第316話 突入や!
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
トントンと、スマホをタップする音が船内通路に響いた。呼び出し音が数度鳴り、愛菜の声が聞こえる。
「こちら南郷です。今、格納庫の前に着きました」
『南郷さん、すでにアービンスペア1は起動中で、素粒子防御シールドも上がっている状態です』
「使用権限は?」
『大丈夫です、こちらから遠隔で書き換えました。操縦グリップの指紋認証か、コクピットカメラの虹彩認証で動かせるはずです』
南郷がニヤリと笑う。
「ありがとさんです。しかしアービンはホンマすごいですなぁ。ウワサには聞いとりましたけど、さすが米陸軍の主力ですわ」
それには答えず、愛菜から心配げな声が聞こえた。
『あの……愛理はどうしてますか?』
南郷は努めて明るく答える。
「心配はいりまへん。多分今頃はプロジェクトルームで、みんなと一緒にデザートでも食べとると思います。それに、ロベール博士がついてくれてますし」
電話の向こうから、愛菜が漏らした息の音が聞こえた。恐らくホッとしたのだろう。
『それと南郷さん、私の推測ですがキドロに乗っているのは泉崎さんと棚倉君だと思います』
今度は南郷がホッとしたような表情になった。
「なるほど、我が校のツートップですな。そりゃ心強いですわ」
『ではよろしくお願いします』
「まかせなはれ!」
トンとタップし、通話を切った南郷が後ろの美咲を振り返る。
二人共移動途中で与圧服に着替え、ヘルメット姿だ。
「このまま突入しますけど、準備はよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
ほんならと、南郷は再びスマホをタップする。
「うわっ!なんやなんや?!」
突然コクピット内に響いた爆発音に、両津が驚きの声を上げた。
スクリーンの暴走アービンを視線から外さずに正雄が言う。
「俺のスマホが鳴っているんだぜベイビー」
「す、スマホ?!」
「俺のコール音は、陸自の12式地対艦ミサイルの爆発音だからな。いかしてるだろ?」
両津に振り向かずに、正雄が白い歯を見せて笑顔になる。
呆れ声になる両津。
「紛らわしいことせんといて!キドロが爆発したんかと思たわ!」
「俺は今取り込み中で、電話には出れない」
「そらそーや」
「ということで、両津くんが代わりに出てくれ」
「え? スマホどこにあるん?」
「スボンの右ポケットだ」
「うわ〜、取りにくいやん」
シートベルトを外し、複座の前席に手を伸ばす両津。
「うーん、届かへん」
思い切り手を伸ばし、ごそごそとなにかをまさぐる。
「そこは俺の12式ミサイルだぜベイビー」
「何アホなこと言うてんねん!あ、取れた!」
正雄のスマホを手にすると、急いでシートベルトを締め直す。
トンとタップすると南郷の声が聞こえた。
「南郷センセ?!」
『両津か? これ、棚倉くんのスマホちゃうんか?』
スマホをしっかりと左耳に当てると両津が説明する。
「棚倉くんは今操縦で手一杯なんで、ボクが代わりに出たんです!」
「俺の12式も出そうになったけどなベイビー」
そう言った正雄に、両津が叫ぶ。
「そんなこと言ってる場合ちゃうやん!あ、南郷センセに言ったんちゃいますねん。それより、どうしたんですか?」
南郷の緊迫した声が両津の耳に届く。
『実は今から俺と山下センセが両津くんたちがいる格納庫に突入するんや』
「え?!なんで?!」
『無事なアービンに乗って君らを援護するためや』
両津の顔がパッと明るくなる。
「ホンマでっか?!」
『だから、俺らがアービンにたどり着くまで、暴走しとるヤツを引き付けといて欲しいんや』
「了解です!棚倉くんにも泉崎さんにも、ボクから伝えますわ!」
『よし、頼んだで!』
南郷は通話を切ると美咲に向かって言う。
「ほな、行きましょか」
「はい!」
二人は、はね上げていたヘルメットのバイザーを下ろし、カチリとロックした。




