第259話 ドッキング
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「こちらパンナムスターリング、まもなくドッキング体制に移行します」
操縦室のコマンダーの声と同時に、ホシムクドリの名を持つ宇宙船は、その回転をISSの着艦棟と同期し始めた。
国際宇宙ステーションは、サッカー場約四面分もの面積を誇るソーラーパネルを備えた巨大な建造物だ。その下部には巨大な筒状の建物が三本あり、セントリフュージ技術によって人口重力を発生させている。セントリフュージとは、建造物自体を回転させ、遠心力を発生させることによって疑似重力を生み出すものであり、そのおかげでISSでは地球上と変わらない環境での生活が可能となっていた。
「ドッキングシステム、稼働します」
この船には、国際的係留およびドッキング機構・IBDMと呼ばれる最新鋭のドッキングシステムが搭載されている。これまでのシステム、ISS側のアームが宇宙船をつかまえて引き寄せる方式と比べると、ドッキング時のショックが遥かに小さい。振動による何らかのトラブルが引き起こされる可能性を、極限まで抑えたと言えるのがIBDMだ。将来的にはこれが世界標準となり、すべての国の宇宙船がドッキング可能になると言われている。
「ソフトキャプチャシステム、ドッキングショックの吸収に成功。ハードキャプチャシステムの接続へ移行します」
MSの声が、操縦室に響く。
ズン……と、ほんのわずかな振動が伝わり、スターリング号は停止した。その先端部が、ISSのドッキングポートに接続されたのだ。
「エアロックの気圧制御クリア。気密テストOK」
コンソールに緑の光が点灯する。
「ドッキング完了です」
「ん? 今ちょっと揺れへんかったか? ズンて」
両津が不安そうな声を上げる。
「ズンドコ!」
ひかりが奇妙な声を発した。
「いや、ドンて感じに振動せぇへんかったか?」
「ドンドコ!」
その時、ひかりたちの頭上から機内アナウンスが降ってきた。
「当機、パンナム256便スターリングは、国際宇宙ステーションにドッキングいたしました。シートベルトの表示が消えるまで、そのままお席でお待ち下さい」
ついに目的地のISSに到着したのである。皆の目がキラキラと輝いた。
「大宇宙の荒野にたどり着いたぜ、さぁ俺たちの冒険が始まるぜベイビー!」
「大宇宙って荒野なんですかぁ?」
「荒野を荒れた野原と定義した場合、宇宙は荒野ではありませんわ」
「ひかり、私たちにとって初めての宇宙よ。ワクワクするわね」
「ワクワク!」
「私もワクワク」
ひかりとマリエが、両手をニギニギしてそう言った。
「大和、まずは名物の宇宙焼きを食べるわよ!」
「大丈夫、店の場所はリサーチ済みだよ」
心音と大和も興奮を抑えられないのか、すこし頬が赤くなっている。
「そうですわ、愛理ちゃん」
奈央が愛理に真剣なまなざしを向ける。
「何ですかぁ?」
「こんな時のひと言、言っておかないといけませんわ」
ハッと、何かに気付いたように愛理が笑顔になる。
「では、二人一緒にいきますわよ。せーの!」
「宇宙、来た〜!」
両手をバンザイのように挙げ、奈央と愛理はそう叫んでいた。




