第324話 両津の作戦
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「せっかく三対一になったんや、これを利用しない手はあらへんで!」
『まぁそりゃそうやけど、いったいどうしろっちゅうんや?両津』
高揚した声の両津に、無線から南郷の戸惑い気味の声が届いた。
ふうっと息を吐き、落ち着こうとする両津。
正雄がちらりと振り返り、両津に言う。
「俺も気になるぜ、どんな作戦なんだい?ベイビー」
奈々からも焦り気味の声が聞こえる。
『じらしてないで、いいから早く言いなさいよ!』
両津は右手の人差し指をピンと立て、チッチッチと横に動かした。
「あせったらあかん。こういう時は落ち着いたほうがええ」
『もんちっち』
『チッチッチよ!』
ひかりと奈々の漫才も無線から聞こえる。
それと同時に、無線から南郷の怒鳴り声が聞こえた。
『そんなことやっとる場合か?! はよ言わんと次のテスト0点やぞ!』
ビクッとする両津。実技と違い学科の成績は、今のままでも落第ギリギリの両津なのだ。
「わ、分かりました!言いますって!」
オホンと、ひとつ咳払いをしてから両津は言った。
「一人があいつの右側、一人が左側を抑えて、三人目がヘソを特殊警棒でドーンや!」
沈黙する一同。
最初に口を開いたのは奈々だ。
『みんなそう思ってたけど?』
複座の前席で正雄が肩をすくめている。
「へ?」
『へ?』
何も分かっていないような不思議な声を上げたのは両津とひかりの二人だった。
次の瞬間、二機の新型キドロと一機のアービンが動いた。
自機の位置から判断し、自分がどの役目を果たすべきか瞬時に判断したのである。
ブーツの磁力を切り、床を蹴って暴走アービンの左へ飛ぶ奈々機。
南郷機も同様に右側に飛んだ。
暴走アービンが盾とアックスを素早く構え、迎撃体制に入る。
ガキン!
奈々機の特殊警棒と南郷機のアックスが振り下ろされ、アービンはそれぞれ盾とアックスで受け止めた。
だが、それを待つよりも早く、正雄機が床を蹴る。
ガキン!と、盾と警棒、アックスとアックスがぶつかったとほぼ同時に、正雄機の持つ特殊警棒が暴走アービンの腹部に突き刺さる。
はずだったのだが……正雄機の特殊警棒はアービンの腹に刺さらず、はじき飛ばされた。
正雄がうめく。
「おいおい、頑丈な装甲だぜベイビー」
超硬合金製の特殊警棒は、大抵の金属なら突き通すことが可能だ。だが、さすがは米陸軍標準の主力ロボットである。特に守るべき部分の装甲は強力なのだろう。もちろん、地球上で最も硬い金属とも言われる超硬合金にかなうはずはなく、突かれた場所は大きく凹み、傷は付いている。だが、コントロールモジュールにはまだまだ届いていない。
『結局持久戦のようね。あいつが動かなくなるまで、何度でもやるわよ!』
キドロとアービンが、再び攻撃態勢に入る。
その時、正雄機のコクピットに爆発音が響いた。
驚きにあわてる両津。
「なんやなんや?!」
「俺の携帯のコール音は、陸自の12式地対艦ミサイルの爆発音だからな。いかしてるだろ?」
「心臓に悪いわぁ、この呼び出し音変えといて!」
そう叫ぶと両津はすでに手にしていた正雄の携帯に出る。
「もしもし、両津です」
電話の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえた。
『あれぇ? これ棚倉さんの携帯じゃないんですか?』
ロボット整備士の蒲田健太だ。
「あ、カマケンさん!ボク両津です!棚倉くんが操縦して、ボクが後ろに乗ってます!」
なるほど、とうなづいてから健太が言う。
『状況はどうなってます? ここには情報が全く入って来なくて』
あわてて現状を説明する両津。
南郷も参戦し、三対一で対応していること。
ロボット用の手榴弾を使用されて、危うくキドロ用の盾で防いだこと。
そしてアービンの装甲が厚すぎてコントロールモジュールまで届かないこと。
「カマケンさん!何かええ方法はないですか?!」
電話の向こうで考え込む健太。
そして誰かと相談を始めたのがうかがえた。
恐らく同僚の亮平と久美子だろう。
いくつかの言葉が両津の耳に漏れ聞こえてくる。
『あれは国家機密だしなぁ』
『生徒たちに知られて大丈夫?』
『今はそんなこと心配してる場合じゃ…』
両津が聞き耳を立てていると、健太の重い声が聞こえた。
『両津さん。今から話すことはまだ国家機密扱いとなっています』
ゴクリと生唾を飲む両津。
『その格納庫には、新型キドロと同様にテスト中の武器があります。それなら、たぶんなんとかなると思います』
「どんな武器なんですか?」
今度は健太がつばを飲み込んでから言う。
『キドロ用の刀、ROGAの新型です』
両津の脳裏に、東京ロボットショーで奈々の姉が乗るキドロが構えていた日本刀のような武器が浮かんだ。
「あれならいけるかもしれへん!」




