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第295話 スペースデブリ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「何も起こらないといいんだけど……」

 X2アービンのコクピットで、イーサンがそうつぶやいた。

 そんな彼の耳に、無線からオリバーの元気な声が届く。

「何も起こらないさ。もし起こったとしても、俺たちならなんとかできる!」

 こいつの能天気さには、いつも救われるよなぁ。

 イーサンは苦笑しつつ、そんなことを思っていた。

 彼らがそれぞれ乗っているのはX2アービン、米陸軍で正式採用されている軍用ロボットだ。一応彼らの所属は国連宇宙軍ということになっている。だが、地上の国連軍同様、ほぼ米軍が担当していると言ってもいいだろう。イーサンとオリバーも、肩書は国連宇宙軍特技兵だが、実質は米陸軍所属なのだ。

 操縦レバーをぎゅっと握りしめてイーサンが言う。

「アービンを宇宙で使うのは初めてだからなぁ」

「じゅうぶん訓練してきたし、何があっても大丈夫さ!」

 X2アービンはアメリカ合衆国の軍用車両メーカー、ジェネラル・アルバート社で開発された軍用ロボットだ。米陸軍の現在の主力であるだけでなく、その同盟国で数多く運用されている。もちろんISSでの使用にあたり、無重力や真空への対応のために改造された最新版だ。ちなみにアービンは、この機種の開発を推進した人物の名である。

 二人のアービンは、格納庫での待機を命じられていた。二機ともに、壁際に並んだドッグに、専用のアームでしっかりと固定されている。格納庫はエアロック付きで、ゴールドウィングの無重力エリアにある。今のところ待機状態なので、この部屋は一気圧に保たれていた。

 フッとイーサンがため息をもらす。

「でもさ、ISS内でアービンを使うなんて、どんな状況なのか想像もつかないよ」

「そりゃあれだ、えーと、敵ロボットが攻めてくるとか?」

 オリバーの言葉に、イーサンが笑う。

「さすがにそれはないだろう。アニメじゃあるまいし」

「ライスカレーだけじゃなくて、日本のロボットアニメも最高だぜ!」

 しまった、オリバーはカレーだけでなくアニメに関してもオタクなんだった。

 苦笑するイーサン。

「だけど、小隊長の顔、けわしかったよなぁ」

 彼らの脳裏に、united nations robot force URF第8小隊、通称ウルフ8の小隊長、ウィリアム・ジョーンズ中尉の姿が浮かぶ。招集に応じ、ブリーフィングルームに駆けつけた二人に小隊長は厳しい顔でこう言ったのだ。

「まだ分からんが、いざと言う時のために格納庫で待機だ」

 いざと言う時って、どういう時だ?

 今から一時間ほど前、ISSにひとつのスペースデブリが衝突した。

 スペースデブリは、ロケットや衛星の破片など、軌道上を周回している人工の物体、いわゆる宇宙ゴミのことだ。もちろんISSも、その衝突の可能性に常にさらされている。そのため、様々な対応策が講じられている。

 1cm以下のデブリに対しては、外壁の外側に貼り付けたアルミ製のバンパーで貫通を防ぐ。10cm以上のデブリについては地上のレーダなどで予め軌道を予測し、事前に軌道を変更して衝突を避ける。なお、1~10cmのデブリが当たった場合は、外壁に穴が開く可能性があるが、空気が抜けるまでに十分な時間がかかるため、乗員は隣のモジュールに退避し結合部の扉を閉じた後、船外活動で修理を行なう。

 万全とは言えないが、ほとんどの場合以上の対応で問題は起こっていない。

 今回衝突したデブリは約1cm。多少歪みはするが、アルミのバンパーで貫通は防げるはずだ。だが問題は大きさではなかった。

 デブリは軌道上に存在しているので、猛烈なスピードで飛ぶISSの進行方向からぶつかってくるのが通常だ。だが今回は違っていた。ISSに対して真横から、垂直に激突したのである。一回だけなら可能性が無いわけではない。だがその30分後、ふたつ目のデブリが全く同じ角度から、しかも一回目と同じ場所に命中したのだ。

「これは攻撃の可能性がある」

 小隊長の言葉に、イーサンとオリバーは震えた。

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