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第213話 あいつだ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「キドロ各機、聞いてください」

 トクボ指揮車の田中美紀技術主任から、警察無線で各キドロのコクピットに的確な指示が飛ぶ。この緊迫した状況下にあっても、彼女はいたって冷静である。

「キドロ01はそのまま乗っ取られたデモ用ロボットの対処をお願いします」

「了解」

 キドロ01のパイロットは奈々の姉、泉崎夕梨花だ。

 黒髪ショートがサラサラと美しい彼女だが、今はキドロ用の白い特殊ヘルメットで髪型は分からない。引き締まった唇、そして鋭い眼光がメインディスプレイのUCダンガムを見つめている。

「02は東展示棟へ向かってください。監視カメラのハッキング映像によると、内部でアイアンゴーレムが暴れています」

「了解!」

 沢村泰三から元気な声が返る。

 鍛えられた筋肉が、キドロ用搭乗スーツを内側から盛り上げている。真面目な彼は、全てのボタンやファスナーをしっかりと閉じているため、余計にその盛り上がりが目立っていた。

「03は駐車場へ向かってください。撃破された大型観光ロボットのパイロットが、他の駐車ロボットに乗り換える可能性があります。可能ならその前に逮捕を」

「了解です!」

 門脇進の声は冷静だが、この現場を楽しんでいるようにも聞こえた。

 彼は根っからの陽キャであり、どんな状況でも楽しんで対処に当たることができる。緊張の走る事案現場では、そんな彼の性格に救われることも多々あった。

「それでは、よろしくお願いします!」

 三機のキドロがいっせいに動いた。

 夕梨花の01は真っ直ぐUCの所へ。

 沢村の02は、その現場を迂回する形で左側面から東展示棟へ。

 そして門脇の03は、きびすを返してロボット駐車場へ。

 三機それぞれが、全く無駄のない動きを見せていた。

「田中主任」

 夕梨花の声だ。

「何でしょう?」

「あのデモ用ロボットですが、パイロットは自らを名乗りましたか?」

「いいえ。ただ、黒き殉教者だと言うことは語ったそうです」

「分かりました」

 夕梨花の口元が、ニヤリと不敵な笑みに変わる。

 夕梨花には分かっていた。

 遠目ではあるが、接近時に見たあの身のこなし。

 そして突然抜き放った小刀と、その握り方。

「あいつだ」

 夕梨花の目に、好敵手を狙う狼のような炎が浮かんでいた。


 ガキーン!

 東展示棟の広大な空間に、大きな金属音が響いた。

「三井さん!なんとかこいつを足止めするから、来場者を誘導して避難させるんや!」

 南郷の乗るマルビシ7000がその怪力を生かして、アイアンゴーレムを後ろから羽交い締めにしていた。だが、いくら高出力を誇るマルビシ7000とはいえ、所詮は自家用ロボットだ。軍用のアイアンゴーレムを、長時間抑え込むことはできないだろう。

「なんとか一分ぐらい持ってくれ!」

 南郷はそううめくと、コクピットで大声で叫ぶ。

「羽交い締めのまま、ヒザカックンや!」

 マルビシ7000のAIが南郷の言葉に反応する。

 いきなりヒザの裏側を押されたアイアンゴーレムが、ガクッと体制を崩す。

「今や!押し倒すで!」

 体制を崩したアイアンゴーレムに、マルビシ7000が後ろから覆いかぶさる。そのまま押し倒し、馬乗りの体制で相手の首を締め上げる。

「くらえーっ!」

 首とアゴを両腕で締めたまま思いっきり引き上げる。海老反りになるアイアンゴーレム。プロレスで言うところのキャメルクラッチだ。アイアンゴーレムの首、そして背骨に当たるシャーシがミシミシと悲鳴を上げる。

「なんなんだ?!こいつは!」

 アイアンゴーレムのコクピットで、ヴァイシャと名乗った黒スーツの男がまさしく面食らっていた。展示用の自家用ロボットで、世界中のテロ組織御用達闇ロボット・アイアンゴーレムと互角に渡り合っているのだ。

 考えを巡らせるヴァイシャ。

 どうやら相手は、パワーだけは軍用ロボットにひけをとらないらしい。では、他に何が違うのか。ふと男は、ニヤリと右の口角を上げた。

 アイアンゴーレムは首に回されているマルビシ7000の腕をガシッと掴む。そして握力を強めていく。ミキミキっと嫌な音を立て、その腕が握りつぶされた。

「うわっ!」

 突然腕を破壊され、後ろへ吹っ飛んで転がるマルビシ7000。

 何のことはない。軍用と自家用の違いはその強度にある。装甲板に覆われたアイアンゴーレムとマルビシ7000では、鉄とケーキほどの強度の違いがあった。

「脅かしやがって」

 転がっているマルビシ7000にいちべつをくれると、ヴァイシャはディスプレイ上に見えているもう一台の自家用ロボットに目を向けた。

 それはこの展示棟奥の壁を破壊し、来場客たちを外へと誘導していた。

「けっ!そうはさせねぇぜ」

 アイアンゴーレムが、良子のF50に突進をかけようとする。

 その瞬間であった。

「南郷キィーーーック!」

 両腕を破壊されたマルビシ7000の飛び蹴りが、アイアンゴーレムのボディに炸裂したのだ。もちろん、正雄の技のパクリである。

「棚倉くん、君の技借りたで!」

 車重の軽い自家用ロボットのキックでは、アイアンゴーレムを破壊することはできない。だが、体制を崩させるには十分なパワーである。アイアンゴーレムはヒザを屈し、その場で転倒した。

「南郷さん!来場者は全員外に出ました!私はこのまま外で誘導を続けます!」

 良子の頼もしい声が南郷に聞こえた。

「さ、こうなったら逃げるが勝ちや!」

 転倒しているアイアンゴーレムの横を、南郷のマルビシ7000が全速力で駆け抜ける。

「あらほらさっさ〜!」

 南郷の声が、マルビシの外部スピーカーから東展示棟に響き渡った。

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