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第217話 閑話・職員室3

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「お茶でもいれましょうか?」

 昼食を終えた南郷、久慈、陸奥の3人がくつろぐ職員室に、久慈教官の声が優しく響いた。

「あかんあかん!久慈さんにそんなことさせたら俺、雄物川さんにめっちゃ怒られてまうわ」

 あわてて立ち上がろうとする南郷に、陸奥が呆れたような顔を向ける。

「そんなこと言って南郷さん、また紅茶頼んでもコーヒーいれるつもりじゃないんですか?」

「あら、バレましたか」

 右手を頭の後ろに回し、カッカッカと笑う南郷。

「大丈夫です。ちゃんと紅茶のティーバッグがありますから」

「え?!久慈さんが買うて来たんですか?!」

 久慈の言葉に、南郷がちょっと驚きの声を上げた。

「いえ。所長室横の給湯室から、ね」

 久慈がペロッと可愛く舌を出した。

「それや!」

 南郷の勢いに、久慈も陸奥も目を丸くする。

「そのギャップや!それに生徒たちはメロメロなんや!特に両津くん!」

「ギャップですか?」

 久慈の疑問に、南郷が勢いよく答える。

「普段の大人っぽい久慈さんがたまに見せる子供っぽい仕草!まさに小悪魔じゃーっ!」

「はいはい、じゃあ小悪魔が紅茶をいれてきますね」

 久慈はクスクスと笑いながら、職員室の給湯スペースへと向かった。

「しかし南郷さん、昨日は大変でしたね」

 陸奥の声が少し低くなる。

 校外学習のことだ。

 生徒たちを引率して東京ロボットショーが開催されているビッグサイトへ向かった南郷は、国際テロ事案に巻き込まれてしまったのだ。しかもロボットに搭乗し、テロ組織のアイアンゴーレムと戦闘まで行なった。南郷にも生徒たちにも、怪我一つ無かったのは奇跡に近かったのかもしれない。

「ロボットもやけど、一番ビックリしたのは三井さんやなぁ」

「メイドの?」

「そう。黒ずくめの男たち五人を、一人でやっつけてしまいよった」

「見たんですか?」

「いや、宇奈月くんと伊南村くんから聞いただけや。でも、トンファー使って、バッタバッタと、って感じやったらしいで」

 南郷が、よく分からない空手のような動きをする。

「すごいですね」

「さすが、宇奈月グループが寄こしてきた護衛やで」

「で、その男たちは?」

「機動隊のトクボが連れて行きよった。何か分かるとええんやけどなぁ」

「そうですね。例の誘拐未遂事件もまだ未解決ですからね」

 その時久慈が二人のもとに戻ってきた。

「ちゃんと紅茶ですよ」

 お盆から、ソーサーに乗ったティーカップを各人の机に置いていく。

 15センチ角のボックスにはいくつかのスティックシュガーと、ミルクの代わりにコーヒーフレッシュが入っていた。

「レモンは無かったので」

 そう言ってやさしく微笑む。

「すんまへん!」

「ありがとう」

 南郷と陸奥は、久慈に礼を言ってカップに手を伸ばした。

「お!フレーバーティーですな」

「ええ。知り合いが、アールグレイがとても好きなので」

 その言葉に陸奥は、口に含んでいた紅茶を危うく吹き出しそうになる。

 ゴホッと、少しむせてしまう陸奥。

「陸奥さん、大丈夫でっか?」

「ええ、ちょっと……」

 言いよどむ陸奥を見て、久慈がちょっと楽しそうな笑顔を浮かべていた。

「そう言えば、袴田教授のところ、またすごいもん開発したらしいですな」

「ああ、それなら私も聞いてます。ついにY素粒子を見つけるセンサーができたって」

 久慈が安堵のような表情を浮かべた。

「そうですね、でもまだ100%発見できるレベルではないそうです」

「そうなんですか」

 陸奥が肩をすくめながら苦笑する。

「どうやらあと一歩、とのことです」

「頑張ってもらいたいもんやなぁ。それがあれば、アレのことももっとよく分かるかもしれへん」

 南郷が床の方向を指差しながらそう言った。

「とりあえず、人体にY素粒子が感染するかどうかを、国連宇宙軍総合病院の牧村先生と調べてみるそうです」

「うまくいくといいですね」

 三人は同じタイミングで、紅茶をひと口すする。

「ところで、生徒たちは大丈夫でしょうか?」

 久慈は心配顔だ。

「まぁ、今日は休みにしたから部屋でのんびりしとるやろ、多分」

 ひかりたちテロに巻き込まれた面々は、今日は休日になっていた。

 巻き込まれ体質とはよく言ったもので、この教習所に来てからの彼らは、何度もトラブルに遭遇している。

「運が悪いと言うんかなぁ」

「でも」

 陸奥がカップをソーサーに置き、真顔で南郷と久慈を見つめた。

「事件に巻き込まれるのが、決まってパイロット候補のメンバーだと言うことに、何か意味があるのかもしれませんね」

「偶然やと思うけどなぁ」

「思いたいですね」

 職員室の空気が、少し重くなった。


「ほな、報告会いこか!」

 学食に両津の元気な声が響いた。

「東京ロボットショーで何があったのか?! 各自、どんなロボットを操縦したんか?! その大発表会じゃー!」

 生徒たちは、おとなしく部屋で休んではいなかった。

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