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第323話 アービンの弱点

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「それで、山下センセもアービンについて、アイさんから何か聞きはりました?」

 南郷が自我を取り戻した美咲にそう聞いた。

「はい。ただ私はロボット工学に明るくないので、アイくんが見つけた詳細については分かりませんけど、コントロールモジュールの場所なら大体分かります」

 南郷の顔が明るくなる。

「じゅうぶんですわ!はよ準備して、あいつらの加勢に行きましょ!」

 そう言うと南郷は、右腕に持つ巨大なアックスのドッキングシステムをチェックし始めた。


「奈々ちゃん!」

 ひかりが突然大声で奈々を呼んだ。

 びくっと肩をすくめる奈々。

「びっくりするじゃない!今あいつと睨み合ってる最中なんだから、驚かさないでよ!」

「てへぺろ」

 右の口角から小さく下をペロッと出すひかり。

 それを見ていたマリエも、同様にペロッとする。

 二匹の子猫のように相似形である。

 か、可愛いじゃないかっ!

 奈々は再び、ついそんな風に思ってしまった。

 首を左右に振り、その思いを振り払って奈々が言う。

「それで、アイくんはなんて言ってたの?」

「おへそ!」

 ひかりとマリエが声を揃えてそう言った。

 か、可愛いじゃないかっ!

 いやいや、今はそんなことを考えている場合ではない。

「おへそって、腹部の中心あたりかしら?」

 ひかりが首をかしげる。

「たぶんそうだと思う。だってアイくん、おへそだよって言ってたから」

 マリエがポソっとつぶやく。

「木を隠すには森の中」

 それに奈々が突っ込んだ。

「マリエ、そのことわざは意味が違うわよ。それだとアービンにはおへそがいっぱいあることになっちゃうわ」

「日本の言葉は難しい。森の中ってそういう意味だったのか」

 うーむと考え込むマリエ。

 そのとなりでひかりが言う。

「森の宮」

「それは大阪の地名!」

「森の人」

「エルフかよ!」

「森野熊八」

「誰よ?!」

「歌う料理人だよ?」

 ひかりに突っ込みながらも、奈々は思考する。

 へその辺りと言うことは、恐らくコクピット直下にあるのだろう。確かにボティ中心の装甲は最も厚く作りやすい。盾などの防御武具でも守りやすい位置だと言える。だが、奈々の心にはほんの少しの怒りが混ざっていた。

 袴田素粒子に関係なく、戦闘になれば敵は相手ロボットのコントロールモジュールを狙ってくるに違いない。つまりコクピットが乗員にとって一番危険な場所になってしまう。人命よりも機能を重視したその設計思想に、奈々は虫唾が走る思いを感じていた。

 軍用ロボットってこういうものなのかしら……。

 だが思い出す。陸上自衛隊のヒトガタはそうでは無かった。

 設計思想が違うのか?

 ううん、今はそんなことを考えている場合ではない。

 奈々はそんな思いを振り払い、無線に叫んだ。

「棚倉くん、聞こえてた?!」

『もちろんだ。茶を沸かすぜベイビー』

「沸かすんじゃなくて破壊するのよ!」

『君は怒ると眉毛が、』

「いいから二人でやるわよ!」

『了解だぜ、ハニー』

「ところで奈々ちゃん、あのロボットにおへそって付いてるの?」

 ひかりの質問に意表を突かれる奈々。

「いや、無いと思うけど」

 奈々の言葉に、マリエがポツリと言う。

「カエルさん」

「ええーっ?!あのロボット、カエルロボなの?!」

 目を丸くするひかり。

「違うわよ!へそがあるのは哺乳類よ!あいつどう見ても哺乳類に見えないでしょ!」

 そんな奈々に正雄が突っ込んだ。

『お嬢ちゃん、コアラは哺乳類だが、へそは無いぜベイビー』

『ホンマか?!棚倉くん!』

 両津の驚きの声まで参加してくる。

「じゃあ、あれのおへそってどの場所のことだろ?」

 ひかりのそんな疑問に、マリエがズバッと答えた。

「お腹のど真ん中」

 その時、そんな無線通話に、もう一人が割り込んできだ。

『俺もまぜてくれへんか?』

 南郷である。

「南郷教官!もう戦えますか?」

 奈々の問いに、南郷が不敵な声で答える。

『準備オーケーや!』

「じゃあ三人ね!」

『ちょっと待ったぁ!』

 そこにまた両津が割り込んできた。

 奈々がそれを制止する。

「もうおへその話はいいの!」

『ちゃうって!』

 珍しくその声は真剣味を帯びている。

『みんな、いつもの悪いクセが出てまっせ!何の作戦もなく、とりあえず突っ込むなんて死亡フラグばりばりや!』

 両津の言うことも一理ある。

 東京ロボットショーの戦闘でもそうだった。

 だが今回は違う。敵の弱点が分かっているのだ。

『ボクにええ作戦があります!』

 無線から聞こえる両津の声に、ニヤリとした笑みが含まれていた。

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