第329話 今日の日替わりA定食
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「今日のA定食も、とってもおいしいですぅ〜」
愛理はそう言うと、学食名物日替わりA定食のおかず、肉らしいほど旨いサクサク衣の名物とんかつを、ポイっとその口に放り込んだ。
修学旅行から戻り、今日のランチは久しぶりの学食だ。ひかり達ロボット部の面々は、教習所内の学生食堂に集まっていた。今日のみんなのメニューは、ひかりがお子様ランチ、正雄がビッグハンバーガーセット、両津がサワラの西京焼き定食、そして奈々、奈央、愛理、心音、大和が日替わりA定食である。
ひかりが隣に座る奈々に、子犬のようにうるうるとした視線を向ける。
「奈々ちゃん、私もとんかつ食べたいな。ひと切れほしいな」
「いいわよ、はい、あーんして」
「あーん」
パクリ。ひかりの口に奈々が、とんかつをひと切れ放り込む。
ひかりの顔がいつものようにパッと明るくなった。
「学食のとんかつ、やっぱりおいし〜!ケチャップをミックスしたスッキリソースが自慢でがんす!」
そんなひかりに両津が突っ込む。
「なんで広島弁?!」
「ケチャップが赤いもん」
「赤いのはカープや!」
「へ?」
ひかりが首をかしげる。
「それって、奈々ちゃんのこと?」
両津の目が泳ぐ。
遠野さん何言ってるんや?
サッパリ分からん!
両津はいつも瞬時に突っ込む奈々に、感心したように視線を向けた。
「それはホープ!両津くんが言ったのはカープ!」
自分で自分のことホープなんて言うんや!
両津は別の驚きに目を丸くする。
「じゃあ両津くんのこと」
「それはチープ!」
「誰がチープやねん!」
ひかりが両津を指差す。
くやし紛れに、両津もボケをかますことにする。
「えっと、アワアワでキレイキレイするんや!」
それには正雄が突っ込んできた。
「両津くん、大人ぶっちゃイケナイなぁ。君はまだそんな場所に行ったことはないだろう?ベイビー」
「へ?」
今度は両津が首をかしげる。
正雄がニヤリと笑い、両津に言った。
「ソープ」
「そっちのソープとちゃうわ!」
次に首をかしげたのは愛理だ。
「そっちって、石鹸以外にどんなソープがあるんですかぁ?」
奈々の頬がパァっと赤くなる。
「あんたたち何の話ししてるのよ!」
すると、ひかりが奈々を指差した。
「カープ」
「赤くなんてなってないわよ!」
今度は両津が思い切り突っ込む。
「遠野さん、カープって分かってるやん!」
「てへぺろ」
ひかりとマリエが声を揃えてそう言うと、ペロッと舌を出した。
「あんなに大変なことがあったのに、みんないつもと変わらないわね」
「確かに」
と言いながら、心音と大和があーんをし合っている。
二人共A定食なので、同じとんかつなのだが。
すかさずそれに両津が突っ込んだ。
「君らこそいつものまんまやん!あーんしてもどっちもとんかつやで!」
心音がさげすんだような目を両津に向ける。
「おいしいからいいのよ」
くやし紛れに叫んでみる両津。
「てへぺろ!」
とりあえず見様見真似でぺろりと舌を出してみる。
「可愛くなーい」
ひかり、奈々、奈央、愛理、心音、そしてマリエの女子全員の声が揃った。
「ほっといてくれ!」
定食のサワラをがっつく両津であった。
「あ!」
その時、何かを思い出したように両津が叫んだ。
奈々から怒りの視線が届く。
「食べながらしゃべらない!ちゃんと飲み込んでからにしなさい!」
「すんまへん!」
口内のサワラと白米をごくりと飲み下す両津。
「ちゃうねん、今日は修学旅行で色々あったことを、みんなで報告したい思ててん!」
確かに、途中から別行動組が出た彼らの全員が、ISSでの出来事の全てを知っているわけではない。
暴走ロボットに対峙したメンバーは何を経験したのか?
その頃プロジェクトルームでは何をしていたのか?
奈央が真面目な目で一同を見渡す。
「それでは、修学旅行の報告会を始めますわ」
その声に、皆が居住まいを正した。




