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第315話 軍事機密の壁

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 奈々機が素早く飛び退いた。ほんの少し曲げたヒザから繰り出されたパワーで、無重力空間を跳ぶ。一方の正雄機は、超硬合金製特殊警棒を水平に構え、握っている右手だけでなく左手も使ってアックスを待ち受ける。

 ガキン!

 飛び散る火花。

 大きな衝撃が正雄機を襲う。

 だが、電磁石で踏ん張る力を得た正雄機は、巨大アックスのパワーをしっかりと受け止めていた。アックスと特殊警棒が、ギリギリと日本刀のつば競り合いのように火花を散らし続ける。

「さすがアービン、すごいパワーだぜ!」

 苦笑しつつそう言った正雄だったが、両津は逆に感心したような声をあげた。

「いや、新型キドロもすごいやん!アメリカ陸軍の軍用ロボットにぜんぜん負けてへん!これヒトガタよりパワーあるんとちゃうか?!」

 ハッとする正雄。

「それは言えてるぜベイビー!増々燃えてきたぜ!」

 中空に飛んだ奈々機はスラスター噴射で姿勢を反転、その先の天井を蹴りアービンに突進する。この短時間の戦闘で、奈々は無重力での戦い方を急速に学習していた。

 そのまま飛び蹴りの姿勢で、アービンに迫る。それを拘束セラミック装甲のシールドで迎えるアービン。だが奈々はそれを予想していた。盾の材質はチタンとセラミックだ。電磁石は効かないが、跳び箱の踏み切り板だと思えばジャンプの軌道を変えるに十分な役目を果たしてくれるだろう。奈々機はその盾を蹴ると、スラスターで前転のように回転、アービンの頭に真っ向切りのように殴りかかる。

「ひかり!正確な照準をお願い!」

「アイアイサー!」

 複座の後部席でひかりが、コンソールのスクリーンにくっ着きそうな勢いで顔を寄せ照準を合わせる。ぶんと空を切って振り下ろされる特殊警棒。

 グギャン!

 と、アービンの頭部に警棒が食い込んだ。

 そのままアービンの肩を蹴り、その後方へ跳ぶ奈々機。ズンと、電磁石の力で床に着地する。右手を上げ、スクリーンで確認するがアービンから引き抜いた警棒には傷ひとつ付いていない。

 一瞬、棚倉機を抑え込もうとアックスに込められていたパワーが弱くなる。

 すかさず数歩後退し、アービンの間合いから抜け出る正雄機。

 両津が叫ぶ。

「やったかもしれん!」

「おいおい両津くん、そのセリフはフラグだぜ」

 そんな正雄の言葉通り、アービンは頭を少しガクガクと震わせると、何事も無かったかのように盾とアックスを構えた。

「ホンマやぁ」

 ガッカリとした両津の耳に、奈々の言葉が響く。

『やったか?! は禁止よ!』

「すんまへ〜ん!」


『おいニナ!中を見てみろ!』

 エアロックハンガーの外で、デブリ防御のために盾を構えているアービン二機の内一人のパイロット、エドからの声がニナに届いた。

 盾の構えを崩さないよう気をつけながら、ニナは強化ガラスの窓から格納庫内に目を向けた。ニナの目が大きく見開かれる。

 そこでは、新型キドロと思われる二つの機体が、暴走アービンと戦っていた。しかも戦況は互角のようだ。

「あれって、子供たちがやってるの?!」

『多分そうだろう』

 スクリーンのワイプに表示されているエドも、驚きの表情を見せている。

「ブリッジ、こちらゼロフォー!格納庫内の映像を送ります!」


「船長!シルバーウィング格納庫内の映像が来ます!」

 運行クルーの声に、船長以下ブリッジの全員が前面の大型スクリーンに目をやった。

 そこでは、まるで人間のようにスマートな体型をしたロボット二機と、米陸軍の主力軍用ロボットが近接戦闘を繰り広げていた。

「すごいな」

 思わず船長がつぶやいた。

「いくら最新型とは言え、警察用の機体がアービンと互角に渡り合うなんて」

 小隊長も唸り声を絞り出す。

「軍も、そろそろアービンの後継機を考える頃合いかもしれませんね」

 だが、愛菜には分かっていた。

 あの動きは、都営第6ロボット教習所で繰り広げられた対ヒトガタ戦で見たことがある。

 多分パイロットはあの子たちだわ。

 愛理が大好きなあの子と、マイトガイ。

 心配で胸が押しつぶされそうになっていた愛菜だったが、それに気づいた今、ほんの少しだけホッとしていた。

 あの子たちなら、きっと大丈夫!

 知らぬ間に、両手のこぶしをぐっと握りしめている愛菜だった。


「いくら殴っても、あいつぜんぜん平気やん!」

 両津の声はすでに悲鳴に近かった。

 キドロ二機の連携プレイで、これまでに数発のクリティカルヒットに成功している。そのため、暴走アービンには何箇所かの凹みが認められた。だが、その動きには何の変化もないのだ。

 無線から奈々の声が届く。

『やっぱり、コントロールモジュールを破壊しないとダメなのよ!』

 その時、正雄機のコクピットにもひかりの叫び声が響いた。

『うひゃーっ!』

 ひかりの叫びに、両津が問いかける。

「なんやなんや?! 遠野さん、どないしたんや?!」

『もう一回検索してみたけど、またなんか画面に英語がどばーって出てきたよ!』

『軍事機密。あなたには閲覧する権限がありません』

 マリエの冷静な声が聞こえた。

「両津くん!こっちも検索してみるんだぜベイビー!」

「へ? 何を?!」

 両津の間抜けな声に、正雄がニヤリとして言う。

「アービンのコントロールモジュールの位置だ。設計図か構造図でもいいぞベイビー」

「分かった!やってみる!」

 一瞬の後、両津の悲痛な叫び声が響いた。

「なんじゃこりゃー!英語ばっかりで読めへんやん!」

『軍事機密。あなたには閲覧する権限がありません』

 その耳に、マリエの冷静な声が聞こえた。

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