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第238話 閑話・職員室5

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「お茶でもいれましょうか?」

 職員室に、久慈の声が優しく響いた。

「あ、久慈さん、すんまへん」

 今日の南郷は意外にも素直である。

 ひかりたちが出て行った職員室には、緊張感のほぐれた、少しゆったりとした空気が流れていた。衝撃の事実がいくつも発覚したと言うのに、美咲の落ち着いた雰囲気に、教官ズの3人もつられてなぜかホッとしていたのだ。

「で、山下センセ、さっきの話やけど、遠野が音に敏感なのは素粒子に関係があると?」

「アイくんに聞いてみないと詳しいことは分かりませんけど、私はその可能性が高いと考えています」

 南郷の問いに答えながら、美咲はお茶の準備をしている久慈に目をやった。

「あの、ここじゃ私が一番後輩ですし、お手伝いしないと」

 そう言って立ち上がろうとする美咲を、陸奥が右手を挙げて制した。

「いえ。山下先生には、少しでも早くこの問題について考えてもらいたいので」

「すいません」

 美咲はそう言うと、浮かしかけていた腰を椅子に降ろす。

 その時、久慈が三人のもとに戻ってきた。

「はい、紅茶です」

 お盆からソーサーに乗ったティーカップを各人の机に置いていく。

「ありがとう」

「ありがとさん!」

「すいません」

 三人は久慈に礼を言ってカップに手を伸ばした。

 柑橘系の爽やかな香りが、三人の鼻孔をくすぐる。ベルガモットだ。

「お!またまたアールグレイですな!」

「そうなんです。山下先生も、お好きだと聞いたので」

 久慈が優しい視線を美咲に向ける。

「も、と言うことは、他にもお好きな方が?」

 なぜかバツが悪そうに、陸奥がそっと手を小さく挙げた。

「なんで久慈さんが、陸奥さんの好みに詳しいんかは知りまへんけど、ここでは陸奥さんのアールグレイ好きは有名ですねん」

 南郷がニヤニヤと薄笑いを浮かべてそう言った。

「しかも、アイスじゃなくてホットを?」

 アールグレイは、アイスティーによく使われる紅茶だ。ベルガモットの香りのフレーバーティーで、爽快な香りとすっきりした味わいが特徴である。カフェや喫茶店でもアイスティーを注文すると、何も言わなくてもアールグレイであることが多い。

「山下先生も?」

「はい。大好きなドラマの主人公が、いつもアールグレイのホットを飲んでいたので」

「アールグレイをホットで」

 陸奥はそう言うと、右手の人差し指をピンと立てた。

「あ、そのセリフ」

 美咲が嬉しそうに笑う。

「陸奥さん、それなんや? 二人だけで楽しまんで教えてくれまへんか?」

 南郷の抗議に、陸奥はニコッと笑う。

「あるSFドラマに出てくる、宇宙船の艦長のセリフですよ」

「こんな所で同好の士と出会うなんて」

 美咲の笑顔が深まっていく。

「私、宇宙船のクルーを目指したの、そのドラマの影響なんです」

「その話、また今度詳しく聞かせてください」

 陸奥も、実に楽しそうな笑顔を美咲に向けていた。


「それで、どんな話があったんだい? ベイビー」

 職員室を後にしたひかりたちは、学食で待っていたロボット部の面々と合流していた。ひかりとマリエを見る奈央も心音も、心なし心配顔に見える。

「いや、たいしたことはなかったで。いつものダジャレ合戦やってただけや」

 両津がそう言うと、奈央、心音、大和が首をかしげた。

「いつものダジャレ合戦て何よ?」

 心音が両津に問いかける。

「あれや、遠野さんがダジャレとかボケを言って、泉崎さんが突っ込むやつ」

 奈央、心音、大和が、なるほどと小さくうなづく。

 正雄はいつもと変わらぬ、不敵な笑顔のままである。

「でも、どうしてそんなことを職員室でやったのですか?」

 奈央が再び、不思議そうに首をかしげた。

「それはボクもよう分からんけど、遠野さんとマリエちゃんがロボットの心が分かることと、なんや関係がありそうって言っとったで」

「すごいな!だとすると、ココも同じことが出来るかもしれないぜベイビー!」

 正雄が言うことももっともだ。心音も以前自分のロボットと、メインディスプレイに表示されるバイタルサインを通じて心を通わせている。一概にあり得ないとは言いきれないだろう。

「同じことって、ダジャレ合戦のこと?!」

「そうだぜ、ベイビー」

「じゃあ愛理ちゃん、何か質問をぶつけるですわ!」

 奈央の言葉に、愛理がちょっとうろたえる。

「えーとえーと……ココちゃん、アッチッチってなんですかぁ?」

「私と大和のことよ」

 一発で会話が終わってしまった。

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