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第332話 掘削工事

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 東京都江戸川区の大規模工事現場に、今日も地下から掘削の音が聞こえていた。法律により設置が義務付けられている建築工事看板には、建築主「東京都」、工事施工者の欄には「宇奈月建設」の文字が見える。その隣には黄色いヘルメットを被り頭を下げている男性のイラストと、「ご迷惑をおかけしております。工事中はご協力をお願いいたします」との文字がある。

 行政の大型工事の場合、大抵はスーパーゼネコンと呼ばれる大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、竹中工務店の五社が施工することが多い。この大手五社は、企業規模や売上高で、常に6位以下に大きく差をつけてきた。だが、ここ最近メキメキと売り上げと実績を伸ばし、台頭してきているのが宇奈月建設だ。日本人なら誰でも知っている巨大企業集団、宇奈月グループの建設部門のトップ企業である。

 宇奈月建設は他のゼネコンと違い、積極的にロボットによる工事を推し進めている。そのおかげで他社よりも工期を短縮することが可能だ。しかも工事に使用するのはグループ内の企業で製造されている工事用ロボットだ。おかげで他社よりも低コストでの施工が可能となっていた。会社としての実績が伸びて当然という仕組みなのだ。もちろん、宇奈月グループの総帥は、宇奈月奈央の父、宇奈月公造だ。可能な限り人力や通常の重機を廃し、グループのロボットを使うことは公造自らのアイデアである。

 この場所は大規模工事現場と言っても、地上からその規模を想像することはできない。なぜなら、地上での工事規模を可能な限り小さくし、地下での作業を主体としているからだ。最初に地面に穴を開け、そこから工事に必要な資材やロボットを地下へ降ろしていく。その後は地下で工事する地域を広げていくのだ。おかげで近隣住民からの苦情はほとんど無い。この工法も、宇奈月建設が開発したオリジナルである。

「そろそろ例の場所に到達しそうだ」

 ロボット重機の運転席で、男が無線に告げた。

 神谷恭介43歳、宇奈月建設でも凄腕のベテラン重機ロボットパイロットだ。

 彼の操縦する重機ロボットの右腕には、ブレーカーと呼ばれる油圧ユニットと大きなチゼルが付いたアタッチメントが取り付けられている。油圧でチゼルに打撃を与え、大きな岩などを破壊するために使用される掘削機の一種だ。

 実は数日前に行われたセンサーによる地質調査で、ある場所に非常に硬い岩の層が発見されたのだ。それを破壊し、地下の掘削を進めるのが彼の仕事だと言える。

 無線から、別の男の声が聞こえた。

「了解、こっちも間もなくだ」

 難波秋信40歳。恭介の長年の相棒だ。

 彼のロボットには、リッパーと呼ばれる一本のカギつめ型のアタッチメントが取り付けられている。ブレーカー同様、こちらも大きな岩や固い埋設物を削る際に使用される掘削機である。

 現在この現場では、東京地下放水路の工事が進められている。

 地下放水路とは、大雨による洪水で水位が上昇した中小河川の水を地下トンネルに取り込み、地下に作った水路で貯水・流下させ、大きな川等に排出する仕組みのことだ。有名な首都圏外郭放水路は、国道16号の地下約50メートルに設置された延長6.3kmの地下河川で、世界最大級の地下放水路である。各河川から洪水を取り入れる「流入施設」と「立坑」、洪水を流す地下河川の「トンネル」、地下空間で水の勢いを弱め、スムーズな流れを確保する「調圧水槽」、さらに地下から洪水を排水する「排水機場」などで構成されている。だが、近年の異常気象によりゲリラ豪雨や線状降水帯による大規模降雨の増加で、東京23区内の冠水が激増している。それに対処するために工事が進められているのが東京地下放水路だ。東京23区の地下約50メートルを西から東へと貫き、最後は大型河川の江戸川へとつながる。二人が掘削しているここは、江戸川のすぐ近くに位置していた。

 恭介の大きな声が響く。

「当たった!ここだ!」

 右腕の掘削機が、ガガガガと轟音を上げている。

 秋信も叫ぶ。

「こっちも来た!ここだな!」

 リッパーのカギ爪がガリガリと岩石を砕いていく。

 恭介が首をかしげる。

「事前の地質調査だと、このあたりにここまで硬い岩盤層があるとは出てなかったけどなぁ」

 それを聞き、秋信が苦笑した。

「地質調査の後に固くなった、なんてありえないけどね」

「でも、そうだとしか思えないよ」

 無言になる二人。そのまま作業を続けていく。

 センサーによると、この岩盤の厚みは約50cmだ。通常のトンネルの壁が30cm強であることを考えると結構厚い。

 その時、ボコッという音を立てて、恭介の掘削機が急激に進んだ。

「抜けた!」

 そう言うと恭介はブレーカーの振動を下げ、丁寧に穴を広げていく。

「こっちもだ!」

 どうやら秋信も、岩盤層を抜けたようだ。

 ポッカリと開いた穴を観察し、その中に重機のセンサーを突っ込む。

 驚きに目を丸くする恭介。

「おい、なんだよこれ」

 そこには巨大な空洞が広がっていた。

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