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第246話 ゾリグ部隊

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「警視庁の……後藤さん、でしたっけ?」

 新宿通りの、ちょうど紀伊國屋書店の前あたりの路上で、後藤とドルジは睨み合っていた。平日でも人通りの多いこの歩道では、この二人のように立ち話をしていても目立つことはない。それ以前に、待ち合わせの名所でもあるこの場所には、多くの人がたたずんでいる。

「そうだ。さっき手帳を見せたじゃねぇかよぉ」

「警察官のあなたが、ダスク人の私をシャンバラだと言う。さすがに失礼すぎませんか?」

 ドルジの目が鋭くなる。

「図星だろぉ?」

 だが後藤は、全くひるむことなくひょうひょうとそう言った。

「証拠は?」

「そんなものはねぇよ。俺のカンだ」

 後藤がニヤリと笑う。

「あてにもならないあなたのカンだけで、一般市民をテロリスト呼ばわりするのですか?」

 ドルジもニヤリと口角を上げた。

「じゃあよぉ、あんたいったい何者だぁ?」

 その言葉を聞くとドルジは、斜めがけしているショルダーバッグから何かを取り出した。名刺である。

「私はこういう者です」

 名刺には日本語で、ダスク共和国・国軍資材調達課・課長、という肩書が書かれている。

「ほう、国軍の課長さんだって?」

「そうです」

 後藤がいぶかしげな顔をドルジに向ける。

「あんたさっき、名刺は無いとか言ってなかったかぁ?」

「まぁ、桜庭さんとは今日初めてお会いしたので、いきなり国軍の名刺を出すと警戒されてしまいますからね。次にお会いした時には、正式にご挨拶することになるでしょう」

「そんなもんかねぇ」

 後藤が首をかしげる。

「しかし私のことを、いったいいつから見ていたのですか?」

 ドルジが苦笑した。

「椿屋なんちゃらとか言う喫茶店からだけどよぉ」

「もしかして、私を付けていたと?」

「うんにゃ、俺が付けてたのはあんたが会った男の方さ」

「桜庭さんを? 余計にわけが分かりませんね。彼はただの会社員じゃないですか」

「ただの、かどうかはまだ分からねぇぜぇ?」

「何かあるのですか?」

「それを調べるのは、俺の仕事じゃねぇんだわ」

 その時、ドルジのスマートホンからメールの着信音が響いた。

「失礼」

 そう言うとドルジは、スマホの画面を何度かタップする。

 そして、何かに納得したのか、ふむとひとつうなづいた。

「あなた、ゾリグ部隊の後藤茂文さんですね」

「ありゃりゃ、もうバレちまったのかぁ」

 後藤は鼻の横をポリポリとかく。

 もちろん後藤は気付いていた。彼がゴッドの名を出した時、ドルジはスマホで後藤の写真を隠し撮りしていた。恐らく、自らが所属する組織に、後藤の写真から身元の確認を依頼したのだろう。その答えが「ゾリグ部隊の後藤茂文」だ。それこそ、後藤がシャンバラと行動を共にしていた時代の肩書きだった。

「で、ゾリグの野郎は元気でやってるのかぁ?」

 その問いかけに、ドルジが苦笑する。

「それに答えたら、私はシャンバラの者だと言うことを証明してしまうじゃないですか?」

「ちがいねぇ」

 後藤は少し楽しそうに笑った。

「まぁいいでしょう。将軍はすこぶるお元気です」

「将軍かぁ、出世したもんだなぁ」

 そう言うと後藤は、それまでとは別人のようにキリッと厳しい目を見せた。

「それで、シャンバラのあんたが、どうして国軍の課長になりすましてるんだぁ?」

「なりすましてなんかいませんよ」

「と言うと?」

 ドルジも真顔になる。

「私は本当に、国軍資材調達課の課長なんです」

 ややこしくなってきた。

 シャンバラのスパイが、日本でダスク共和国国軍の課長になりすましている、と言うならまだ分かりやすい。本物の国軍の軍人が、実はシャンバラのメンバーだと言うのか?

「我が国の国内も、すでに一枚岩ではないのです」

 ドルジが肩をすくめた。

「なんだかきな臭い話じゃねぇかよぉ」

 後藤の目が、増々鋭さを増す。

「ここから先の話は、さすがにこの場所ではまずいでしょう。どこか、場所を変えませんか?」

「そうだな。じゃあタクシーで移動するかぁ」

「もちろん、東口のタクシー乗り場ですね?」

 ドルジが後藤に、皮肉な笑みを向けた。


 一方その頃、夕梨花が張り込んでいるルノワールでは、桜庭が相手の女性との話を終え、店を出る所だった。

「マルタイ、ルノワールを出ます」

 夕梨花の連絡が、無線でトクボ部一同に伝わる。

「任同かけますか?」

 無線の声は、夕梨花と同じキドロパイロットの沢村だ。彼は、夕梨花たちの支援のため、店の外から様子をうかがっている。任同とは任意同行の略語だ。警察などの捜査機関が、事件関係者に協力を求めて任意で事情を聴くことを言う。逮捕状が出る前の操作手法のひとつである。

「部長、どうします?」

 指揮車での美紀の問いに、白谷トクボ部部長は一瞬考えてから答えを出した。

「いや、彼はまだ泳がしておこう。どこかへ逃げる可能性は低いからな」

 今の段階で怪しいのは後藤が付けている商談相手と、まだルノワール店内にいる女だ。桜庭については、花菱工業への問い合わせを含め、まだまだ調べることが残っている。

「すいません、ちょっとお話をうかがってもいいですか?」

 夕梨花の言葉に、その女の表情が険しくなる。

「あなたは?」

「警視庁の泉崎と言います」

 夕梨花が警察手帳を提示する。

「お久しぶりですね」

 夕梨花の言葉に、女の顔がニヤリと歪んだ。

「あら、どこかでお会いしたこと、ありましたかしら?」

 丁寧な返答だが、その声には地の底から響くような凄みがあった。

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