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第293話 マーク2

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「マーク2、ちょっとスリムになって増々人間ぽい体型になったよなぁ」

 通称マーク2と呼ばれる新型キドロを見つめながら、亮平がポツリとつぶやいた。

 隣でやはり新型を見上げながら、健太も言う。

「なのに外部装甲はマーク1より遥かに強くなってる。いつも思うけど、技術の進歩ってのはすげーよなぁ」

 感慨からかため息を漏らした健太に、久美子が笑いかけた。

「それを技術者が言ってどうするのよ」

「ちがいない」

 健太と亮平も笑う。

 今彼らが最終調整を行なっている新型キドロ、通称マーク2の外装は新しく開発された、より強度の高い超硬合金で覆われている。この新合金は、これまでより硬い上に軽量だ。おかげでマーク2は1に比べて格段に機動力が上がっていた。

 軽量化の恩恵は他にもある。一機の平均重量は、マイクロバスとあまり変わらない約8トン。おかげで舗装道路をある程度の速さで走ってもアスファルトを痛めることもない。そして軽量化により、こうして宇宙にまで運ぶことが可能となった。

 ISSに物資を届けるのは宇宙ステーション補給機と呼ばれる無人宇宙船だ。日本の場合「こうのとり」の愛称で呼ばれていたそれが有名だろう。こうのとりは、2009年から2020年にかけて9回の補給ミッションを成功させている。全長9.8m、最大直径4.4mの最終モデルは、最大6トンもの食料品や水、実験装置などを運んでいた。そして現在日本は、ISSの大型化に合わせてやはり巨大になった後継機を運用している。その名は「タンチョウ」。北海道釧路湿原一帯に飛来する大型の鶴の名を冠するその船は、名前と違い少しずんぐりとした形をしている。そのおかげもあり積載重量はこうのとりのおよそ四倍、20トン以上となっていた。そのおかげで、軽量化したマーク2とその他備品を一気にISSにまで運ぶことが可能だったのである。

 今彼らとマーク2二機が立っているのは、シルバーウィングのドッキングポートに隣接するエアロック付き格納庫「Airlock hangar」だ。円柱の中心に近い微重力エリアである。まぁ微重力と言っても、ほぼ無重力と言っていい程度の重力なのだが。マーク2の両足は、床から生えるように突き出ている固定用ロボットアームにしっかりと掴まれている。三人の方は、マジックテープとマグネット両用のブーツをはいていた。船内用与圧服にセイファーなどのスラスターは付いていない。移動する時には、床や壁に足を着けて歩くか、床を蹴って空中を移動する。一度床を離れると、慣性の法則により減速したり落下することなく行きたい所へ向かっていく。ただし1気圧の大気が存在する場合は、ほんの少しだけ減速はするのだが、まぁ誤差程度のものだ。

 マーク2を見上げたまま、亮平がフッと息を吐いた。

「やっぱり心配だなぁ」

 そんな亮平に久美子が言う。

「まだ言ってるの? それは実証実験してみないと、何とも言えないわよ」

「うん、そうなんだけど」

 今回のマーク2には、少しだがダイナギガ技術が使われている。

 つまり、この機体の動力源は通常のバッテリーだけではないのだ。

 素粒子発振と共鳴による電力、通称ダイナパワーが用いられている。

「日常の運用で、どのくらいの差が出るんだろ」

 以前都営第6ロボット教習所で行なわれた試乗実験で、共鳴率の高い両津良幸の叩き出した数値が三人の脳裏に浮かんでいた。両津に限らず、教習所の生徒たちならこの機体の性能をフルに発揮できるに違いない。だが、そうではない一般人の操縦で、どこまでその機能を引き出せるのか。その結果によっては、マーク1の方がいい機体だと言えるのではないのか?

 亮平の不安はそれだった。

 ちょっと暗い顔になる亮平の肩を、健太がポンと叩く。

「それについては、帰ったら機動隊で検証してくれるはずだろ?」

「そうなんだけど…」

 久美子が亮平から視線をマーク2に移して言った。

「確かにそれが怖いのよね。そこで結果が出なかったら、マーク2に期待して損したってなっちゃうもんなぁ」

 健太も肩をすくめて言う。

「確かに総理の発表以来、新聞やテレビで新型新型って、大騒ぎだもんな」

「まぁ、そんなこと考えてても仕方ないでしょ?」

 久美子が明るく笑った。

「ここでの仕事をしっかり終わらせましょ」

「同感だ」

 健太もそう言うと、亮平から視線をマーク2に向けた。

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