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第232話 お話しましょ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 ガラガラと職員室の引き戸が開かれ、学生服の少年が廊下へと出てきた。

 両津である。

「両津くん!」

 個人面談のために廊下に並べられている椅子から、ひかりが思わずぴょこんと立ち上がる。そしてテケテケと小走りに、両津の元に駆け寄った。

「ねぇねぇ両津くん、中でどんなお話してたの?」

「してたの?」

 ひかりの言葉にマリエも続けた。

「それがやなぁ」

 ひかりとマリエが、首をかしげたまま両津の顔を見つめる。

「雑談や」

「ほぇ?」

 ひかりがさらに首をかしげた。

「結構いろんな話したけど、まとめるとただの雑談やなぁ」

 両津は右手で頭の後ろをポリポリとかいている。

「こっそりしゃべる!」

「密談」

「マジックショー!」

「切断」

「な〜む〜」

「仏壇」

 いつの間にかマリエが奈々の役目を肩代わりしていた。

「なんて言うたらええのか、とりとめのない世間話やった」

「そっかぁ、じゃあ安心だねマリエちゃん。私たち、難しいこと聞かれてもよく分かんないから、てへへへ」

 照れる場面ではない。

「あ、そう言えば遠野さんと泉崎さんのダジャレ合戦と言うか、言葉遊びについても聞かれたなぁ」

「なんて?」

「どんなこと言っていたか、覚えてたら教えてねって」

「私、何か言ってたっけ?」

「俺が覚えてるのは……」


「どう考えても、採算が取れているとは思えませんね〜」

「さいさんて何ですかぁ?」

 愛理が聞く。

「鼻のところにツノがあるおっきな動物だよ」

 ひかりが答える。

「それはサイ!」

 奈々が突っ込む。

「サイさん♡」


「ところで、たいきってなんですかぁ?」

 愛理が今さらの質問をした。

「お魚の形をしたお菓子だよ。あんことかカスタードクリームが入ってておいしいよ!」

「それはたい焼き!愛理ちゃんが聞いてるのは待機!」


「バチってなんですかぁ?」

「それは太鼓を叩く、」

「それじゃなーいっ!」

「とっても汚い、」

「それは、ばっちぃ!」

「イチか!」

「バチか!」

「バチになったよ?」


「すごいなぁ、宇奈月さんと三井さん、以心伝心やん」

 両津の言葉に、愛理がいつものように小首をかしげる。

「いしんてなんですかぁ?」

「それはね愛理ちゃん、数の子さんの親さんだよ」

「それはニシン!」

「コスプレする人の必需品の、」

「ミシン!」

「俺だけは許してくれ〜!」

「保身!」

「明治、」

「維新!」

「両津くん」

「不審!者」

「なんでじゃ〜!」

 愛理は逆向きに小首をかしげる。

「でんしんってなんですかぁ?」

「出たなジョーカー!」

「変身!」

「見たこと無〜い!」

「斬新!」

「こりゃ風邪ですなぁ」

「問診!」

「できちゃったぜ、ベイビー!」

「妊娠!」

 と突っ込んで、奈々が顔を真赤にする。


 そこまで説明して両津はパッと顔をひかりに向けた。

「ボクが覚えてるのはこんなもんや。遠野さんは?」

「な〜んにも覚えてませ〜ん!」

 ひかりがうれしそうな笑顔でそう言った。

「ホンマに覚えてへんの?」

「うん!私、そんなこと言ってたかなぁ?」

「言ってた」

 マリエの証言だ。

「ほら、マリエちゃんも覚えてるって」

「おかしいなぁ」

 ひかりが一段と首をかしげようとした時、職員室から再び声がかかった。

「遠野!職員室に入りなさ〜い!」

 南郷の声だ。

「あ、呼ばれちゃった。マリエちゃん、私行ってくるね」

「うん。頑張ってね」

「何を頑張ったらいいのかサッパリだけど、マリエちゃんにそう言われると、私頑張れそうだよ!」

 なんやこの会話?

 両津は心のなかで苦笑していた。

 引き戸を開き、職員室へ足を踏み入れるひかり。

「失礼します!」

 引き戸を後ろ手でピシャリと閉じると、ひかりはお得意の敬礼だ。

「緊張せんでええから、まぁそこに座りや」

「はい!」

 南郷の言葉に、ひかりは用意されていた椅子に、ぎこちなく腰を下ろす。

 ひかりの正面には美咲、その後ろに南郷、陸奥、久慈が座っている。教官ズ&先生が大集合である。

「遠野ひかりです!ポエムとクマしゃんが大好きな17歳でしゅ!最近マリエちゃんのウサしゃん同盟にも参加しますた!」

 座ったまま再びの敬礼だ。

「自己紹介はさっき教室でやったやろ」

「そうだっけ?」

「まぁ落ち着いて、山下先生とお話してな」

「了解でありまする!」

 やっぱりこの子、おしゃべりに独特の音使いがあるわ。

 他人の発する音にも敏感だし。

 ここから何か分かるといいんだけど。

「ねぇ遠野さん」

「はいでありまする!」

「両津くんに、遠野さんはいつもダジャレを言ってるって聞いたんだけど、本当?」

 美咲の言葉に小首をかしげるひかり。

「私、ぜんぜん意識してないんですけど、奈々ちゃんはいつもそう言ってます」

「泉崎さんね?」

「はい。奈々ちゃんはいつも私に優しく突っ込んでくれるんです」

 ひかりの表情はなんだか嬉しそうだ。

 泉崎さんが、この子にとってのトリガーなのかも?

 美咲は頭の中で、まとまらない仮説をとりとめもなく考えていた。

「あれ?」

 その時、ひかりが奇妙な声を上げた。

「どうしたんだ? 遠野」

 陸奥が心配気にひかりに視線を向けた。

「遠野さん?」

 そう言った美咲を、ひかりがじっと見つめてくる。

「アイくんて、誰ですか?」

 そのひかりの問いに、この場にいる全員が驚愕に目を見開いていた。

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