第237話 検証してみよう
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「そうや!センセ方、なんか難しいこと言ってくれまへんか?!そしたらいつもの会話が始まるかもしれへん!」
両津の言葉に顔を見合わせる教官ズと美咲。
「そう言われても、ねぇ」
困り顔の美咲である。
「ほな、やってみよか?」
南郷は乗り気のようだ。
「えーとやなぁ……はなてん中古車センター!」
両津以外が、理解できないと言うようにポカンと口を開けた。
「あの〜、南郷センセが言ったのは、関西人なら誰でも知ってる深夜テレビのCMで……えーと『はなてん』て、どんな漢字書くのか分からへんやろ?って意味だと思います」
両津が解説を加えた。
「そや!じゅうそうと並んで、関西の漢字が難しい地名ナンバーワンや!」
「いや、並んでる時点でナンバーワンでは無いでしょう?」
豪語する南郷に陸奥がツッコミを入れた。
「で、答えは?」
「じゅうそうは『十三』、はなてんは『放出』て書くんじゃーっ!」
だから?
職員室に、そんな雰囲気が広がっていく。
「あの〜、センセ……そういう難しいってことやないんですわ。言葉の意味が分からないとか、難しいとか、そんなのが欲しいんです」
両津がすまなそうに頭をかきながら南郷を見る。
「そうやったんか」
南郷センセ、今までの話ちゃんと聞いとったんやろか?
両津の苦笑が深まった。
「ほんならあれや、関西人しか分からへん単語を言ったらええんちゃうか?」
「それです!」
両津が大賛成の声を上げた。
「じゃあな……自分ら、何ほたえてんねん!これでどうや?!『ほたえる』は分からんやろ!」
「センセ、それ関西人でも若者には通じまへんで」
再び両津が苦笑する。
「へぇ〜、関西弁て不思議ですぅ。遠野先輩、ほたえるって何ですか?」
「始まった!」
両津だけでなく、教官ズと美咲がひかりと奈々に注目する。
「それはね愛理ちゃん、どんな問題でも簡単に解いちゃうことだよ」
「それは答える!愛理ちゃんが聞いたのはほたえる!」
これや!これや!
両津は心の中で喝采していた。
「やっぱり筋肉は大事だよ!」
「鍛える!」
「ねぇねぇ、奈々ちゃん」
「伝える!」
「奈々ちゃんはやっぱりすごーい!」
「たたえる!」
「両津くんに慈悲を」
「与える!」
「慈悲なんかいらんわーい!」
思わす話を止めてしまった両津である。
「両津くん、せっかく始まったのに、止めたらあかんやん」
南郷がため息をつきながら両津に視線を向けた。
「すんまへん、つい」
「大丈夫よ。だいたいどういう展開になるのか、分かってきたわ」
やはり山下センセは優しい!
「それで、ほたえるってどういう意味なんですか?」
陸奥が疑問の表情を南郷に向けた。
「ほたえるは、ふざけるとか暴れるっちゅー意味ですわ。ほたえたらアカン!なんて使い方します」
「しかし、これで何が分かるのでしょう?」
久慈が首をかしげて美咲に聞いた。
「それはまだハッキリとはしませんけど、遠野さんやマリエさんがロボットの気持ちが分かることと、何か関係があるんじゃないかと」
「関係ですか」
「はい。まだ仮説ですが、音の振動と素粒子の共鳴に何かの因果関係があるのかもしれません」
「かせつってなんですかぁ?」
また始まった!
「それはね愛理ちゃん、左に曲がりま〜す!」
「それは左折!愛理ちゃんが聞いてるのはかせつ!」
「右に曲がりま〜す!」
「右折!」
「引っ越しま〜す!」
「移設!」
「ずっと頑張ってきますた!」
「苦節!」
「でも、あきらめました!」
「挫折!」
「そんな両津くんは?」
「稚拙!」
「あきらめてへんわーっ!」
再び両津が会話を止めてしまった。
「なんでいっつも僕の話になるねん?!」
興奮気味に視線をひかりに向ける両津。
ひかりはそれを、何事もなかったかのように見返す。
そして素直な笑顔で言った。
「だって、おもしろいんだもん!」
奈々とマリエも、激しく首を縦に振っている。
「まぁ両津くん、落ち着いて」
美咲の笑顔に、両津はハッと我に返った。
「あ、すんまへん!取り乱してしもて」
「両津くんは、お笑いに厳しいのね」
「センス無いけどな!」
美咲のフォローに、なぜかひかりが突っ込んだ。
「ひかり、また両津くんに厳しくなってるわよ」
「あれれ?」
奈々の突っ込みに首をかしげるひかり。
やはり、泉崎さんが遠野さんの能力を発動するトリガーなのかもしれない。
そしてその初手は伊南村さんの役目、なのか?
「何にしろ、両津くんはみんなに好かれてるってことだと思うわよ」
「ホンマですか?!」
パッと表情が明るくなった両津に、女子勢が一斉に首を横に振る。
「ないない」
「ないんかーい!」
両津の突っ込みは、むなしく職員室に響いていた。




