお構いなしに、正雄が突然割り込んでくる。
「ライバルさんだけじゃなく、俺の活躍もすごかったぜベイビー!」
両津が正雄に振り返った。
「棚倉くんはスマホの着信音、はよ変えてくれ!」
正雄がスマホをいくつか操作すると、学食に連続する爆発音が轟いた。
「腹にどんと来る、いい音だぜベイビー」
「みんなどう思う? こんなんいきなり鳴ったらびっくりするやん?!」
首をかしげるひかり。
「花火かな?」
「太鼓ですぅ」
「怪獣の足音でしょうか?」
「ちゃうちゃう!なんかが爆発する音や!」
「陸自の12式地対艦ミサイルだぜ」
「なんでもええからはよ止めてくれ!」
正雄がスマホをタップすると、ピッという音と共に爆発音が消えた。
なぜかはぁはぁと息を切らしている両津。
その時、奈央が一同を見渡した。
「これで、修学旅行中に何があったのか、大体は把握できましたわね」
皆、うんうんとうなづく。
「他に、修学旅行中に何か気になったことはありませんか?」
う〜んと考え込む一同。
ひかりがパッと顔を上げた。
「ほら!あれ!うーんと……ダイナなんとかって言うの!あれがよくわっかり〜ませ〜ん!」
マリエが続ける。
「わっかり〜ませ〜ん」
ISSで教官たちから聞いた話だ。
大統領と総理が言っていた素粒子の侵略に対抗するため、人類が開発している技術がダイナギガ。そして、それをコントロールできる可能性があるのは、ここにいる生徒たちだけなのだと。あまり時間が無かったため、それ以上の詳細は聞けなかったが、確かに大切なことだと思われる。なにしろ、このメンバーが危険にさらされる可能性のあることなのだから。
「ダイナなんとかって、何だっけ?」
心音が右手をアゴに乗せてそう言った。
「大和、私に教えてくれても良くってよ」
ひかりがバッと心音に視線を向ける。
「ツンデレさんだ!ツンデレさん!可愛い〜」
マリエもそれに続く。
「ツンデレ!ツンデレ!」
心音の頬が少し赤くなった。
「何よそれ。まぁ可愛いんならそれでもいいけど」
そんな会話に大和がフフッと笑ってから言う。
「ダイナギガのことだよ。何のことなのかは、僕にも分からないけど」
それを聞いたひかりが楽しそうに叫んだ。
「大中小!」
奈々がひかりを見る。
「それってどういうこと?」
「大ナギガ!中ナギガ!小ナギガ!」
「何よそれ。親ガメ子ガメ孫ガメみたいに言わないの!」
ひかりが首をかしげた。
「奈々ちゃん、それなぁに?」
「私が幼稚園の頃、お父さんが私を背中に乗せてよく歌ってくれた歌よ」
ひかりの目がキラキラと輝く。
「奈々ちゃん!その歌聞きたいな!今ここで聞きたいな!」
「え? そんなの、恥ずかしいじゃないの!」
ひかりの目がうるうると子犬のようにうるんでいる。
「わ、分かったわよ。歌えばいいんでしょ、歌えば」
一同の目が奈々に集まった。
「え〜……親亀の背中に子亀を乗せて〜♪
そのまた背中に孫亀乗せて〜♪
そのまた背中にひ孫亀乗せて〜♪
親亀こけたら、子亀孫亀ひ孫亀こけた〜♪」
子亀孫亀ひ孫亀こけた、の部分は早口言葉になっているようだ。ものすごい速さで唄い切る。
満場の拍手である。
とても嬉しそうなひかりとマリエ。
「じゃあ、私も歌ってみる!」
そう言うとひかりが立ち上がる。
「え〜……親ナギガの背中に子ナギガを乗せて〜♪
そのまた背中に孫ナギガ乗せて〜♪
そのまた背中にひ孫ナギガ乗せて〜♪
親亀こけたら、皆こけた〜♪」
「最後、遅くなってるじゃない!」
そこは突っ込むところじゃないやろ。ナギガって何やねん?
両津は再びそんなことを考えていた。




