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第215話 決着

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「こちらキドロ03、駐車場で実行犯を捕縛!」

 警察無線から門脇の声が、端的に伝えた。

 と同時に、沢村からの報告も入電する。

「キドロ02、東展示棟にてアイアンゴーレム一機制圧、パイロットを捕縛しました!」

 キドロ01のコクピットで、夕梨花の顔にニヤリと笑みが浮かんだ。

 これで敵はアヴァターラ一人だ。

 アヴァターラと夕梨花には少々因縁のようなものがあった。以前、夕梨花率いるキドロチームが奥多摩の黒き殉教者アジトを急襲した時、ヤツは夕梨花に目もくれず、その場から逃走したのだ。彼と夕梨花、今回こそ奥多摩の決着をつけるいい機会なのかもしれない。

「アヴァターラ、あなたの仲間は私の部下が捕縛した。これで邪魔をするものはいなくなった」

『邪魔ですか……いったい何のでしょう?』

 相変わらずアヴァターラの声には、人を小馬鹿にするような笑みが混じっている。

 夕梨花は、UCの右手に握られている短刀に目をやる。

 逆手に構えられたそれに、夕梨花は見覚えがあった。奥多摩で戦った時にヤツが使っていた「守り刀」と言うやつだ。ヤツはその時、ロボットでも生身でも、その短刀を見事に使いこなしていた。

「やっかいだな」

 夕梨花は思わずそうつぶやいていた。

 あの守り刀はキドロの特殊警棒と同じ、超硬合金製だ。キドロ用の特殊日本刀「ROGA」とも、まともに切り合える代物である。その上ヤツは、ロボットの操縦であっても、忍者の技らしき謎の体術を使ってくる。

『なるほど……確認が取れました』

「何のだ?!」

『確かに、こちらの手勢はあなた方に制圧されたようです』

 いったいどうやってそれを確認したのか?

 夕梨花だけでなく、トクボ指揮車の全員にも疑問の色が浮かんだ。

「田中くん、もう一度この周辺をスキャンしてくれ」

「はい!」

 白谷部長の指示に従い、美紀がコンソールを操作する。

「泉崎!」

「はい、部長」

「時間をかけると、黒き殉教者の他のメンバーが来るかもしれん。できるだけ早く、そいつと決着をつけてくれ」

「了解」

 夕梨花は静かにうなづいた。

「みんな、下がっていて」

 夕梨花はロボット標準無線の22チャンネルに小さく告げる。

 プロ同士の戦闘に巻き込まれたら大変なことになる。

 ひかりたち三台のロボットは、ジワジワとその場から遠ざかっていく。

『困りましたねぇ。人質の確保が不可能だとすると、今回のわたくしどもの作戦は失敗、ということです』

「そういうことだ。テロはあきらめて、ただちに投降することを勧める」

「遠野先輩、とうこうって何ですかぁ?」

「それはね愛理ちゃん、」

「しーっ!」

 奈々の人差し指が、ひかりの唇に強く押し当てられた。

「ひどいにょ、にゃにゃちゅわん」

 ひかりたちの間抜けなやり取りにも、この緊迫感は全く緩まない。

「仕方がない」

 そう言うと、キドロ01はゆっくりと右腕を背に回した。

 スッと抜き放たれるキドロ専用の日本刀ROGA。

 夕梨花はそれを、体の前面中央を頭から真っ直ぐ縦に通る線・正中線に沿うように真正面に構える。左手は丹田、切先はUCの喉元の高さに向けた。正眼の構えである。

「キドロ02、到着しました!」

 東展示棟から出てくる沢村機の姿が見える。

「キドロ03同じく!加勢します!」

 門脇機も、玄関前広場にやって来た。

「02、03はその場で待機、手を出すな」

 地の底から聞こえてくるような夕梨花の覇気に、沢村と門脇が足を止める。

『本当に血の気の多いお嬢さんだ』

 男がそう言ったのと同時に、UCダンガムの腹部あたりから白煙が立ち上り始めた。

「棚倉くん、あれ何や?!」

 初代ダンガム内で、両津が叫ぶ。

「まさか?!自爆か?」

 正雄の言葉に一同さっと青ざめる。

「離れた方がいいんじゃないの?!」

「僕もそう思います!」

 心音と大和がほぼ同時に叫んだ。

「待ってくださいませ」

 なぜか奈央は冷静だ。

「宇奈月先輩、あれってもしかして?」

「たぶん、そうですわね」

「はよ説明してくれ!」

 両津が悲痛な声を上げる。

 奈央はじっとUCを、特に白煙が発生している腹部あたりを冷静に見つめている。

「ダンガムシリーズの多くは、コアファイターシステムを採用しています」

「コアファイターってなんや?」

「パイロットの乗るコクピットが独立した戦闘機になっていて、いざと言う時にはそのまま飛行して脱出できるのです」

「よくできてるぜベイビー」

 正雄がヒューッと口笛を鳴らす。

「てことは、あれはコアなんちゃらが脱出しようとしてるってことなんか?」

「いえ、本来のUCダンガムにコアファイターはありませんわ」

 人差し指をアゴに当て、考え込む奈央。

「ですが、UCのコクピットには360度全てを投影できる全天周モニターが採用されています」

「ぜんてんしゅ???」

 ひかりと愛理が首をかしげる。

「つまり、コックピット自体を球形のモニターで覆っているのです」

「球形ってことは……コックピットそのものが、脱出ポッドにもなるってこと?」

 奈々がハッと気づいたようにそう言った。

「それが正解かもしれませんわ」

 奈央のその言葉が終わると同時に、目の前に立つUCの上半身が小さな爆発とともにはじけ飛んだ。同時に飛び出す球体。

「ホンマや!あれ脱出ポッドや!」

 その球体は高速で上昇し、あっという間に視界から消えていく。

「空自にレーダー探査を依頼!あれを見失うな!」

 指揮車に白谷の声が轟く。

「本当に逃げ足が早い」

 夕梨花は大きなため息をついた。

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