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第273話 琵琶湖の大爆発

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「俺の父と母は、元々は京都涵養かんよう大学の教授だった」

 陸奥は静かに、そして淡々と語り始めた。


 俺の両親は工学部で、ロボットの研究をしていた。まだ幼かった俺にはその仕事内容が理解できるはずもなく、ただ大学で仕事をしているとだけ理解していた。だが、扱っているのがロボットとなると、楽しくない男の子はいないだろう。なので俺は両親がとても自慢だった。

「うちのお父さんとお母さんは、正義のロボットを作ってるんだよ!」

 小学校の同級生たちにも、よくそんなことを言っていたのを覚えている。

「すごいね!でも、正義のロホットって、どんなの?」

 そんな友人の問いに、俺はただ首をかしげるだけだった。

「とっても難しい研究みたいで、ボクにはサッパリ分からないや」

 そう言って、そりゃそーだ!と、友人たちみんなで笑い合ったものだ。

 だがある時、ひょんなことから両親がすでに涵養大学の仕事をしていないことを知る。二人の大学の同僚が我が家を訪ねてきた時に言ったのだ。

「君たちとなかなか会えなくなるのはつらいなぁ。琵琶湖へ行くんだろ?」

 琵琶湖? それって日本で一番でっかい湖だっけ? 確か……学校で習った?

 俺の知識の琵琶湖は、たったそれだけ。

 どうして両親がそんな所へ行くのか、全く想像できなかった。

 それがハッキリしたのは、俺達が住んでいた京都の家を、二人がしばらく留守にすると聞いた時だ。

「お父さんとお母さんはね、国からお仕事を頼まれて、しばらくの間琵琶湖の研究室で働くことになったんだ。俊博は、おばぁちゃんと一緒にこの家を守って、しっかり留守番するんだよ」

 ニッコリと微笑んだ二人の笑顔を、俺は今でも忘れない。

 祖母の家は、京都で代々続く名のある和菓子屋の老舗だ。おかげで京都でもかなり大きめの一戸建てに住んでいた。ただし広いと言うだけで、大正の頃に建てられたというその家は、俺にとってはただの古臭い日本家屋にすぎなかった。

 それから数年のことだ。

 例の大爆発が起こったのは。

 そして両親は二度と帰って来なかった。

 当時、この爆発についての原因究明を求める声が日本中から上がった。だが、どの研究所や調査機関、政府でさえ「原因は不明」との発表しかできなかった。そして時と共に、いつしかその爆発は世間から忘れ去られて行った。なぜなら、想像を絶する爆発であったにもかかわらず、その被害はそこまでの大きさではなかったからだ。爆発は琵琶湖の湖底のもっと下、地下で起こり、観光船や湖岸のいくつかの施設に被害が出た。死傷者の数も多かったわけではない。だが俺の両親は「被害が出たいくつかの施設」にいたと言う。

 後で分かったことだが、彼らは理研からの依頼で琵琶湖へと向かった。

 理研とは理化学研究所の略称で、物理学、工学、化学、生物学、医科学など、自然科学の広い分野で先導的な研究を進める日本唯一の総合研究所だ。皇室からの御下賜金や政府からの補助金、民間からの寄付金を基に、日本の産業の発展に資することを目的として1917年から活動を続けている。しかも理研から来たのは、日本政府直々のプロジェクトへの参加依頼だったようだ。

 新聞やテレビの報道ではただ「理研のロボット研究所に被害」と出ただけだった。

 まだ子供だった俺は、ただそれを信じる以外になかった。

 だが、それからの俺がロボット関連の仕事を目指したのは、やはり両親の影響なんだろう。今、教習所の教官をやっているのも、そういうことだ。


「まず、ここまでは分かってくれたか?」

 陸奥はひと息ついて、生徒たちの顔を見渡した。

 皆、神妙な顔でうなづいている。

 だが、陸奥にはまだ隠していることがあった。しかも、その内容こそが真実を知る鍵とも言えるのだが、生徒たちに話すのはまだ早いと、陸奥は考えていた。

 彼の両親が働いていた場所、報道では「湖岸のいくつかの施設」とされた研究所は湖岸にあったわけではない。現在でも極秘事項とされているが、本当は琵琶湖の湖底、最深部104メートルのはるか下の地下にあった。

 琵琶湖の面積は約670平方km、琵琶湖岸の延長は約235km。誰もが知る日本最大の湖だ。だが、世間にあまり知られていないことが多いのも琵琶湖なのだ。

 琵琶湖は世界でも有数の古い歴史をもつ湖だ。約400万年前に、現在の三重県に浅く狭い湖として誕生する。その後、断層運動によって地盤が陥没し、土砂が窪地を埋める影響などを受けながら形を変えて移動、現在に至った。その後琵琶湖は、少なくとも約40万年間、今現在の場所にある。一般的な湖は土砂の堆積の影響を受けて約1万年で消失することが多い。琵琶湖のように40万年もの歴史をもつ湖は滅多にない。世界でも10万年以上の歴史を持つ湖は20程度しか存在しないと言われている。もちろん琵琶湖は、日本最古の湖とも言える。

 そんな琵琶湖の湖底の地下に、古代遺跡が発見された。

 最初に発見されたのは、湖岸に流れ着いた不思議な物体・オーパーツだった。そしてそれは、湖底から出土していることが判明、地下の調査が行なわれる。発見されたのは、琵琶湖の地下に広がる巨大な空洞と古代遺跡だった。

 オーパーツとは、その時代の文明にそぐわない古代の出土品のことで、当時の技術では製作が不可能と考えられる加工品などを言う。

 発見された遺跡はその地層の調査から、琵琶湖が生成されたのと同じ40万年以上昔のものだと推定された。現生人類であるホモ・サピエンスが現れたのが、ほぼ同じ40万年前である。その頃に、高度な合金とその加工技術があったとは思えない。漂着物は、まさにオーパーツだったのだ。

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