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第247話 第二秘書

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「わたくし、こういう者です」

 女は、上着の内ポケットから名刺入れを取り出し、その中から一枚を夕梨花に差し出した。

 霧山グループのロゴと、肩書に「第二秘書」とある。名前は小池葵だ。

「第二秘書?」

「はい。霧山宗平の第二秘書です」

 霧山宗平と言えば、数々の優良企業を傘下に持つ巨大企業体・霧山グループのトップだ。夕梨花の記憶が正しければ、この女はマトハルの巫女である。つまり、テロリスト集団黒き殉教者の一員ということになる。

 黒き殉教者と霧山グループがつながっている?

 それとも、夕梨花の記憶違いなのか?

「とりあえず、お座りください」

 葵にうながされ、夕梨花はテーブルをはさんで彼女の正面に座った。

「それで、警察の方が、私にどんな御用なのでしょう?」

 丁寧だが、抜け目のない鋭さをうかがわせる声音だ。歴戦の企業戦士を思わせるその目つきは、まだ20代後半に見える外見とは、少しちぐはぐな印象を放っている。

「花菱の桜庭さんとは、どんなお話を?」

「あら、どうしてそれをご存知なのでしょう?」

 葵は夕梨花に、けげんそうな目を向けた。

「それは捜査に関わることなので。お話できません」

「なるほど」

 葵がフッとひとつ、息をついた。

「桜庭さんの会社・花菱工業は、私どもの霧山グループの傘下なのです。それで、前々から彼が開発した新技術が素晴らしいと、社内でも評判になっているんです。うちの霧山が、それにとても興味を持っていまして。それで、新宿で打ち合わせだとおっしゃるので、ちょっとお時間をいただいた、と言うわけです」

 夕梨花が首をかしげる。

「わざわざこんな所で? 社内で良かったのでは?」

「ちょうど私も、新宿で別の打ち合わせがありましたから。偶然なんですけどね」

 葵がクスッと笑う。

 その口元に、夕梨花はやはり見覚えがあった。

「私、前にどこかでお会いしたこと、無いですかね?」

「無いと思いますけど」

「奥多摩とかで」

 二人の間を、沈黙の風が流れていく。

 それを破ったのは葵だった。

「では人違いです。私、奥多摩には行ったことないですから」

 夕梨花にはこの女に見覚えがある。

 だがそれは証拠にはなり得ない。なぜなら、奥多摩での死闘はあまりに激しく、細かい容姿をはっきりと認識する余裕は無かったからだ。と言うより、アヴァターラと名乗った男の印象が強すぎて、夕梨花の記憶には彼の姿だけがクッキリとした形で残っている。

「ここでは詳しいお話ができないので、同行してもらえますか?」

 夕梨花が店内に目をやり、できるだけ丁寧になるよう気をつけながらそう言った。

 もしも彼女の記憶違いだった場合、霧山グループに喧嘩を売ることになる。そうなれば白谷部長に大目玉をくらうだろう。それだけは避けたい夕梨花である。

「それって、任意ですよね?」

「もちろんです」

 少し逡巡する葵だったが、スッと夕梨花に顔を向けた。

「いいでしょう。ご一緒します」

 二人がルノワールを出た時、見上げる空はすでに夜の暗さに包まれていた。だがさすが新宿である。表通りでは無いというのに、数多くの飲食店の看板やネオンで、まるで真昼のような明るさだ。

「こちらへ」

 そう言うと夕梨花は、葵に気づかれないよう沢村に目配せをすると歩き出した。

「泉崎チーフ、女と一緒にルノアールを出ました。尾行します」

 沢村から指揮車へ連絡が入電する。

「泉崎さん、こちら田中。新宿三丁目方面へ出てください。通りを出たところに、所轄の覆面を待機させています。それで新宿署へ向かってください。取調室も用意してもらっています」

 夕梨花は声を出さず、心のなかで了解とつぶやいた。

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