第300話 緊急事態とは?
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「う〜ん、何があったんやろ?」
両津が腕組みをしてそう言った。
ランチに用意された宇宙食をあらかたたいらげた生徒たちは、シルバーウィングのプロジェクトルームで討論に花を咲かせていた。
正雄が、ビシッと音が聞こえそうな勢いでポーズを決める。
「決まってるだろ!緊急事態だぜベイビー!」
そんな正雄に奈々が肩をすくめた。
「非常警報が鳴ったんだから、それは分かってるわよ」
「さすが俺のライバルさんだぜ!」
「私だけじゃなくて、みんな分かってるの!」
「じゃあみんな俺のライバルさんだ!」
ハァっとため息をついて奈々が言う。
「宇宙で緊急事態って、どんなものがあるかな?」
う〜んと、考え込む生徒たち。
そして全員が奈央に目を向けた。
「そうですわね、ありそうなのは第一に空気漏れですわ」
「怖いですぅ」
奈央の言葉に、愛理が首をすくめた。
「他には……」
中空を見つめながら、奈央が首をめぐらす。
「それか……ISSが軌道を外れて落下し始めたとか」
「もっと怖いですぅ」
そんな奈央に両津が肩をすくめる。
「さすがにそれは無いやろ。逆噴射でもせーへん限り、周回軌道に乗ってるISSが落ちたりせーへん……と思う、多分」
頼りない両津である。
心音がパッと大和に振り返り、問いを投げた。
「大和はどう思うの?」
「えーと、宇宙人が攻めてきた、とか?」
それには両津が思い切りかぶりを振る。
「それこそ有りえへんで。今の所地球人類の敵は素粒子や。それがいきなり宇宙人にはならんやろ」
確かに、と言う空気が生徒たちの間に広がった。
「遠野さんはどう思うんだい? どんな事態が起こっているのか分かるかい、ベイビー」
正雄の問に、ひかりがパッと明るく笑う。
「分かるよ!」
驚いた両津が目を丸くしてひかりに言った。
「ほんまかいな?! どんな事態なのか、教えてくれへん?」
「いいよ!えーと、犯人はこの中にいる!」
それに反応できたのは、いつものように奈々だけだ。
「それは遺体!」
泉崎さん、よう分かったな?!
両津は心のなかでも目を丸くしていた。
「あー!ぶつけちゃったよぉ」
「それは痛い!今話してるのは事態!」
「皆さん!私のコンサートに来て下さってありがとうございます!」
「舞台!」
「こりゃまた私としたことが〜、ペチン!」
「ひたい!」
「もう辞めさせてもらいますわ〜」
「辞退!」
左手を腰に当て、右手を頭の後ろに回す。
「うっふ〜ん!」
「裸体!」
そして自分を指差すひかり。
「あたい!」
ひかりと奈々の会話が、どうやら一段落したと判断したマリエが、ひかりに顔を向けた。
「緊急ってemergency? noodsituatieかな?」
それを聞いた奈央がマリエに聞く。
「それはオランダ語ですの?」
「うん。ひかり、緊急ってノオッドシトゥアチエのこと?」
任せなさい!と言う表情になるひかり。
「ゴールデンウィークとかとか、シルバーウィークとか」
「それは連休!マリエちゃんが聞いてるのは緊急!」
「やっぱり肩こりにはこれが効くなぁ」
「鍼灸!」
「電車が動いてないぞ〜」
「運休!」
「おめめぐるぐる〜」
「眼球!」
「両津くんのお小遣い」
「減給!」
「両津くんの生活」
「困窮!」
「なんでじゃ〜!」
緊急事態で聞くなんでじゃ〜は、なぜか皆を安心させていた。




