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第272話 教官たちの謎

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「ここの先生方の経歴には、謎が多すぎるのです」

 奈央の視線は厳しかった。

「教官の皆さんは、わたくしたち生徒のことをしっかりと把握されています。生まれてからこれまでどんな風に育ってきたのか、学校の環境はどうだったのか、友人関係は良好なのかなど諸々です。毎月の健康診断で、カラダの隅々まで全てお分かりなのだと思います」

「エロいことも?」

 パシッ!

 奈々が両津の頭を平手ではたいた。

 頭をかかえる両津。

「不思議なのは教習所の入学案内に、所長さん以外の教官の皆さんの経歴が全く書かれていなかったということです」

「そうだっけ?」

 ひかりが首をかしげた。

「ひかり、ちゃんと読んだの?」

「うん。難しい漢字は飛ばしたけど」

 奈々の問いに、自信たっぷりに答えるひかり。

「じゃあ、所長さんの名前は?」

「えーとえーと……おぶつせん!」

「トイレ行かないのかよ!」

 両津がニヤニヤと笑いながら突っ込んだ。

雄物川おものがわさんよ!」

「ありゃりゃ」

「今度漢字読み飛ばす時は、ちゃんと私に言ってよね!読んであげるから」

「奈々ちゃん、ありがと!」

 ひかりと奈々の会話がひと通り終わったと感じた愛理が、そっと小さく手を挙げる。

「私、所長さんのことならちょっとだけ知ってますぅ。教習所へ来る前に、お父さんから聞いたのは確か……考古学とか、地球物理学とか、ロボット工学なんかでとっても有名な人だって。だからこの教習所も、きっとすごい所だから安心できると思う、そう言ってたですぅ」

「私もそう聞いてるわ。奈央、所長さんのどこが謎なの?」

 奈々が不思議そうに奈央を見た。

「各分野でそこまで優秀で、すでに多くの功績を上げている方が、どうして教習所の所長をされているのでしょう?」

 会議室に沈黙が広がった。

 これまで何の疑問も持っていなかった生徒たちも、そう指摘されると不思議に感じてしまう。奈央の言う通り、これは謎なのかもしれない。

「まぁ、あれだ」

 先程まで椅子にへたり込んでいた南郷が口を広いた。

「若い頃から頑張って来られたんや、そろそろ隠居して、のんびり過ごしたいと思われたんちゃうか?」

 隠居ねぇ……。

 南郷の言葉に、ますますうさん臭さが増してしまう。

「まぁまぁ、ご本人がいない所で色々言ってても仕方がない。帰ったら、雄物川さんに直接聞くといい」

 陸奥の言葉に、確かに、という空気が広がっていく。

「なら、陸奥教官のこと、聞かせてもらえませんか?」

 奈央がスッと視線を陸奥に向けた。

 フッとひとつ息をつき、陸奥がうなづく。

「何が聞きたい?」

「生まれた時の体重は?」

「そこからかよっ?!」

 ひかりの質問に、両津が立ち上がって突っ込んだ。

「時間かかりすぎて日が暮れてまうで!」

「宇宙だから日は暮れないよ?」

 ひかりが不思議そうに両津を見つめる。

「私、最初教官の名前見た時、みちのくって読むと思ったのよ」

 心音が首をかしげながらそう言った。

「ボクも!ムツって読むって聞いて、なんでだろ?って」

 大和が賛同する。

「いや、それを俺に聞かれてもだなぁ、俺は生まれた時からムツだったから」

 陸奥は困惑顔だ。

「お教えしましょうか?」

 奈央の目がキラリと光る。

 ロボット部物知り博士の登場である。

「『みちのく』は元々『道の奥』のことでした。そして道の奥と言うことは陸なので、陸の奥『陸奥』と書くようになったのです」

 ふむふむと全員がうなづく。陸奥も一緒である。

「そして、ポイントはここからです!日本では古来より数字の六を『陸』と書きました。六と言えば? ……むっつ!と言うわけで、ムツと言う読み方が生まれたのですわ!」

 すごい!

 会議室が拍手に包まれる。

「俺も初耳だよ。自分の名字の読み方なんて、気にしたこともなかったからな」

 陸奥も拍手をしている。

「教官!お父さんとお母さんにも教えてあげよう!」

 ひかりのその声に、教官たちの拍手が止まる。

 不思議な雰囲気に、生徒たちも様子をうかがうように拍手をやめた。

「遠野……俺には、両親はいないんだ。みんなも知っている例の琵琶湖での大爆発で、二人共亡くしている」

 陸奥が悲しげな笑みをこぼす。

 この会議室には陸奥同様に、父もしくは母、あるいは両親を亡くしている生徒が数人いる。彼らも、陸奥と同様の悲しみが表情に浮かんでいた。

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