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第333話 閑話・職員室7

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「お茶でもいれましょうか?」

 職員室に、美咲の声が優しく響いた。

「あ、山下センセ、すんまへん」

 南郷が小さく頭を下げた。

 職員室隅の給湯コーナーへ向かう美咲。

 陸奥が南郷と久慈を見渡して言う。

「修学旅行中は本当にお疲れ様でした」

 うんうんと南郷と久慈がうなづいた。

「ですが、ここへ戻ってからも多くのことが起こっています。そこで、この空き時間を使って、簡単にまとめておきたいと思うんです」

 南郷が肩をすくめる。

「休憩時間にもお仕事やぁ、ホンマ素粒子のやつらにはおとなしゅうしといて欲しいで」

 久慈が少し心配げな目を上げた。

「一度に色んなことがあったので、生徒たちのメンタル面も心配です」

「まぁあいつらのことやし、あんまり心配はいらんと思いますけどね」

「それならいいんですけど」

 大統領や総理からの、地球は宇宙からの侵略を受けている、という大発表。

 その防衛に、生徒たち自身が関わっていること。

 ISSで発生した軍用ロボットの暴走。

 新型キドロに乗り込んでそれと戦い、見事に制圧した生徒たち。

 たった数日とは思えない多くのことが、生徒たちの身に降り掛かったのだ。

「はい、どうぞ」

 美咲が三人のところに戻ってきた。

 それぞれの前に、美しいマグカップを並べていく。

 少し前まで、職員室では紙コップが使われていた。だが、毎回使い捨てるのはもったいない。生徒たちにエコの精神を教えているのに、教官たちが紙コップというのはいかがなものか。そんな美咲の提案で、職員用マグカップが購入されたのだ。もちろん、雄物川所長の決済も通っている。

 陸奥と南郷が持つそれは薄く美しい水色の外側に、あふれんばかりのフルーツや花々の束を縄でつないだ花綱が巻かれたデザインだ。表情豊かな凹凸の型押しで、立体感のある装飾が美しい。一方の久慈と美咲が手にしているマグガップも同デザインである。ただし色はアイボリーだ。どちらもイギリスの名門ウェッジウッドの「フェスティビティマグ」。フェスティビティは「祝祭」を意味し、豊穣の象徴のことだ。そこで、お祭りの装飾とも言える花綱があしらわれている。なぜ、突然ブランド物のカップになったのかと言うと、ISSのホテルでの体験があまりにも心地よかったからだ。休憩中のお茶はいい気分で、心からのんびりいただきたい。そんな意見で、教官全員が一致したのである。ただしフェスティビティマグはウェッジウッドの中でも最安値ゾーンの商品だ。少ない教員予算から絞り出したのだから仕方がない。それでもひとつ1500円ほどはするのだが。

 まずはと、南郷が話し始める。

「こっちも予想してへんかった、大統領と総理からの発表やな」

 そう言うと南郷は肩をすくめた。

 陸奥も疲れたように息をひとつ吐く。

「雄物川さんから、もっと後の予定だろうと聞いていましたからね。おかげで生徒たちに色々と話すことになりました」

 教官たちが生徒たちに話したのは以下になる。

 大統領と総理が言っていた侵略は、自我を持った素粒子、袴田素粒子によるものだ。

 それに対抗するため、人類が開発している技術がダイナギガであり、それをコントロールできる可能性があるのは、ここにいる生徒たちだけなのだ。

 もちろん、侵略者に対抗するのだから、生徒たちにも危険が及ぶ可能性がある。

「こんだけビビること教えたのに、あいつらいつも通りダジャレとか言っとったもんなぁ」

 久慈も呆れたような声で言う。

「それどころか、私と陸奥さんのこと、根掘り葉掘り聞かれたじゃないですか。あれ、侵略とも素粒子とも、それこそ教習とも関係無いですよ」

 美咲がニコッと笑う。

「みんな好奇心旺盛ですよね」

 まぁ、私も知りたかったからちょっと楽しかったぁ。

 と、美咲は心中で考えていた。

 陸奥が軽く頭をかかえている。

「あれ以来あいつら、俺のことを『伝説』って呼ぶんだよなぁ。英雄ならまだ人だけど、伝説って何なんだよ、まったく」

 南郷がニヤニヤしながら陸奥と久慈に言った。

「興味持たれないよりええんやないかなぁ。俺なんて、両津くん以外からその手の質問されたことありまへんで」

 美咲が南郷に顔を向ける。

「どんな質問されたんですか?」

 南郷がキリッとして美咲を見つめて言った。

「お笑いのセンスを教えてください!」

 プッと吹き出してしまう美咲。

「それ、ロボットも運転も関係ないじゃないですか。それで、どう答えたんです?」

 南郷がニヤリと笑った。

「俺にもセンスなんか無いわ!」

 再び笑ってしまう美咲。

 お笑いのセンス、じゅうぶんあるじゃない!

 笑顔でそう考えている美咲だった。

 そんな南郷と美咲に、真剣な目を向ける陸奥。

「暴走アービン事案に関しては、この後、雄物川さんをを中心に指揮所の方で分析会がある。聞いてますよね?」

 うむと、うなづく一同。

 そのまま陸奥が続ける。

「あと、ISSから戻ってすぐに聞いた地下空洞の話ですが、」

 南郷の目も真剣になる。

「ここの地下深くにあるっちゅーやつやな」

「はい」

 陸奥が三人の目を見渡した。

「都内の数カ所で、同様の空洞が見つかっているそうです」

 驚きに目を丸くする三人。

 南郷が首をかしげた。

「なんでいきなり見つかり始めたんや? 前からあったんやったら、ちょっとおかしいんちゃうか?」

「もしくは、最近作られた?」

 美咲のつぶやきに、一同ゾッとしていた。

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