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第23話 回避教習

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

 雲ひとつない青空。まさに抜けるような、である。だがその日はとてつもなく寒かった。凍て晴れと呼ぶにふさわしい朝だ。

 奈々達の教習用ロボットは、いつもの教習コースとは違う広大な空き地に直立していた。巨大な埋立地のほとんどは、ここのように荒涼としたただの荒れ地となっている。学内の教習コースは市街地を模したものとなっているが、ロボットの活躍の場は町中とは限らない。どんな場所でも操縦ができるよう、校舎ゾーンの外側に広がるこんな場所でも教習が行われている。

「遠野、遅いぞ!」

 ロボット各機が収容されている倉庫のあるゾーンから、ひかりの火星大王が走ってくる。ドタドタとした、少しユーモラスな足取りだ。

「すいませ〜ん!奈々ちゃんが起こしてくれなかったんです〜!」

 そんなひかりの言い訳に、奈々は無線機のマイクに向けて怒鳴った。

「いくら起こしても、くましゃ〜んとか言うばかりで、ぜっんぜん起きなかったんじゃない!」

「君は怒ると、声も怖いね」

 マイトガイの声が奈々機内部のスピーカーから聞こえた。

 空き地に集合しているのは、泉崎奈々、宇奈月奈央、伊南村愛理、柵倉正雄、両津良幸、マリエ・フランデレン、そしてつい今合流したばかりの遠野ひかりの7名。今日は珍しく、両津も一緒に合同教習が行われる。

「これで全員だな」

 一同を見回して陸奥が言った。彼はロボットには乗らず、ひかり達の前に立っている。全員にその声が届くよう、手にはロボット回線の無線機を持っていた。

「今日は回避教習を行う」

「かいひってなんですかぁ?」

 愛理が首をひねる。

「会費だったらイヤですわね」

 奈央が渋い顔をする。

「俺のファンクラブは会費無料だぜ!」

 正雄がコクピット内のカメラに向け、さわやかな笑顔をドアップで見せてくる。

「すご〜い、ジョニーってファンクラブあるんだぁ」

 ひかりが感心する。

「避けることよ!回避するって言うでしょ!」

 奈々がまたマイクに向けて怒鳴った。

「もういいか?」

 あきらめたようにため息をひとつつくと、陸奥が今日の教習について説明を始めた。

「向こうを見てみろ。150メートル先に、二階建てぐらいの大きさのボックスがある。あれは模擬弾の射出機だ」

「しゃしゅつきって……」

 そう言い出した愛理だったが、今度は奈々に止められた。

「愛理ちゃん、教官のお話の途中よ!」

「は〜い」

 陸奥は射出機の方を指差した。

「あそこから、数秒おきに模擬弾が射出される。まあ簡単に言うと、銃で撃たれるってことだ。その間隔はランダム。弾は実弾ではなく特殊樹脂製なので、当ってもちょっと痛いだけだ」

「火星大王さん、痛がりなのになぁ」

 誰にも聞こえないように、ひかりがそっとつぶやく。

「ロボットが痛がるわけないでしょ!」

「君は怒ると、地獄耳だね」

「あんたにも聞こえてるでしょ!」

 陸奥がひとつ、咳払いをした。ロボットたちがシャキッと気をつけをする。

「飛んでくる模擬弾を全弾回避、射出機の横にあるボタンにタッチできれば合格、一発でも模擬弾に当ったら不合格、やり直しとなる」

「あの〜」

 両津ロボが片手を挙げる。

「弾を避けたら、後ろで見てるボクらに当たりませんか?」

「それは大丈夫だ。君達の前には、壁のように特別なシールドが張られている。模擬弾はそこで砕け散ることになる」

「またシールドや……」

 両津はいぶかしげにつぶやく。

「みんな、分かったな!」

「はい!」

 揃って返事をする一同。

「まずはマリエ・フランデレンにやってもらう。彼女はアムステルダム校で、トップのタイムを記録している。みんなの模範になるだろう」

「マリエちゃん、すご〜い」

 ひかりが笑顔になる。

「じゃあマリエ、始めてくれ」

 マリエ機が一歩前へ出る。

「ではいくぞ……始めっ!」

 マリエ機がダッシュで飛び出した。そこを模擬弾が襲う。でも当たらない。次々と模擬弾が射出されるが、マリエ機をかすめるだけで、全てが外れてしまっている。

「あれれ?どうなってるの?」

 ひかりの目には、マリエ機は避ける動作をしていないように見えたのだ。

「ひとつひとつの動きが速い。それに弾を避けるのに最小限の動きしかしていないのよ」

 奈々が睨むような目でそう言った。

「ホンマにすごいな」

「やっぱり俺のライバルさんだぜ」

「きっと燃費もいいんでしょうねぇ」

「カッコいい〜」

 その場にいる全員が驚いていた。

 そしてゴール、マリエ機が射出機のボタンにタッチした。

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