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第214話 投降せよ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「ナメやがって!ただじゃおかねぇぞ!」

 ヴァイシャと名乗った黒スーツの男が、アイアンゴーレムのコクピットで吐き捨てるようにそう言った。彼が見つめるディスプレイには、ほうほうの体で逃げて行くマルビシ7000の姿が映し出されている。

 黒スーツの男は左右の手それぞれで握った操縦レバーを手前に引き、右ペダルをグッと踏み込む。彼の命令に呼応して、アイアンゴーレムがゆっくりと立ち上がった。右腕で右の腰あたりを探る。そこには、軍用ロボット用の巨大な斧・アーミーアックスが装備されている。その柄を握り、留め金を引きちぎって振り上げる。どうやら、逃げるマルビシ7000にそのまま投げつけるようだ。

「死ね!」

 振りかぶったごつい腕を、マルビシに向けて振り下ろそうとしたその時、アイアンゴーレムの左横の壁が轟音を上げて崩れ落ちた。

「なにっ?!」

 あわてたヴァイシャが、首ごと左に目を向ける。アイアンゴーレムのメインディスプレイは約200度の範囲をカバーしている。そのため別カメラの映像に比べ格段にリアルだ。その目に飛び込んできたのは、ポッカリと穴のあいた壁から一台のロボットが突入してくる姿だった。

 警視庁機動隊のキドロである。沢村のキドロ02だ。

「ちっ!」

 ヴァイシャは舌打ちすると、アックスを投げる方向をキドロに変更する。

 だが、その一瞬のタイムラグが沢村に有利に働いた。アックスの投てきを認めた沢村は、瞬時にキドロ用の特殊警棒を抜き放ちジャキンと二段目を伸ばした。

 ガキーン!

 轟音を響かせて、アイアンゴーレムの投げたアックスが弾かれる。

 アックスは、そのままくるくると回って数メートル先に転がった。

 もちろん超硬合金製の警棒には、並のアックスでは傷一つ付けられない。

 だがヴァイシャは黒き殉教者の実働部隊の中でも歴戦のテロリストだ。キドロに向けてアックスを投げたと同時に、ダッシュをかけてキドロ02に肉薄した。その左腕には、巨大な軍用ロボット用ダガーナイフが握られている。

 ダガーナイフは両刃の短剣で、刺突や頸部切断用の対人殺傷用武器だ。その形状からナイフと見なされることも多いが、日本語では「短剣」や「短刀」と訳される。

 とても短剣とは呼べそうにない巨大なダガーで、キドロめがけて突きを仕掛けるアイアンゴーレム。特殊警棒で、それを下から払い上げるキドロ02。だが、払われた軌道を利用してすかさず振り下ろし動作に変換してくるアイアンゴーレム。ジャンプして後退、襲いくる鋼の刃は、間一髪キドロ02の数センチ先で空を切った。

「キドロ02、ディスプレイのオーバーレイを見てください」

 田中技術主任の声に沢村は、メインディスプレイに注意を集中する。

「このバージョンのアイアンゴーレムのコントロールモジュールはこの位置です」

 ディスプレイ上のアイアンゴーレムに赤い点滅が現われた。左脇腹あたりだ。

「了解!」

 沢村はぐっと特殊警棒を握りしめた。


「久しぶりだな」

 ビッグサイトの玄関前広場では、UCダンガムとキドロ01のにらみ合いが続いていた。

『おや? どなたでしょうか?』

 そう言いながらもUCのパイロットの声には、含み笑いが紛れている。

「トボけるな、きさまアヴァターラだろう」

『おやおや、バレていましたか』

 男がクスクスと笑う。

『奥多摩以来ですね、トクボのお嬢さん』

「その呼び方はやめろ」

 夕梨花の顔がゆがむ。

『おや? ゴッドにそう聞いたのですが?』

「私は警視庁機動隊特科車両隊所属のロボットチーム、トクボのチーフパイロット泉崎夕梨花だ!」

『確か警部さんでしたっけ? お勤めご苦労さまです』

 その声には、夕梨花をバカにしたようなニヤニヤが含まれている。

 だが夕梨花はそれに煽られることはない。

 キドロの外部スピーカーから、冷静な声が響いた。

「あなたの仲間は、助けには来ません。いさぎよく投降しなさい」

 無言になるUCのパイロット。

「これ、どうなるんや?」

 緊迫感のあまり、両津の背中を冷たい汗が流れた。初代ダンガムのコクピットの温度が暑いのか寒いのか、それさえ分からなくなっている。だが突然、彼の耳に間の抜けた声が聞こえてきた。

「遠野先輩、とうこうって何ですかぁ?」

「それはね愛理ちゃん、学校に行くことだよ」

「それは登校!」

「私みたいにおだやかで優しい、」

「温厚!」

「スキーでシャーって、」

「滑降!」

「分厚いカーテンは、」

「遮光!」

「判決を言い渡す!」

「執行!」

「今夜は!」

「最高!」

「縛り方の、」

「亀甲!」

 一瞬間があいた。

「奈々ちゃん」

「何よ」

「そんなこと口にしたら人間の尊厳が、」

「あわわわわわ」

 奈々が真っ赤になって慌てだす。

「援助交、」

「それもダメよ!」

 奈々がハァハァと息を切らしている。

「お姉ちゃんが言ったのは、いさぎよく投降しなさい、よ!」

「うさぎよく月光しなさい? 確かにウサギさんは月にいるもんね」

「ひかりと私、ウサしゃん同盟」

 マリエがカクカクと、首を縦に振っている。

「がおーっ!」

 ニュー火星大王のコクピットの様子は、メインディスプレイにワイプ状に映し出されている。その時の奈々は、ひかりの両肩を掴んで前後にガシガシと振っていた。

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