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第21話 兄弟

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

『おにいちゃん、ひかりです。

 ニコニコロボット教習所にやって来て一週間がたちました。あっという間の一週間です。いろんなことがあったけど、とっても困っているのは、毎日教習用ロボットが暴走することです。陸奥教官は、私のせいだって怒ります。でも、私何もしてないんです。ハンドル握ってキーをえいって回したら、すぐに暴走しちゃうんです。なんでだろ〜???

 でも、困ったことだけじゃないんです。とってもうれしいこともいっぱいです!だって、お友達がた〜くさんできたんだもん!

 泉崎奈々ちゃん。寮のルームメイトです。ロボットの運転がとっても上手で、尊敬してしまいます。美人でカッコよくて、私の憧れです。そして、親友なんです!でも、怒ると眉毛がちょっと怖いです。

 宇奈月奈央ちゃん。割り勘の時の金額とか数字が苦手な私の代わりに、ささっと計算してくれます。いつも、こすぱ?がどーのこーのて言ってます。

 伊南村愛理ちゃん。ひとつ年下で、とっても可愛いです。奈々ちゃんのことが大好きみたいで、この前深夜に奈々ちゃんのベッドに潜り込んでました。

 柵倉正雄くん。アメリカから転入して来たまいとがい?みたいです。名前は柵倉正雄なのかジョニーなのか、私にはよく分かりません。でもロボットの運転はすごく上手です。

 両津良幸くん。ウエストピーポーらしいです。私達とは違うクラスで、いつも南郷教官とまんつーまんで楽しいことをしてるみたいです。

 そうだ!外国人のお友達もできたんですよ!ヨーロッパから転入して来たマリエちゃんです。あむすなんとかってところから来たみたいです。薄紫色の長い髪がサラサラで、モデルさんみたいな美人です。最初はとっても無口だったけど、今はちょっとだけお話してくれます。まだ日本語が苦手なんだと思います。

 そう言えば両津くんが、なんだか不思議なことを言ってたけど、私はまずちゃんと免許が取れるように頑張らなくちゃ!

 というわけで、私は毎日厳しい教習に励んでいます。免許取ったら、ロボットでおにいちゃんの所へ遊びに行きますね!待ってて下さい。

 ではまたお手紙します。 ひかり』

「あんたねえ、声に出さないと手紙も書けないの?!」

 奈々が呆れたような顔でひかりを見ている。

「うん!」

 ひかりはニッコリと笑った。

 都営第6教習所の寮は二人部屋だ。ここではひかりと奈々が暮らしている。部屋の両端にそれぞれのベッドが置かれており、真ん中には座学のための勉強机が横並びに、窓に向かって設置されていた。

 スッキリと片付けられた奈々のデスクと対照的に、ひかりの机は小さなぬいぐるみやファンシーな文具でちらかっている。

「テストとか、試験に小論文ある時に困るんじゃない?」

 奈々の疑問は当然だ。

「うん、よくぶつぶつ言いながら試験受けてたから、何度も菊池先生に怒られたの。いつもとっても優しい先生なのに、怒ると眉毛が三角になって怖いんだよ。そう、奈々ちゃんみたいに!」

「それ、ジョニーの偏見よ。私、ちっとも怖くなんかないから」

 そうだっけ?という顔で奈々を見つめるひかり。

「そ、それと、あなたと私、いつの間に親友になったのよ?」

「えっと……サモアの旗あげた時からだよ、奈々ちゃん」

 ひかりはまた笑顔になった。

「まあいいけど」

 奈々は大きくため息をつく。

「ええっ?!いいの!いいんだね、奈々ちゃん!」

「もうあきらめたわ」

 奈々が両肩をすくめる。

「ところで、いつも手紙ってお兄さん宛なのね、仲良さそう。いくつ離れてるの?」

「お兄ちゃんは5つ上!」

 兄の話をする時のひかりは、とびきりの笑顔になる。

「今22歳で大学の4年生だよ。カッコ良くて優しくて、いつも私のことを心配してくれるお兄ちゃんが、私大好き!」

 あまりにも天真爛漫な笑顔に、奈々はちょっと驚いていた。この子は、こんなにも兄のことが好きなんだ、ちょっとうらやましいかも……。

「奈々ちゃんには、兄弟はいないの?」

「いるわよ……お姉ちゃんがひとり」

「いくつ違うの?」

「7歳上」

「わあ、私のお兄ちゃんとほとんどいっしょだね!」

 奈々は姉に、少なからずコンプレックスを抱いていた。7歳も年上の姉は、いつも奈々の世話を焼いてくれるだけでなく、学校ではトップクラスの成績を誇っていた。ロボットの操縦にも優れていて、高校入学と同時にA級ライセンスを取得、今では警視庁機動隊のロボットパイロットを努めている。将来は国連宇宙軍への配属を目指しているらしい。

「なんてお名前なの?」

「ゆりか、泉崎夕梨花」

「わぁ!可愛い名前!」

 奈々は夕梨花が大好きだ。憧れでもある。それは子供の頃も今も変わらない。だが、周りの目はそんな奈々にいつも厳しかった。何かにつけ姉と比較される人生なのだ。

「だから私、もっと頑張らないと……」

「奈々ちゃん?」

 いぶかしがるひかり。そんなひかりの目をごまかすかのように奈々が言う。

「どうして手紙なの?メールとかLIMEとか、もっと簡単な方法があるのに」

 ひかりが困ったように言う。

「私ね、パソコンとかスマホとか、機械が苦手で……」

「よくそれでロボット免許なんて取ろうと思ったわね」

 てへへ、とひかりが照れたように笑った。

「ここは照れるところじゃないでしょ!」

 てへへへ、ひかりはもう一段照れが増したように笑っていた。

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