第271話 平気
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「君ら、なんでそんなに平気なんや?」
南郷がその疑問を、思わず口にしてしまった。
表面上からは分からない心の問題であり、とてもデリケートなことだと判断した他の教官たちは、あえて触れないようにしていたというのに。
「ドキューン! ドッカーン!」
「ひかり、その兵器とは違うわよ」
「よっ!若旦那!」
「小粋!」
「うっふ〜ん♡」
「吐息!」
「両津くん」
「廃棄!」
「捨てないで〜!」
一連の会話は、両津の悲鳴でオチがついた。
「想像とはちょっと違っていましたけど、なんとなく予想していたから、ということでしょうか」
奈央が生徒たちを見渡す。
うんうんとうなづいている者、首をかしげている者、クッキーを頬張ろうと口を開けているひかり。反応は様々だ。
「まぁ何にしろ、みんな似たようなことを想像していたんだぜベイビー」
正雄の言葉に、あなたはどう思っていた? と言う会話でもちきりになる。
「両津、ロボット部ではどう考えとったんや?」
「えーと、どっから説明したらええんやろ?」
「教習所の七不思議!」
ひかりがボリボリと高級クッキーを頬張りながら、視線だけを両津に向けた。
「あ、そうそう!教習所について色々とおかしな点があるって、学食でみんなで話したんですわ……何があったっけ?」
ズッコケル一同。
首をひねっている両津の後を、奈央が引き継いだ。
「まず話に出たのは、わたくしたちの待遇があまりにも良すぎる、という点です。学費の全額免除は最初からうたわれていたことなのでいいとしても、生徒たち全員の衣食住全てが無料、または支給ではないですか? 寮の家賃も、学食での食費も無料ですし、制服はもちろん、下着にいたるまで支給されていますわ」
「ええっ?!下着まで?!」
両津が、ほとんど盛り上がりを見せていない奈々の胸あたりを見つめた。
「あんたのパンツもでしょーが!」
「俺のパンツは、投げると戻ってくるんだぜベイビー」
正雄のひと言に、ほえ? と口を開けているひかり。
「いいからほっときなさい」
奈々の冷たい視線に、正雄はマイトガイスマイルだ。
「続けてもよろしいでしょうか?」
奈央の問いに、全員がうなづく。
「次にみんなに疑問が浮かんだのは、健康診断の時です。生徒数は当時は50人ほど。所員の方全員を含めても100人ほどしかいない埋立地に、あそこまで巨大で最先端の医療設備があるのはおかしいのでは? となりました」
ひかりも思い出していた。ロボットで暴走した後、必ず受けさせられた健康診断。
大学病院みたい。
確かにひかりは、いつもそんな感想を持っていた。
「教習についても、多くの謎がありましたわ。ロボットの運転に、特に必要だとは思えない教習もいくつか見られました。まるで軍事訓練のような」
奈々が大きくうなづいている。
奈々が姉の訓練で見たものと、ほぼ同じ教習があったのだ。奈々の姉・夕梨花は機動隊のロボット部隊の所属だ。彼女が見たのは、対テロ組織用として行なわれていた訓練だった。
「そして、決定的になったのは……」
一同が息を呑む。
ひかりがお茶を飲む。
「センドラルが落下した時に、地下に避難しましたよね? あの時に、地下で見た謎の施設です。棚倉さん、あなたその時に推理してくれましたわよね?」
「ああ。ありゃあ地下の秘密基地だぜベイビー!」
Vサインだ。誰に向けているのかは謎だが。
「それで、私達が出した結論は……」
「はいはい!それはボクに言わせて!」
両津が両腕を挙げてぶんぶんと振っている。
「どうぞ」
「ボクらは、暴走ロボットやテロリストのロボット兵器に対する、特務部隊の訓練を受けてるんや!地下にあるのは、ヤツらに対抗する新型ロボットに違いない!ほんまでっか?そーでっか?」
「ほんまです」
ひかりが合いの手を入れた。
「ですので、相手がテロリストから侵略者になっても、大して変わらないなぁと、みんなそう思ったのですわ」
バレとったんか?!
南郷は心の中で驚愕していた。
「まぁ、そうだろうな」
陸奥がフフッと小さく笑う。
「そうですね」
久慈も、少し笑顔になった。
「いきなり回避訓練なんてやらされたら、怪しんでもおかしくないよなぁ」
「確かに」
美咲もうなづく。
「陸奥さんと久慈さんは、こいつらにバレてるかもって、気付いとったの?」
「うすうす、ですけどね」
陸奥の言葉に、全くバレていないと思いこんでいた南郷が、へなりと椅子に腰を落とした。
「あともうひとつ、怪しいことがあるのですわ」
奈央は教官たちの顔を見渡した。
「ここの先生方の経歴には、謎が多すぎるのです」
「教習所の七不思議! あ、四人だから四不思議だ!」
ひかりの明るい声が、豪華な会議室に響き渡った。




