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第208話 トンファー

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 トンファーを構え、四人の男たちをにらみつけていた良子が、突然両腕を外側に大きく振るった。

 ジャキン!

 金属のような音を響かせて、30センチだったトンファーの長さが45センチほどに伸びた。

 二段の伸縮式だったのだ。

 良子が使っているトンファーは、アメリカのモナドノック社製である。アメリカ合衆国警察で、警棒として正式採用されている代物だ。金属よりも強い強化プラスティック「ポリカーボネイト」を素材とすることで、刃物で斬りつけられても容易に受け止めることができる。その上軽くて扱いやすい。

「伸びたですぅ!」

 愛理が驚きの声を上げた。良子を見る目が、真ん丸に見開かれている。

「三井さんが沖縄で沖縄空手、と言いますか琉球古武術を学んでいる頃に、知り合いの海兵隊員さんからオススメされた逸品だそうです」

「いっぴん!」

 トンファーの構えは、握り部分を持った状態で、自分の腕から肘を覆うようにそわせるカタチだ。それを空手の技のように突き出して攻撃したり、トンファーで攻撃を受けつつ空いている足で蹴りを繰り出すトンファーキック等、実に多彩な攻防が可能だ。また、長い部位を相手に向けて棍棒のような攻撃も可能な上、手首を返すことで半回転させ瞬時に棍棒の方向を切り替えたり、回転させた勢いで相手を殴りつける、なんてことも可能だ。使いこなせれば、自分の腕の延長として使える、他の武器とは一線を画した存在となり得るのがトンファーなのだ。

 ちなみにアメリカ警察ではSide Handle Baton(取っ手付警棒)とも呼ばれ、逃げる犯人の足をめがけてブーメランの要領で投げる手法もよく行われている。「警棒投げ」と呼ばれる、犯人逮捕の強力な手法だ。

「愛理ちゃん、このスキにわたくしたちは動かせそうなロボットを探しましょう」

「了解ですぅ!」

「三井さん、後は頼みました!」

 一瞬奈央の目を見た良子が、小さくうなづいた。


「あかん!あいつの動き、サッパリ見えへん!」

 その頃両津たちは、UCダンガムの動きに翻弄されていた。

 狙いを定めてライフルを撃っても全く当たらない。それどころか、ヒザを曲げる等の予備動作無しにジャンプしたり、予想外の方向に歩を進めたりと、UCの次の動作が全く予測できないのだ。

 その動きは、まさに「忍者」だった。

 身のこなしが軽い、どころではない。不思議な体術を使って、縦横無尽に予想外の動きを連発している。いや、相手はロボットだ。操縦者の体術をそのまま再現できるはずはない。だが今のUCは、そうとしか思えない謎の動きをしている。

「これじゃあ攻撃できないぜ!」

 さすがの正雄も、その表情にあせりの色がうかがえる。

 その額には、うっすらと困惑の汗が浮いていた。

 ただ正雄たちの初代ダンガムは、UCからの攻撃をかろうじて防いでいた。

 索敵に専念している大和が、予想外の方向から繰り出されるUCのビームサーベルによる攻撃を、コンマ何秒の差で発見し回避コマンドを正雄のコンソールに送り続けているのだ。それに動物的な反射で反応する正雄が、ダンガムの盾「ダンガムシールド」で受け止める。その繰り返しの攻防が続いていた。

『本当に素晴らしい動きですねぇ』

「ありがとうよ」

 UCのパイロットと正雄が、攻防の一瞬の間で会話する。

『やはり、名のあるパイロットなのでは?』

「俺の名はジョニーさ!」

『ジョニーはマイトガイでしたっけ?』

「それはあだ名さ!』

 両津には、いつものように正雄に突っ込む余裕は無かった。少しでも相手のスキを見つけることができれば、再びライフルの模擬弾をぶち込む込ことができるのだ。そのために、常にUCのコクピット部にライフルの照準を合わせ続けている。

「奈々キィーーーーック!」

 突然の乱入者である。

 ひかり、奈々、マリエが乗るニュー火星大王がUCに飛び蹴りを仕掛けたのだ。

 ニュー火星大王の右足が、何もない空を切る。足がついた地面を蹴ってバク転一回、スチャッと着地するニュー火星大王。

「奈々ちゃん、ポップコーンが消えちゃったよ!」

「それを言うならユニコーン!」

 その時、初代ダンガムの外部スピーカーから大和のあせった大声が響いた。

「後ろだ!」

 反射的に身をかがめるニュー火星大王。つい今までその頭部があった空間を、ブンと音を立ててUCのビームサーベルが通過した。ビームサーベルと言っても、実はビームや光子のサーペルではない。現代の技術では、まだビームをサーベル状に保持することはできないのだ。あくまでも今回のショーのために作られた疑似ビームサーベルで、金属製である。だがその一撃をくらえば、自家用ロボットでは廃車はまぬがれないだろう。

「あぶなっ!」

「うひゃひゃ〜」

 ひかりの変な声を聞きながら奈々は、左ハンドルのスイッチ操作と共に左のペダルを思い切り踏み込む。後退の司令を受けたニュー火星大王のAIが、オートバランサーを働かせながらジャンプでバック、それを操縦レバーの操作で微妙に調整する奈々。

『おや、あなたの操縦もなかなかのものですね』

 UCの外部スピーカーから、楽しそうな男の声が響く。

「こっちは二台よ!もうかんねんしなさい!」

「いいえ、三台ですわ」

 展示棟の出入り口から、もう一台のロボットが現われた。

「宇奈月奈央と!」

「伊南村愛理!」

「参上!」

「ですぅ〜!」

 これで三対一となった。

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