第309話 戦闘開始
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「棚倉くん!どないしよ!」
キドロマーク2のコクピットに、両津の悲鳴が響く。
「まだ動けへんのか?!」
「無理だ、マリエくんの作業が終わっていない!」
正雄と両津が見つめる全天周モニターの足元では、マリエがマーク2を捕まえているロボットアームの解除作業を進めている。だがその背後から、暴走アービンがゆっくりと近付いているのだ。マリエの身に危機が迫っている。
正雄がハッと顔を上げて両津に叫ぶ。
「チャンネル22だぜベイビー!」
チャンネル22?
ロホット標準無線のチャンネルがどうしたんや?
22と言えば、教習所でよく使われているチャンネルやけど……。
「あ、それや!」
両津もハッとしたように顔を上げた。
目の前のコンソールを操作する。いくつかのスイッチを入れ画面をトントンとタップ、シークバーをスライドしてチャンネルを22にセットした。
「泉崎さん!聞こえとるか?!」
即座に奈々の声が返る。
『聞こえてるわ』
「マリエちゃんが危ない!なんとかしたってくれ!」
奈々は返事より早く、マーク2を操作した。
軽く膝を曲げると、強く床を蹴る。
無重力では、一度ついた勢いが弱まることは無い。そのままの速度で、奈々のマーク2は右肩からアービンに体当たりした。空中をマリエに向かって進んでいたアービンの軌道が変化する。危機一髪、マリエの後ろをかすめるように通り抜け、アービンが壁に叩きつけられた。壁に取り付けられている整備用ロボットの一台がぐしゃぐしゃにひしゃげる。
驚きの声を漏らす正雄。
「おいおい、あれの装甲はどうなってるんだ?! あの速度で壁にぶち当たったのに、傷ひとつ付いてないぜ」
両津も目を丸くしていた。
「あれ、こっちみたいな新型なんか?!」
その問いに正雄が苦笑する。
「いや、開発年度は結構前のはずだ。だが、X2アービンはアメリカ陸軍の現在の主力ロボットさ。ダテにメインを張ってるわけじゃないってことなんだろうぜベイビー」
なるほど、それはすごいはずや。
両津は心中で納得しながらも、自分を落ち着かせるようにふうっとひとつ、息を吐いた。
大丈夫や。こっちは新型やで、最新技術がてんこ盛りのはずや。きっとなんとかなる!
その時両津は、ふわりとした不思議な浮遊感を感じた。
「マリエくんが成功したぜ!」
正雄の声に足元を見る両津。そこではマリエが、ぶんぶんと手を振っていた。
「やっぱり天使やで、マリエちゃん」
「じゃあ俺たちも行こうぜベイビー!」
「了解じゃ!」
正雄はさっきの奈々機のように少しヒザを曲げると床をドンと強くキックした。
「こちらゼロフォー、エアロックドア、間もなく開きます」
そう報告したニナの耳に、緊迫したジョーンズ小隊長の声が届いた。
『次のデブリが射出された!今度は君たちを狙っているようだ!回避行動、もしくは盾を装備しろ!』
このまま回避すれば、デブリは再びエアロック内に突入する可能性がある。その場合、中で行動している新型キドロに危険が及ぶかもしれない。
「ゼロスリー!盾を!」
『了解!』
ニナは右腕で持つアックスを背中に回しアタッチメントにドッキング、すかさず腰に装備していた盾を左腕に装着する。その瞬間、デブリがものすごい速度で盾に激突した。
間に合った!
だが、小隊長からの無線は次のデブリの飛来を告げる。
『次が来る!そのまま防御態勢を維持!』
「了解!」
『了解!』
ニナとエドは、同時にそう叫んでいた。




