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第313話 テンコード

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「なにこれ?!すごく操縦しやすい!」

 操縦レバーを引きながら、奈々がそう叫んだ。

 電磁石ブーツの機能をオンにした新型キドロは、やっと自分の手足のように動かせそうだ、奈々はそう感じていた。

 無重力状態では、それに合わせた戦い方がある。だが奈々を含め生徒たちは、まだそれを習ってはいない。電磁石ブーツは、無重力での近接戦闘に慣れていない彼女たちの良い助けになりそうだ。

 銅線に電流を流すと、流す方向にしたがって磁束が生まれる。この銅線を丸くらせん状に巻くと、巻いた分だけ磁界の力が強くなる。このコイルの中に鉄の棒などを差し入れるとそれが磁化され、まるで磁石のように他の金属を吸着するようになる。その現象を利用したのが電磁石であり、新型キドロのブーツにはカカトからつま先まで平行に何本ものコイルが装備されている。そこに流す電流の大きさをAIが細かくコントロールすることで、スムーズに歩いたり走ったりジャンプしたりできる設計になっていた。例えば歩行時には、まずカカトの電流が弱められ、順につま先に向かって同様にコントロールされる。この微妙な塩梅が絶妙に人体を模倣しており、まるで自分の足で有重力の地上を歩いているように感じさせる。新型キドロ開発チームの自慢の技術である。

 奈々機の歩く様子を、正雄と両津は目を丸くして見つめていた。

 両津が思わず叫ぶ。

「棚倉くん、あれどーなってんねん?!」

 右手をアゴに当て、うーんとうなる正雄。

「もしかすると新型キドロにも、アービンと同様の機能が付いているのかもしれないな」

「ホンマかいな!ボクらもそれ使った方がええんちゃうか?!」

「正解だ!」

 と言って、正雄が黙り込んだ。

 前面スクリーンをじっと見つめたまま、何かに考えを巡らしているようだ。

「え? 棚倉くん、どうしたんや?」

 正雄がニヤリと笑い、右肩越しに両津に視線を向けた。

「どうすれば使えるのかが分からないのさベイビー!」

「なんじゃそりゃー!」

 無線から聞こえたその音声に呆れ顔になる奈々。

「ひかり、あのバカ二人に教えてあげなさい」

「了解で〜す!」

 コホンとひとつ咳払いをするひかり。

「え〜、本日は晴天なり、晴天なり〜!」

 無線から聞こえたその声に首をかしげる正雄と両津。

「なんや、今の?」

 ひかりの無線が続く。

『あー、あー、あー、聞こえてますか? こちらひかり、こちらは晴天です!どうぞ!』

 晴天て、ここ宇宙やん。

 両津が呆れ顔になる。

『聞こえていたら返事をお願いします!』

 正雄がそれに応じる。

「バッチリ聞こえているぜ、こちらも晴天だぜベイビー」

 いや、だからここは宇宙空間やって。

 両津が正雄の後頭部を見つめたまま頭を抱えた。

『そちらの声もしっかり聞こえています、テンツーです、テンツー!』

『ひかり、よくテンコードなんか知ってるわね』

『うん、前に教習所に遊びに来た警察のお姉さんから教わったよ』

 ひかりと奈々の会話が聞こえてくる。

『遊びにって、あれは暴走ヒトガタを制圧するために来てくれたのよ!』

『そうだっけ?』

 そんなやりとりを聞いていた両津が正雄に聞く。

「テンコードってなんや?」

「こっちでは分からないが、アメリカじゃあ警察無線で使われる暗号みたいなものさ。今じゃスラングみたいにみんな使うけどね」

「さっきのテンツーって?」

「確か、受信良好って意味だったと思うぜベイビー」

 ひかりと奈々の会話はまだ続いている。

『日本の警察じゃ使われてないと思うけどなぁ』

『そうなの?』

『日本だとCB無線で使われてるけど、最近じゃあんまり聞かないと思う』

『あぁ、満腹だぁ。じゃあわたすはこれで』

『それは無銭飲食!私が言ってるのはCB無線!』

 また始まってしもた。

 両津がふうっとため息をつく。

 CB無線は、日本では市民ラジオやパーソナル無線と呼ばれるもので、アマチュア無線ほどの長距離ではなくごく近距離用の無線である。そのため免許が不要であったが、電波法の改正で現在では新しく開局することは認められていない。

 その時、両津が見つめるスクリーンの端にアービンが再び立ち上がる姿が写った。

 そうや!こんなことしとる場合やない!

 両津が無線に叫ぶ。

「病院食でも無銭飲食でもなんでもええから、地上みたいに歩く方法はよ教えてくれ!」

 ハッとしたように奈々から声が返る。

『スクリーンのどこかにelectromagnet bootsの表示があるはずよ!』

「えれ、えれ、えれれ?」

『エレクトロマグネットブーツ!電磁石ブーツよ!それをタップして!』

『タップダンス?』

 無線から聞こえたひかりの声を無視して、正雄と両津は自分の前のスクリーンに目を走らせる。

「あった!これや!」

 両津がそれをトンとタップした。

 と同時に、電磁石に電流が流れブーツに吸引力が宿る。

 シートベルトがぐいっとカラダに食い込んだ。

 そして正雄と両津が乗るキドロも、格納庫の床にどっしりと着地したのである。

「これで行ける!いっしょにあいつをぶちのめそうぜベイビー!」

『テンフォー!』

 奈々から、了解の意味のテンコードが届いた。

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