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第305話 エアロックドアを破壊せよ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 宇宙空間に浮かぶ巨大な円柱に、二つの黒い影がゆっくりと近付いていく。

 ISSの影に入っているそれは、肉眼だとただの真っ黒な影にしか見えない。

 チチチっと噴射されるスラスターの灯りが、わずかにそのボディーを照らした。

 それにより少し姿勢を変えたそれは、シルバーウィングの外壁に右腕を延ばす。そしてISSの外皮に張り巡らされているレール状の手すりに取り付いた。

「アービンゼロスリー、シルバーウィングに到着。エアロックドアに向かいます」

 X2アービンゼロスリーのパイロットはエドワード・フリーマン、アメリカ人。ワン、ツーのオリバー、イーサン同様、米陸軍からの派遣組だ。

 ほんの一拍遅れて、もうひとつの影もISSにやってきた。

「ゼロフォー到着、こちらはドアのすぐ前です」

 彼女の名はニナ・レイク。国連軍対テロ対策ロボット部隊から、臨時でここに赴任して来ているイギリス人だ。シルバーブロンドに青い目が美しいが、今は与圧服のヘルメットでどちらも見えていない。一方のエドは活発そうな刈り上げで、髪色は金髪、目は薄い茶色である。どちらも凄腕の軍用ロボットパイロットだ。

 先にエアロックドア前に到着したニナが、ドア自体を含めその周辺をチェックしていく。センサーを向け、熱反応や袴田素粒子反応を見る。

「ブリッジ。内部からドアを開くことはできませんか?」

 ニナの質問に、すぐに答えが返ってきた。

『オープン信号は送っているのですが、全く反応がありません』

「了解、こちらでも調べてみます」

 ニナは自機をドアの中心に移動させる。

 そこには大きな穴が開いていた。恐らく、数発のデブリが衝突した跡だろう。わずかだが、外へ出ていく空気の流れを検知できた。恐らくエアロック内の酸素のほとんどは、宇宙空間に四散してしまったと思われる。

『あれだな。ゼロフォー、ここから中を見てみろ』

 ニナはそのまま自機を進め、エドが指差す強化ガラスの窓の向こうに目をやった。

 格納庫の中で、ガクガクと不気味に震えているアービンが一機。

 それに目を向けたまま、エドが言う。

『急がないと、やつの暴走が始まっちまう』

「ドアを開けましょう」

 まずは、ドアのすぐ横にある開閉スイッチだ。

 蓋になっているカバーのネジを回していく。

 ピンっ!とカバーが開く。

 開閉二つのボタンの内「開」とプリントされた方を、ロボットの指でぐっと押す。

 だが、何の反応も無かった。

 ニナがため息をつく。

「予想通り。では、力ずくでやりましょう!」

 二機のアービンは、右腕を背中に回し何かをぐっと掴んだ。

 それを思い切り振り上げる。ロボット用の巨大なアックス(斧)である。

 二機のアービンがフルパワーで振り下ろすそれはには巨大な破壊力がある。

 ガイン!

 だがそれは、多少の傷をエアロックドアに残してはじき飛ばされた。

 エドがおどけたように言う。

『これも予想通り』

「そうね、続けましょう」

 二機のアービンは、そのままドアの破壊を続けた。


 三整備士の考えた作戦は、とんでもなく無謀なものだった。

 あと数分もすれば、袴田素粒子に感染したアービンが、格納庫で暴走を始める。

 軍用ロボットの暴走は恐ろしい。ISSが内部から破壊された場合、どんな被害が出るのかは想像するに難くない。恐らく設備どころか人命でさえ、甚大な被害を被ってしまうだろう。だが、現在ブリッジが行なっている対応策では時間がかかりすぎる。可能な限りより早く、暴走ロボットを止めなければならない。

 亮平が珍しく早口で生徒たちに言う。

「実はあの格納庫には、ボクらがテスト中の新型キドロが二機、あるんです。しかも、シールドを起動中なので暴走の心配はありません」

 その説明を健太が引き継いた。

「だから、新型を操縦できるパイロットがいれば、暴走したアービンを止められるかもしれないと考えました」

 久美子が顔を上げ、生徒たちを見渡して言う。

「だってここには、伝説の英雄さんがいるでしょ?」

 ドヤ顔である。

 それぞれ隣の者と顔を見合わせる生徒たち。

「あのぉ」

 両津が小さく手を挙げた。

「だから陸奥センセ、ゴールドへ向かったんでここにはおりまへん」

 そうだった。

 驚愕に目を丸くする三人の整備士たち。

「陸奥教官に連絡は取れないんですか?!」

 健太の問いに、レオがハッとする。

「船内無線は制限がかかってるけど、スマホならかかるかもしれないネ」

 船内服のポケットからスマホを取り出し、トントンとタップするレオ。

 すぐに左耳にあてる。

「あ、陸奥さんですか?」

 おおっ!っと沸き立つ生徒たち。

 どうやら繋がったらしい。

「すぐにこちらへ戻って来てもらえませんか?」

 陸奥からの通話に、うんうんとうなづくレオ。

 プロジェクトルームに不安な空気が広がっていく。

「皆さん、スピーカーホンにするので、陸奥さんの話を聞いてください!」

 レオはスマホをかかげ、ピッとひとつタップした。

『陸奥だ!みんな聞こえてるか?!』

「はい!」

 元気に、揃った声で返事をする生徒たち。

『デブリの攻撃で退路を絶たれた。そっちにすぐには戻れそうにない』

 皆がシンと静かに聞き入る。

『俺たちはブリッジに行って状況を探り、そちらにこのスマホで指示を出す。みんなは……』

 少しの間があって、陸奥が決心したような声音で言った。

『新型キドロで、暴走ロボットを止めて欲しい。パイロットは自分たちで相談して決めるんだ。ただし……』

 ゴクリと息を呑む一同。

『絶対に無理はするな。かなわないと思ったら、逃げるんだ』

「了解!」

 キレイに揃った生徒たちの声に、重い決心の色がうかがえた。

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