表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

253/508

第253話 トランスワープ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 ISSのブリーフィングルームに、困惑の空気が広がっていた。

 守の話は一見、あり得ないことのように思える。だが、彼が示したデータ類は、それが真実であることを表わしていた。

「それで、あなたはこれを、いったい何だと思っているの?」

 ロシアのイネッサ・コンダコワ博士が守に厳しい視線を向けた。

 もちろん、彼を攻めているわけではない。彼女にとっての困惑の表情が、ちょっとキツめに見えるのだろう。守はそう思い直し、博士に向き直る。

「ハッキリ言って、全く分かりません」

 守はそう言って、肩をすくめた。

「でも、とにかく、おかしなことばかり起こるんです」

「おかしなこと?」

 イネッサの視線が、より厳しくなる。

「あの影の総数はまだ分かっていないのですが、その中のいくつかに絞って、観察を続けていたんです」

 守は一瞬、その次の言葉を飲み込んだ。

「どうした? 言ってみたまえ」

 ルドルフ船長が守をうながす。

 守の目が、自信なさげに愛菜に向けられた。

 小さくうなづく愛菜。

 よしと、決心したような表情を見せ、守は話し始めた。

「私はずっと、それらを小惑星だと考えていました。ですが……その中の数個が突然消えたんです」

「消えた? 他の小惑星と衝突でもしたのかね?」

 ブリーフィングルームに。いぶかしげな声が上がる。

「いえ、何の前触れもなく、突然消えたんです。そして、それから数分後に……数万光年、こちらに近づいた地点に現われました」

 守が言っていることの意味を理解し始めたのか、この部屋にいる全員の顔が青ざめる。

「その後、次々と小惑星が消え始めて、同じように数分で数万光年を移動したんです」

「まさか、トランスワープしたとでも言うのか?」

「スリップストリームか?」

「それは分かりません。私は、観測したままをお話しています」

 スリップストリームとは、自転車競技や自動車レースで用いられる技術で、前方の車が空気を押しのけることにより、すぐ後方の車の空気圧が低下する現象のことを言う。これにより後方の車の速度は飛躍的に上昇する。宇宙では、亜空間の流れである量子スリップストリームを、ディフレクターを使って艦の前方に流すことでこの現象を起こし、亜光速での飛行を可能とする。守の観測によるとそれは、トランスワープ・チューブ等の亜空間トンネルを作り、その起点から終点へチューブ内をスリップストリーム航法で飛んでいるように思われた。なぜならその方法だと、観測者にとってまるで空間転移のように見えるからだ。

「ですので」

 守はフッと息をつくと、顔を上げた。

「この集団は、知的生命体によってコントロールされていると思われます」

 重い沈黙が、ブリーフィングルームにたちこめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ