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第216話 事情徴収

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「事情徴収って、俺ら犯罪者ちゃうねんから」

 そう言うと、両津は大きなため息をついた。

 はぁっと言う、声なのか吐息なのか判別不能な音が、東京ビッグサイトのフードコートに響き渡る。テロリストの逃走で安全が確認されたこの場所で、事件に関わった全員への聴取が行われているのだ。

「両津さん、事情徴収と言うのは犯人だけでなく、事件の様々な関係者、つまり被害者や目撃者などから話を聞くこと全般を指す言葉ですわ」

「そうかもしれんけど、刑事ドラマとかやと犯人にゲロさせるのが事情聴取って感じやん」

「ゲロゲ〜ロ!」

 両津の言葉にひかりが反応している。

「まぁそう言うなって。君らが壊したロボットやけど、弁償せんでええって言ってくれとるんやし」

 南郷が肩をすくめる。

「ありゃ不可抗力や、センセ。他に手はあらへんかったと思う」

「まあな。だからお咎めなしってことやろなぁ」

 今度は南郷がため息をついた。

「概算すると、俺たちが乗っていた初代ダンガム、泉崎くんたちのニュー火星大王、宇奈月くんたちのトヨオカF40、その損害額を合計すると、まぁ1000万円ぐらいにはなると思うぜ、ベイビー」

 正雄がニカッと白い歯全開で笑顔を見せる。

「笑ってる場合じゃないでしょ!」

 奈々の突っ込みに、正雄はよりいっそうの笑顔になった。

「でも、それ言うたら南郷センセがブッ壊したマルビシ7000の方が高いんとちゃう?」

「そうですわね。コンセプトカーですから、市販車とは比べ物にならないほど高価ではないでしょうか?」

「高そうですぅ」

「コスパを考えれば、市販車にすべきだったと、わたくしは進言いたしますわ」

「今頃進言されてもなぁ」

 南郷が苦笑する。

「しんげんって何ですかぁ?」

 愛理が小首をかしげた。

 また始まるぞ!

 両津はすかさずひかりと奈々に視線を向ける。

「それはね愛理ちゃん、中にお豆が入って、」

「それはいんげん!」

「私はもう暴走しません!」

「宣言!」

「スイッチオーン!」

「電源!」

「そうですばい!」

「方言!」

「武田、」

「信玄!」

「人間の?」

「尊厳!」

「南郷教官のお給料は?」

「半減!」

「なんでじゃーっ!」

 その声を上げたのは、いつもの両津ではなく南郷だ。

「そうだな……」

 ひかりと奈々の間抜けな会話が聞こえていないのか、正雄は空中を見つめ、何かを計算するような仕草を見せていた。

「さすがにアイアンゴーレムと格闘したんだ、あの壊れ方じゃもう廃車だろう。となると、損害額は2000万円以上になるぜ」

 両津がニヤケて南郷に視線を向ける。

「何アホなこと言うてんねん!オレの安月給で、そんなに払われへんわ!」

「ボーナス払い」

 マリエの小さなつぶやきが皆の耳に届く。

 プッと吹き出してしまう一同。

「そや!センセ、ボーナス払いの20年ローンでどうでっしゃろ?」

「20年でも足りへんわ!」

 もう皆爆笑である。

 こんなにも大変な事案に巻き込まれたというのに、この生徒たちは相変わらず楽しそうだ。

 夕梨花はそんなことを思いながら、彼らの集まっているテーブルへと向かう。

「あ、奈々ちゃんのお姉ちゃん!」

 ひかりがすぐに、夕梨花に視線を送ってくる。

「遠野ひかりです!奈々ちゃんの親友やらせてもらってます!」

「ひかり、それさっきも言ったじゃない」

「てへぺろ」

 右手のこぶしで、自分の頭をコツンとするひかり。ペロッと舌が出ている。

「てヘペロって、」

 そう言い出した愛理を奈央が右手で制した。

「てへぺろは、照れ笑いを表す「テヘッ」と舌を出す仕草「ペロ」を組み合わせもので、声優の日笠陽子さんが生み出した素晴らしい言葉ですわ」

 さすがオタクである。

「皆さん、お引き止めしてしまって申し訳ありません」

 夕梨花はまだ、キドロの搭乗用スーツのままだ。

 色はグレーで、引き締まったカラダの線がよく分かる。

「いえいえ、お気になさることはありませんわ」

 奈央が丁寧にそう返した。

「これ以上の詳細はまた次の機会に、私が教習所にお伺いした時に聞かせてください。今日はとても疲れているでしょう。早く帰って、ゆっくり休んでください」

 夕梨花の笑顔はとても優しい。

 ひかりはその笑顔が大好きだった。

 私にもお姉ちゃんがいたら良かったのに。

 そう思ったひかりだったが、すぐに言い訳を始めた。

「違うの違うの、お兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんが良かったってことじゃないの、えーとえーと……」

「何あわててるの?」

 奈々がひかりに、不思議のものを見るような目を向けていた。

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