表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

318/508

第318話 ありゃなんです?!

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

『南郷センセ!チャンネル22ですわ!』

 スマホから聞こえる両津の声がそう叫んだ。

「なるほど、ロボット標準無線か。確かにスマホよりしゃべりやすいわな。了解した!」

 南郷はトンとスマホをタップし両津との通話を切る。そして目の前のコンソールを操作し始めた。

「こいつをオンにして……ほんでこれを」

 関西人の特徴なのか、南郷も両津同様に独り言が多い。いちいち自分の行動を言語化してしまう。だが今は、そんな南郷のクセが美咲を安心させていた。複座の後席からでは、前席で何をしているのかがよく見えない。だが南郷がしゃべってくれるおかげで、どうしようとしているのかが美咲にも何となく分かるのだ。

「で、チャンネル22と」

 南郷がチャンネル選択つまみをカチカチと回し、22にセットする。

「これでいけるやろ。ハロハロ〜!こちら南郷や!みんな聞こえとるか〜?!」

 すぐさま生徒たちから返事が返る。

『しっかり聞こえてるぜベイビー!』

『センセ、聞こえてます!』

『こちら泉崎、聞こえてます!』

『テンツー!』

 ひかりだけがテンコードである。

 首をかしげる南郷。

「テンツー? なんやそれ、ファイナルファンタジーか?」

 後席から美咲が言う。

「テンコードで受信良好、です」

「マニアックなもの知っとるなぁ」

 一瞬呆れ顔になった南郷だったが、すぐにキッと表情を引き締めた。

「ほんで今どうなってんねん、状況を教えてくれ」

『どうもこうも、ご覧の通りだぜベイビー』

 正雄から、苦笑まじりの声が届く。

 何度かの激突の後、ほぼ互角の戦いを見せた両者は今、じっと睨み合っていた。

 どちらかが動こうとすると、すかさず相手がその対応に動く。これではパイロットの体力勝負だ。もちろん暴走アービンにパイロットはいない。長期戦になればキドロチームの不利が確定してしまう。

『南郷教官!』

 奈々がこれまでの戦闘を、無線で南郷に説明し始めた。

 マグネットブーツを得たことで、キドロ二機は暴走アービンと互角に近接戦闘を繰り広げてきた。だが、いくらアービンに一撃を加えても、大きなダメージを与えることができない。素早さではキドロが勝るため、アービンの攻撃は全てかわすか特殊警棒で受け止められる。膠着状態になっているのは、そんな理由からである。

 奈々が南郷に問いかける。

『南郷教官の権限で、アービンのコントロールモジュールの位置を探ることはできませんか? 私たちではデータベースを検索しても、権限が無いとはねられてしまうんです』

 南郷が苦笑して言う。

「いやいや、俺にもそんな権限あらへんがな」

 そうは言ったが、南郷が何かに気付いたようにハッと目を開いた。

「分かった。試してみるから、もうちょっと頑張っててくれ」

『了解!』

 無線を切ると南郷はスマホをタップする。

 さきほどかけた、愛菜の番号だ。

「はよ出てくれよ」

 南郷は小さくつぶやいた。


 その頃ブリッジでは愛菜を始め一同が、前面スクリーンを息を呑んで見つめていた。室内に響く警告音も、一段と大きくなっている。

 野口が突然、素っ頓狂な声を上げる。

「ありゃなんです?!」

 異形の衛星の一部が、まるでハッチのように大きく開いている。

 そしてそこから、何者かがゆっくりと姿を現わそうとしていた。

 そいつもまさに異形のモノだ。ヒト型と言えなくもないが、胴体から手足が昆虫のように多数見えている。そのそれぞれが違った形をしており、奇妙な突起が多数生えていた。

「怪物?」

 そううめいた野口に、愛菜が言う。

「怪物の定義にもよるけど、あれは多分何らかのメカニックじゃないかしら」

「メカですか?」

「今この空間は太陽光に照らされてる。外の温度は約130度よ。しかも、もうすぐ地球の影に入ってマイナス120度になる。そんなところで生存できる生物なんていないわ」

 野口がスクリーンを見つめたまま愛菜に言う。

「外骨格生物にも見えますけど」

「そういうデザインの宇宙服か、ロボットじゃないかしら」

 そんな会話に返事をせず、船長が小隊長に顔を向けた。

「あれがここを襲ってきたらどうなると思うかね?」

 うーむと少し考え、小隊長が船長に向き直る。

「実際に戦ってみないと分かりませんが、アレの推定身長はアービンの二倍以上です。勝てない可能性もあるかと」

 再びスクリーンに目を向ける船長。

「うむ。どうするかだな」


「あかんわ。伊南村博士、携帯に出えへん」

 南郷は愛菜に電話で現状を伝え、船長にアービンの設計図の閲覧権限をもらおうと考えていた。だが電話がつながらない。

 ブリッジで何かあったのか?

 それとも手が離せない状況なのか?

「どうしました?」

 後ろから美咲の心配そうな声が聞こえた。

 コクピット内は一気圧に保たれているので、二人共ヘルメットのバイザーを上げている。

「いえ、軍事機密の壁を破ったろ思たんやけど、ブリッジと連絡が取れまへんねん」

「軍事機密ですか?」

 南郷が肩をすくめる。

「ええ。アービンのコントロールモジュールを破壊せんと、あいつの動きは止まらへんのですわ。で、設計図とか見る権限を船長にもらお、思たんですけどねぇ」

 なるほどと、美咲がうなづいた。

「あの……」

「なんです?」

 美咲がキッと表情を引き締めて言う。

「私とアイくんでやってみてもいいでしょうか?」

「へ? そんなこと、できまんの?」

「分かりませんが、試す価値はあると思います」

 南郷の声も真剣になる。

「了解や。ぜひやってみてくれ!」

「分かりました」

 美咲は顔を伏せると、そっと目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ