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第285話 船外活動訓練2

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「よし、俺が最初に出る。後から一人ずつついてこい!」

 無線から聞こえる陸奥の声に、久慈の言葉が続く。

「私が最後に出ます。何かあったらしっかりフォローするので、気を楽にして船外へ出ましょう」

 初めてロボットで宇宙に出る場合、失敗の原因の大半は緊張から引き起こされる。まず気楽になることが、事故防止の第一歩と言えよう。

 そんな時、奈々のヘルメット内に無線でひかりの声が届く。

「奈々ちゃん、この服動きやすいね!」

「そうね、船外活動ユニットと比べたら格段に薄い布でできてるわね」

 奈々がそう答えると、ワイプ内のひかりが首をかしげた。

「ユニットバス?」

「ちがうわよ!EMU!船外に出る時に着る宇宙服よ!」

 奈々のツッコミに続き、奈央の声がひかりに届く。

「これは与圧服と言いますわ。服の中を、ロボットのコクピットと同じ1気圧に保つ宇宙服です。冷却したり酸素を供給したりと、生命維持をする必要が無いので薄手の生地でできています」

 宇宙船や宇宙用ロボットに搭乗する際に身につけるのが、船内与圧服だ。何かトラブルが発生して、船内やロボットコクピットの気圧が下がってしまう場合に備えるものである。最近ではスタイリッシュなものも多く、3Dプリンターで作られた軽いヘルメットやタッチスクリーンにも対応したグローブなどが標準装備となっていた。

 奈央の説明が分かっているのかどうか謎だが、ほんのわずか首をかしげるひかり。

「えーとえーと……ロボットさんを動かす仕組みの、」

 そこに奈々のツッコミが素早く飛ぶ。

「それは油圧!奈央が言ってるのは与圧!」

「そこで飛んでみろ!」

「威圧!」

「押せば命の泉湧く〜!」

 ひかりのボケに奈々がくびをひねる。

 すかさず物知り博士の奈央が注釈を入れた。

「それは指圧ですわ。また古いものをご存知で」

「お父さんが考古学者やからな!」

 そんなやりとりに、陸奥の怒鳴り声が割り込んだ。

「おい!漫才やってないで、そろそろ行くぞ!」

 ワイプ内の久慈が肩をすくめている。

「はい!」

「は〜い!」

「了解!」

「たのんます!」

「オッケー!」

「お願いします!」

「よっしゃーっ!」

 生徒たちから様々な返事が返って来た。

 エアロックの窓ごしに、そんな生徒たちのロボットを見ていた南郷が隣の美咲に目を向ける。

「返事、統一した方がええんちゃうかな?」

「そうですね。中に一人ぐらい、まだですって言っても、これじゃあ聞き取れないかもしれませんね」

 美咲が苦笑した。

「何がええかなぁ? ラジャ!とか、GIG!とか? いや、ガレット!とかもええかな」

 そんな南郷に美咲の苦笑が深まる。

「了解!でいいんじゃないですか?」

「まぁ、そうでんな」

 一件落着である。


「ぷっはぁ〜!」

 奈央が与圧服のヘルメットを、美しい髪を大きく振りながら脱いだ。

 なぜか、汗の球がキラキラと舞い踊ったのが見えたような気がする。もちろん、汗などかいていないのだが。それを見ていた愛理が手をパチパチと叩いている。

「宇奈月先輩!戦隊レッドのメットオフみたいでカッコいいですぅ!」

 メットオフとは、特撮ヒーローが変身した後に、首から下をヒーロースーツのままヘルメットだけを脱ぐことを言う。今まさに奈央がやって見せたのがメットオフだ。

 ロボットによる船外活動訓練の初回は、すでに終了していた。

 今生徒たちは自分のロボットから降車し、メットオフ状態で興奮しながら感想を話し合っている。

「まさか、船外にちょっと出ただけで終了とはびっくりだぜベイビー」

「いやいや、最初はこんなもんやで!ISSから離れるなんて怖すぎるやん!」

 肩をすくめる正雄に両津が突っ込んだ。

 奈々も両津に賛成する。

「そうよ、最初なんだから。ひかりなんて、宇宙服の時みたいに、ロボットでくるくる回ってたわよ」

「てへへへ」

 いつものように照れ笑いをしたひかりだったが、脱いだヘルメットを両手でかかかえたまま鼻をくんくんし始めた。

「どうしたの? ひかり」

 奈々の問いに、ひかりが首をかしげる。

「宇宙の匂い?」

「え?」

 それを聞いた奈々、そして生徒たち全員がくんくんと匂いをかぎ始めた。

 くびをかしげたまま、ひかりが奈々に視線を向ける。

「これって、何かのフルーツかな……なんとかベリー、みたいな。ラズベリー?」

「ほんまや、なんか匂うで、マジで」

「ステーキのコゲた匂いじゃない?」

「ラム酒か? いやこりゃウイスキーだぜベイビー」

「なんで未成年のあんたがお酒の匂い嗅ぎ分けられるのよ?!」

 奈々のツッコミに、正雄がニヤリと笑った。

「俺は大人なんだぜベイビー」

「中身は小学生じゃない」

 奈々の言葉を無視して、正雄は笑みを深めた。

「これって、何かの野菜ではないですか? 緑っぽい香りがしますわ」

「ケーキですぅ」

 皆口々に、様々な名前を口にする。

 そして一様に不思議そうに首をかしげた。

 宇宙の匂いって? そんなものあるのだろうか?

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