第314話 盾
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
ガイン!
格納庫の床や壁が振動で震える。
マグネットブーツで自由に走ることが可能になった正雄機の右パンチが、アービンによって勢いよく弾かれたのだ。その左腕には、頑丈そうな盾を装備している。次に奈々機の右パンチがアービンを襲った。正雄と奈々の動きは、まるで作戦を練ったかのように見事な連携を見せている。だがそのパンチも、アービンは盾で安々と弾き返した。
正雄機の後部席でパンチの照準を合わせていた両津が驚きの声を上げる。
「棚倉くん、なんやあれ?! 傷ひとつ付いてへんで!」
正雄が苦笑して両津に言う。
「アービン自体の開発年度は古くても、あのシールドは最新装備だったはずだ」
その時無線から奈々の声が響いた。
『私、技術雑誌で読んだことあるわ。確か拘束セラミック装甲の盾だったと思う』
ヒューっと、正雄が口笛を吹いた。
「まいったぜ。だとすると、殴ったぐらいじゃ歯が立つわけがないぜベイビー」
「そんなにすごい盾なんか?」
両津の質問に、正雄が苦笑しながら答えた。
「世界中の戦車装甲の標準となってるチョバムアーマーの数倍の防御力を持つ、なんて言われてる装甲板さ」
『二人で同時に殴りかかるのはどうかしら?』
「同時に?」
『盾は左腕にひとつだけよ。弾けるのはひとつのパンチだけでしょ?』
「ちがいないぜ」
正雄がそう言い終わらない内に、正雄機と奈々機は同時に飛び出した。
二機同時にアービンに襲いかかる。
正雄機は左から、奈々機は右から。
盾をガッと振り上げるアービン。
奈々機のパンチのコースだ。
「よし、もらった!」
正雄はそう叫ぶと、思い切り右パンチをアービンに振るう。
ガイン!
再び格納庫が振動に震える。
「なん、だと?!」
奈々機のパンチを盾で弾いたように、正雄機が繰り出したコブシをアービンが弾き飛ばしたのだ。その右腕には、巨大なロボット用アックスが握られていた。
驚きに目を丸くする両津。
「あんなもん、どっから出したんや?!」
『背中にしょってたのよ!』
両津に比べ、遥かに動体視力に優れた奈々から声が飛んだ。
「まずいな」
正雄が苦しげにうめく。
「何がまずいんや?!」
両津が心配げな声を漏らした。
「あの斧で攻撃されたら、いくら新型でもただじゃ済まないだろうぜ」
「コントロールモジュールの場所も分からへんし、ボクら結構ピンチなんちゃう?!」
ニヤリと笑う正雄。
「ピンチだっ!」
『何嬉しそうな声出してるのよ!』
奈々から怒りの声が届く。
このままじゃヤバいやん!
どないしたらええんや?!
そう思った両津だったが、ハッと思い出したように顔を上げた。
「そや!あれがあったはずや!」
そんな両津に、肩越しに疑問の視線を向ける正雄。
「あれって何だ?」
「あれや!あれ!キドロの左腰になんか付いてるはずや!」
両津の言葉に正雄、そして奈々も前面スクリーン左下に見えている何かに目をやった。
『これ、何なの?』
「特殊警棒や!超硬合金製の!」
「マジか?!」
「しかも新型用に新開発された、めっちゃすごいヤツや……って聞いた!」
その瞬間、正雄と奈々は右マニピュレータでそれを腰から引き抜いた。
まるで宇宙船のドッキング機構のようなシステムで、いくつかの指と警棒の柄がしっかりと接続される。右腕を振るう二機。ジャキンと伸びる特殊警棒。
「これなら戦えるぜベイビー!」
『もちろんよ!』
そんな二人に向かって、今まさにアービンがアックスを振り下ろそうとしていた。




