第239話 両津くん
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
『おにいちゃん、ひかりです。
おにいちゃんは元気でやっていますか? 私はあられもなく元気です』
ひかりは今日も学食で、兄への手紙を書き始めた。
全てが声に出ていることについて、すでにロボット部の誰もが気にしていない。
「ひかり、あられもなく元気はおかしいわよ」
奈々の突っ込みが決まる。
「あられもないって、なんやエロい響きやな」
両津が女子勢に聞こえないように小声でつぶやいた。
「あられもないって何ですかぁ?」
これやこれや!
わざとやらなくても、こうやって始まるんや!
両津は急いで、スマホのレコーダーアプリをオンにした。
これを録音しておけば、きっと山下先生が喜んでくれるに違いない!
彼のスケベ心がフル回転である。
「それはね愛理ちゃん、両津くんがとっても面白いことを言うことだよ」
「それは、がらにもない!愛理ちゃんが聞いてるのは、あられもない!」
「両津くんがとってもいいことをすること」
「根も葉もない!」
「両津くんの見た目!」
「みっともない!」
「両津くんの性格!」
「ろくでもない!」
両津は大きなため息をつくと、レコーダーアプリをオフにした。
「なあ、それわざとやっとるやろ?」
両津の声は、半分あきらめたような色を帯びている。
「へ? なんのこと?」
ひかりが素直な目を両津に向ける。
一方、奈々が両津を見る目つきは?
「泉崎さんはわざとやろ!」
奈々がフフッと笑った。
「もちろんよ。楽しいでしょ?」
まぁ、ネタにもされないよりは楽しいのかもしれない。
両津はそんなことを思ってしまった。
「そうだぜ、俺のことなんて、誰も触れてくれないからな、ベイビー」
ニヤリとした正雄に、両津が突っ込みを入れる。
「それは棚倉くんに突っ込んでも、のれんに腕押しやからや!」
「腕押しにのれん」
と、ひかりがつぶやく。
「あのぉ、うでおしって何ですかぁ?」
愛理から連続質問が飛んだ。
「じゃあ、両津くんの評価を変えよう!」
「見直し!」
「私がいいウワサ流してあげる!」
「後押し!」
「だって、両津くんが一番だから!」
「イチオシ!」
「もう一回言うよ、両津くんが一番!」
「念押し!」
「これだけ言えば、両津くんのイメージ上がるでしょ?」
「ゴリ押し!」
「ゴリ押しって、ホンマはそう思てへんてことやんけー!」
ちょっと気分が良くなっていた両津が叫ぶように突っ込んだ。
「まぁ、夜通し両津くんのことを語っても、そんな見通しです」
「お後がよろしいようで」
「ポン!」
奈々が落語家のようにシメると、マリエが口鼓をひとつ鳴らした。
「なんじゃこりゃーっ!」
この面々は、何にも変わらないようである。




