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第281話 閑話・職員室6

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「お茶でもいれましょうか?」

 職員室に、いやホテルスターリングの一室に久慈の声が優しく響いた。

「あ、久慈さん、すんまへん」

 修学旅行中の教官たちは、打ち合わせのため陸奥の部屋に集まっているのだ。

「あ、また久慈さんが……私、お手伝いしないと」

 そう言って立ち上がろうとする美咲を、陸奥が右手を挙げて制した。

「いえ。山下先生には、少しお話したいことがありまして」

「お話?」

 美咲は、浮かしかけていた腰を椅子に降ろす。

 その時、久慈が三人のもとに戻ってきた。

「はい、紅茶です。いいホテルにはいい茶葉が用意されているんですね」

 お盆からソーサーに乗ったティーカップを各人の前に置いていく。

「ありがとう」

「ありがとさん!」

「すいません」

 三人は久慈に礼を言ってカップに手を伸ばした。

 柑橘系の爽やかな香りが、三人の鼻孔をくすぐる。ベルガモットだ。

「最近、俺もアールグレイのファンになって来ましたわ」

 南郷がカップを持ち上げてくんくんしている。

 ティーカップ&ソーサーは、小会議室にあったウエッジウッドのフロレンティーンターコイズだ。白地に鮮やかなブルーの帯。ギリシャ神話のグリフィンをモチーフにした、少しグロテスクな模様は16世紀からの伝統的絵柄である。一脚二万円を超える高級品だ。どうやらこのホテルの食器は、ウエッジウッドで統一されているようだ。

「それと」

 そう言うと久慈が、お盆をもうひとつテーブルに置いた。

「いつもと違って、ここには高級なクッキーもありますよ」

 手焼きにも見えるそれは、しっかりと個包装されている。

「ここのキッチンで焼いてるらしいです」

「やっぱり一流のホテルは違いまんなぁ」

 南郷がクッキーをひとつ手に取ると、サッと個包装から取り出し、パッと口に入れた。ポリポリといい音がする。

「それで、お話とは?」

 美咲が真剣な目を陸奥に向けた。

 陸奥はゆっくりと紅茶をひと口飲むと、美咲に視線を向ける。

「実は今朝、袴田教授から連絡がありまして」

 何か進展があったのかと、一同が身を乗り出す。

「例の素粒子なんですが、XとY型があると判明しましたよね? その特性が結構違うらしくて、今分かっていることが正しいのかどうか、アイさんに聞いてもらえないかと」

 南郷と久慈が目を丸くする。

「アイくんに聞きたいほどのことが、何か分かったちゅーことでっか?」

「そうですね。国連宇宙軍総合病院の牧村先生も、美咲さんを通じてアイさんに聞いた方がいいとおっしゃっているようです。山下先生、お願いできますか?」

 陸奥の言葉に、美咲がニッコリと微笑んだ。

「もちろんです」

 そう言うと美咲は、ゆっくりと両目を閉じた。

 数秒の時が流れ、彼女はゆっくりと目を開く。

 目つきが変わっている。

 もう美咲ではないのだろう。

「お久しぶりです」

 彼女は少し微笑むと、一同を見渡した。

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