第319話 忘れとったぁ!
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
『俺のライバルさん、次はどうする?』
「ライバルって、私もひかりもマリエも、みんなライバルだって言ってたじゃない。それ誰のことよ?」
無線から聞こえた正雄の声に、奈々がそう答えた。
フフッと、正雄から笑いが漏れる。
『じゃあ俺のライバルさんたち、この後はどうする?』
それに即座に答えたのはひかりだ。
「この後はね、みんなでプロジェクトルームに戻ってデザートを食べるんだよ」
「そんなに後のことじゃないわよ!」
相変わらず奈々のツッコミが飛ぶ。
現在二機のキドロと暴走アービンは睨み合っていた。
ジリジリと時間が過ぎていく。
その時、無線から両津の声が聞こえた。
『とりあえず南郷センセが戦闘準備に入ってるから、このままもうちょっと待てばなんとかなるで!』
チラっと後部スクリーンに映るアービンに目をやる奈々。南郷機は、今まさに左腕に盾を装備しようとしていた。右手で持つための巨大なアックスもすでに背中から外し、その横に浮かべている。
「そうね。無理するよりその方が安全ね」
そう言った奈々だったが、すぐに正雄からの反論が聞こえた。
『それまでヤツが待ってくれるといいんだがな、ベイビー』
正雄の不安は的中した。突然暴走アービンが動き始めたのだ。
前腕に盾を取り付けた左腕で、腰のあたりに手を回している。
奈々が首をかしげる。
「あいつ、何をする気?」
「カルキ!」
「次亜塩素酸カルシウムかよ!」
そんな会話をさえぎって、正雄が叫んだ。
『ロボット用手榴弾だ!』
その時すでに暴走アービンは、左手にアーミーグリーンのシリンダーのような物を握っていた。
『あれはヤバいぞ!爆発したら破片が襲ってくる!距離を取るんだ!』
二機のキドロはとっさに回避行動に移った。床を蹴り、暴走アービンの左右に飛びのく。そうすれば、手榴弾を投げつけられるのはどちらか一機になるからだ。奈々と正雄は、すでに阿吽の呼吸を身に着けていた。
手榴弾は安全ピンを抜いて投げると4~5秒後に爆発する。爆発で敵を吹き飛ばすのではなく、破片を飛ばすことで相手を破壊する仕組みになっている。このままでは、どちらか一機のキドロは破壊されてしまうだろう。
アービンがアックスを持つ右手を伸ばし、そのピンをぐいっと引き抜き大きくふりかぶった。
突然、両津の大声が無線から響く。
『そうや!背中や背中!』
奈々機に向かって投げられる手榴弾。
「背中がどうしたのよ?!」
マグネットブーツの電流を切り、空中を飛ぶキドロから奈々の質問が両津に飛んだ。
『背中にキドロ用のシールド、しょってるはずや!』
「どうしてそれを早く言わないのよ?!」
『忘れとったぁ!』
「てへぺろ」
忘れていたのはひかりではないのだが、奈々の後ろでそんな声が聞こえた。
キドロ用の新型は、以前陸奥がジガ砂漠でテストしたシールドの最新バージョンである。最新の超硬合金製で、衝撃だけでなく熱にも強い。機関砲などロボット用飛び道具の使用が増えているテロ対策として、今回の新型から新しく装備されたものである。
ドカン!
大きな衝撃が格納庫に走った。手榴弾が爆発したのだ。
奈々機に襲いかかる熱された破片の群れ。
その一瞬前、奈々機はシールドの装備に成功していた。
刺さることもなく、破片の全てを跳ね返す新型シールド。
『間に合ったぁ』
安堵の声を漏らす両津。
「まだよ!あいつ、いくつ手榴弾を装備してるか分からないわ!」
『それに……』
無線から正雄の重い声が届いた。
『あんなもの何発も投げられたら、ISS自体がぶっ壊れちまうぜベイビー』
絶体絶命のキドロチームであった。




