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第234話 シリトリは続く

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「じゃあ次は……南郷教官をイメージする言葉からスタートだよ!」

 ひかりが勢いよくそう告げた。

「俺のこと? カッチョイイとかオモロいとか、そんなんかなぁ?」

 少し照れているのか、ニヤニヤしてしまう南郷。

「えーとえーと……大雑把!」

「正解ですね」

 久慈がクスクスと笑う。

 陸奥は笑いをこらえて下を向いてしまった。

「大雑把のぱ、ぱ、ぱ……パン!」

「マリエちゃんダメだよ、最後に『ん』が付いたら負けだよ」

「それじゃあ……パン屋さん」

「また『ん』で終わったよ、マリエちゃん」

「あれれ」

 職員室では、ひかりとマリエのシリトリが続いていた。

「陸奥さん、久慈さん、こらあかんわ。あのシリトリ聞いてたら絶対に笑ろてまう!」

「ついさっき、衝撃の事実が発覚したというのに、さすがにこれは……」

 陸奥も笑いをこらえるのに苦しそうだ。

 つい今しがたのことである。ひかりとマリエは、美咲の中に別人を見たと言ったのだ。しかもその名前はアイなのだと。もちろん、美咲が袴田素粒子の感染者であることを、ひかりもマリエも知るはずがない。そして素粒子がアイと名乗っていることなど、知る由もないのだ。

「お待たせしました」

 その時美咲がゆっくりと目を開き、ひかりとマリエに視線を向けた。

「おかえりなさい!」

「おかえりなのです」

 ひかりが笑顔になり、マリエは小さくうなづいた。

「さ、質問を続けるね」

「了解でありまする!」

 ひかりがそう言って敬礼すると、マリエも見様見真似で右手の平を額に付けた。

「了解でアニマル」

 ホンマや。マリエのしゃべり方、遠野に似てきとる。

 こりゃ、教室がダジャレまみれになるんとちゃうか?

 南郷は苦笑していた。

「さっき、私と誰かがダブって見える、そう言ったよね?」

「はい!」

「これまでに私以外の人でも、そんな風に見えたことはあるかな?」

 ひかりとマリエが顔を見合わせる。

「人じゃないんですけど」

「人ではなくて?」

 ひかりがパッと笑顔になった。

「私の火星大王さんは二重に見えることがあります!」

「私のリヒトパースも」

 マリエがサムズアップする。

「あ、二人がそれぞれ乗ってる教習用ロボットの名前です」

「ロボットの名前?」

 陸奥の説明に、美咲が不思議そうな表情になる。

 通常自家用ロボットは、その機種名で呼ぶことはあっても個別に名前を付けることは滅多に無い。ロボットをペットや家族のように扱う、一部のマニアたちを除いて。

「名前付けたほうが愛着わいて運転、うまなるやろなぁ、思いまして」

 南郷が頭の後ろをポリポリとかく。

「うん、愛着わきました!」

「南郷、グッジョブ」

 笑顔のひかりと、再びサムズアップのマリエ。

「南郷って」

 久慈が我慢できずにプッと吹き出した。

 仕方なく、南郷もマリエにサムズアップを返している。

「それって、ダブって見えるだけなのかな? アイくんの名前みたいに、何かが分かったりするの?」

 美咲の問いに、ひかりとマリエが顔を見合わせる。

「どうする? 話してもいいと思う?」

「判断が難しい」

「信じてもらえるかな?」

「それはきっと困難」

 こそこそと、小声で話すひかりとマリエ。

 二人は、機械の心の声を聞くことができる。特に自分のロボットの声は、ハッキリと明瞭に聞こえてくる。だが、それはほとんど他人に話したことが無い。ひかりの場合、8歳の頃に家族に話しても、全く理解してもらえなかったことがトラウマにさえなっていた。学校の友だちにしてもそうだ。ひかりの人生でこの話を信じてくれたのは、小学校の頃の同級生、脇坂由美子と鈴木雄二の二人だけだった。だがつい先日、その状況に変化が起こったのだ。ロボット部の仲間たちは皆、ひかりとマリエのことを信じてくれたのである。それどころか、心音にもその能力の片鱗が見えてさえいた。

「マリエちゃん、私言ってみるね」

「うん、ひかりが思う通りでいい」

 話がついたのか、ひかりとマリエは美咲の目を見つめ返した。

「信じられないかもしれないけど、私たち、ロボットさんの声が聞こえるんです」

 教官ズの目が驚愕に見開かれた。

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