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第230話 閑話・職員室4

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「お茶でもいれましょうか?」

 職員室に、久慈の声が優しく響いた。

 いつもなら昼食を終えた南郷、久慈、陸奥の3人がくつろぐ時間だが、今日からは新しいメンバーが追加されていた。山下美咲である。

「あ、私がいれますね」

「いやいや、山下さんにそんなことさせたら俺、雄物川さんにめっちゃ怒られてまうわ」

 あわてて立ち上がろうとする南郷に、陸奥が呆れたような顔を向ける。

「そんなこと言って南郷さん、山下さんが受ける印象を良くしようとか思ってますよね?」

「あら、バレましたか」

 右手を頭の後ろに回し、カッカッカと笑う南郷。

「山下さん、ここのシンクとか、説明しておきますね」

 そう言うと、久慈が立ち上がる。

 そして二人連れで、職員室の給湯コーナーへと向かった。

「で、陸奥さんはどう思います?」

 南郷が少し声を低くした。

「遠野の耳の件ですか?」

「うん。いつものダジャレの嵐が、実は敏感な聴力のせいやないかっていう」

 美咲から、ひかりは音や他人の発音に反射的に反応しているのではないか?

 つまり音に敏感なのではないか? との疑問が投げられた。

 しかも、美咲の脳に同居している袴田素粒子のアイによると、素粒子に感染すると人間は音に敏感になるという。

「ただ、遠野に感染の兆候は認められないんですよねぇ」

「そうやなぁ」

「とりあえず今、医療班に言って、生徒たちの過去の健康診断での聴力検査の結果を分析してもらってます。それが出れば何かが分かるかもしれません」

「遠野、ただの天然やないのかもしれへんなぁ」

 その時、久慈と美咲が二人のもとに戻ってきた。

「はい、紅茶です」

 美咲が、お盆からソーサーに乗ったティーカップを各人の机に置いていく。

「ありがとさん!」

「すいません」

 南郷と陸奥は、久慈と美咲に礼を言ってカップに手を伸ばした。

「お!またフレーバーティーでんな」

「今日は、私が自分の部屋から茶葉を持ってきたんですよ。もちろん……アールグレイです」

 その言葉に陸奥は、口に含んでいた紅茶を危うく吹き出しそうになる。

 ゴホッと、少しむせてしまう陸奥。

「陸奥さん、やっぱりフレーバーティー苦手なんちゃいますか?」

「いえ、大好きです」

 少し照れたような表情でうなづく陸奥に、久慈がちょっと楽しそうに微笑む。

「そう言えば、山下さんと一緒にいる、アイくんやったっけ? 最近はどうしてはりますの?」

 南郷の問いに、美咲がニッコリと笑った。

「実は、最近はあまり表に出てきてくれないんです」

「なんでです?」

「袴田素粒子の動向が複雑らしくて、その調査にかかりきりになってるみたいです。まぁ、私が就寝する前には、頭の中でその日の報告をしてくれるので安心なんですが」

 そう言いながら、美咲の表情が少し暗くなる。

「彼は私が感染してから、二年も毎日いっしょに過ごしてくれたんです。本音を言うと、今の状況はちょっと寂しいです」

 袴田素粒子と人間は、ここまで深く信頼関係を築けるのか。

 美咲を見つめる三人の目に、優しい色が宿っていた。

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