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第311話 ガラスの床

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 南郷と美咲は、シルバーウィングの通路を走っていた。ここは円柱部分の端、外縁部に位置する有重力エリアだ。普通の建物と違い、足の下に強化ガラスの窓がいくつも並んでいる。その向こうでは、ビロードのように美しい暗闇に浮かんだ青い地球が、ゆっくりと左へ進んでいる。宇宙ステーションに慣れていない南郷は、ついその窓をよけて走っていた。それを見た美咲が言う。

「南郷さん、ISSの窓は頑丈ですからよけなくても大丈夫ですよ」

 南郷は息を切らして走りながら、肩越しに美咲を振り返った。

「俺、高所恐怖症なんですわ。修学旅行で行った東京タワーのスカイウォークウィンドウも苦手やったなぁ」

 スカイウォークウィンドウは東京タワーの名物のひとつだ。展望台の一角に透明な床が設置されており、その上に乗って下を見下ろすことで、地上145メートルからの景色を全身で感じることができる。まるで空中に浮かんでいるかのような興奮と独特のスリルを体験できるという寸法だ。もちろん安全性は十分に考慮されていて、強化硬質ガラスと耐熱ガラスにより約1.5トンの重さにも耐えられるように造られている。

「それって、スカイツリーのガラス床みたいなものですか?」

 美咲の問いに、南郷が苦笑する。

「今の世代はそっちなんやなぁ。最近の修学旅行はスカイツリーなのかもしれんなぁ」

 ちなみに東京スカイツリーのガラス床は、天望デッキのフロア340にある。つまり340メートル下を見ることができる。

「山下センセ、あそこを曲がったらもうすぐエアロックハンガーや!」

「はい!」

 美咲も走りながら返事をする。

「シルバーウィングの中心に行くにつれて、重力が弱くなるんや。途中からは壁のフックを握って進むことになるから注意や!」

「了解です!」

 二人は、足下に重力を感じつつ足を早めた。


「なんやなんや?! あれどうなってんねん?!」

 両津が目を丸くする。

 奈々機の体当たりで吹っ飛んだ暴走アービンが、しっかりと両足を格納庫の床に着けて立ち上がったのだ。このエリアは無重力エリアである。いったいどんな仕掛けなのか?

「棚倉くん、分かるか?」

「サッパリ分からん」

 こんな非常時だと言うのに、両津はついクセでずっこける仕草をしてしまう。

 その時、チャンネル22に奈々の声が届いた。

『私、技術雑誌で読んだことがある。多分あれ、ブーツに強力なマグネットを装備してるのよ!』

「完成されて安定運用が可能な機体を、最新技術でチューンナップしてるってことかよベイビー」

 正雄が苦笑しながらうなる。

 無重力での近接格闘戦は非常にやりにくい。相手を殴りたくても、踏ん張ることさえできないのだ。だが相手はマグネットブーツにより、まるで重力があるかのような動きが可能になっている。無重力戦闘に慣れていない奈々と正雄にとって、強敵と言えるのかもしれない。

 両津があせったように言う。

「棚倉くん、泉崎さん、どないしよ?!」

『やるしかないでしょ!』

 無線から奈々の声が響いた。

 正雄もニヤリと笑って言い放つ。

「そうだ、やるしかないのさベイビー!」

 二機の新型キドロは、一歩一歩前進してくるアービンに対峙した。

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