第231話 しりとりしよう!
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「なぁなぁ、ボクらなんかやらかしたかなぁ?」
両津は落ち着かない様子で、不安げな視線をひかりに向けた。
職員室に呼び出されたのは三人。両津とひかり、そしてマリエだ。
「両津くんは常に、何かやらかしてる気がするよ」
「そんなアホな!」
ひかりの指摘に、両津は首を左右にぶるんぶるんと振った。
「なんもしてへんて!」
「そうかなぁ」
首をかしげるひかり。
「ソウカナァ」
マリエがひかりに続いて復唱する。
「ボクが何やったって言うねん?!」
「えーと、三時間目の授業中に、隠れてお菓子食べてた」
「四時間目の授業中、居眠りしてた」
「体育の時、女子更衣室覗いてた」
「南郷教官の悪口言ってた」
「遅刻した」
ひかりとマリエから機関銃のように、両津有罪の証拠が挙げられていく。
「教科書を寮の部屋に持って帰らずに、教室の机に置きっぱなしにしてる」
「学食の定食で、おかわり自由のご飯を取りすぎて残してた」
「保健で、女子だけの教室を覗いてた」
シャキーン!と、両津は直立不動で、気をつけの姿勢になる。
「すいませんでしたーっ!」
ガクッと、90度に頭を下げる。
「ううん、私別に怒ってないよ」
「ホンマに?」
「うん。でも、奈々ちゃんは怒ってたかも」
「あちゃ〜」
その時、職員室から南郷の声が響いた。
「両津くん!入りなさ〜い!」
「はいっ!」
両津はぎこちなく立ち上がると、職員室の引き戸をガラガラと開けた。
「こっちや」
南郷に招かれるまま、彼は職員室へと消えていった。
首をかしげているひかり。
「ねぇマリエちゃん、これって何の呼び出しだと思う?」
マリエも首をかしげる。
「謎」
しばしの沈黙。
「ねぇマリエちゃん、両津くんがいなくなって退屈だからシリトリしよっか?」
「うん、それがいい」
二人、楽しそうに微笑む。
「じゃあね、ロボット部のみんなのロボットさんの名前から始めよ!最初はね……奈央ちゃんのロボットさんの名前で、コスパ!次はマリエちゃんだよ!」
「ぱ、ぱ、ぱ……」
少し悩んでいるのか、マリエが頭を巡らせた。
「……パン」
「マリエちゃんダメだよ、最後に『ん』が付いたら負けだよ」
「それじゃあ……パン屋さん」
「また『ん』で終わったよ、マリエちゃん」
「あれれ」
そして楽しそうに笑い合う二人。ひかりとマリエは、とことん気が合うようだ。
「じゃあひかりは、両津くんのなにわエースの『す』」
「えーとえーと、スリッパ!」
「パン」
「『ん』が付いたよ!」
「パン屋さん」
一瞬の間が開いて、大爆笑する二人。
これではすぐに終わってしまう。
だが、ひかりとマリエにとっては、とても楽しい時間なのであった。
「あのぉ南郷センセ、ボク何か呼び出されるようなこと、やってまいました?」
「ちゃうちゃう」
南郷は顔の前で右手のひらを左右に振った。
「新任の山下センセが、生徒のひとりひとりと話がしたいって、そう言いはるんや」
「ごめんなさいね。私が無理を言って、あなたを呼び出してもらったの」
サラサラの黒髪ロングを揺らしながら、美咲が両津に微笑みかける。
「はぁ」
両津の頬がなぜかポッと赤くなった。
「おい両津くん、どうして赤くなるんや?」
南郷がニヤニヤした笑顔を両津に向ける。
「赤くなんてなってまへん!ちょっと室温が高いだけです!」
「なっとるやん」
南郷が、そのニヤケ顔を増々深めていく。
「南郷さん、そのくらいにしてあげてください」
「まぁ、そうでんな」
美咲の声に、南郷が苦笑した。
「じゃあね両津くん。ちょっとお話を聞かせて欲しいの」
「はいっ!何でもお話します!」
直立不動の気をつけだ。
「おい、俺の時と返事が違いすぎるやろ!」
当たり前やん。
両津は心の中で苦笑していた。




